#21 逃亡と追撃
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「オラオラァッ! お前らァ! どんどん燃やせェッ!」
『応ッ!』
今だ森での戦闘が激化し続ける中、盗賊団の連中が引き気味に騎士団と応戦しながら、火炎瓶のような物を投げつけて森を燃やしていた。
もちろん森に火なんか放ってしまえば、瞬く間に森中の木々が炎上し、大火災を発生させてしまうわけだが……。
「げほっ……ごほっ……」
「うう……」
木の上で隠れていた俺たちの周辺は、現在かなりの火災に見舞われていた。
煙や、燃え移った炎はどんどんと上にのぼってくるため、もうこのまま隠れ続けるのは困難だと考え始めていた。
「く、クソ……水魔法を使える者は急ぎ消火に回れ!」
「へッ! させるかよ! お前ら、どんどん森を燃やせ!」
騎士団の迅速な対応も虚しく、盗賊団は次々と火炎瓶を投げ込んで森を燃やしていく。
さらに厄介なのが、
「オラァッ! テメエら騎士団は邪魔なんだよッ!」
「ぐああッ! き、貴様らは何なんだ……!」
「俺たちゃただのしがない荒くれ者集団さァ!」
メルを狙った荒くれ者集団が、炎を顧みず騎士団や盗賊団に攻撃を仕掛け、事態をより混沌とさせていたのだ。
「くっ…………」
森の中での戦闘がそろそろ限界に達しそうだが、こっちもそろそろ隠れているのが限界に近くなってきた。
呼吸が、苦しいのだ。
それもそのはずだろう。だって辺り一面炎に包まれていて、その上煙まで充満してるのだから。
――もう、移動するしかないか!
「ッ…………!」
俺がそう判断した瞬間、俺はメルを抱えたまま木の上から飛び降りた。
そしてそのまま気配を隠しながら南方向へと駆け抜けようとしたのだが……
「――ッ……ありゃあ、もしや……」
「――ククク……やっと見つけたぞ……!」
盗賊団と、荒くれ者団、二つの団に気付かれてしまった。
飛び降りた地点がまずかった。ちょうど着地した時、そこには両団のリーダーと思しき人がいたのだ。
「おい、待てよ小僧ッ! お前が抱えてるその女は俺たちのモンだからなァ……返してもらうぜッ!」
「させるかよ……っ!」
俺はすぐに駆け出した。
しかし、
「残念だが、お前の持つその剣はもともと我々が頂く予定の物だったのだ。だからこちらも返してもらうぞ!」
「悪いがそれも断る……!」
このまま南方向に逃げたら必ず追いつかれてしまう。
それなら、リスクを冒してでもこうするべきだよな……!
「ム……なんだ貴様は! 止まれッ!」
「それも無理なお願い……だなッ!!」
「何ッ!?」
俺は、180度ターンして北側方向へと駆け出したのだ。
そのまま騎士団の団長っぽい人の静止を振り切って、アクション映画ばりの動きで木を蹴って騎士の頭上を飛び越えた。
「ま、待てェッ!」
「待ちやがれ!」
「待てッ!」
三つの団の言葉が重なった。
しかしこれで狙い通りだ。これできっと三つの団はぶつかり合うはず……!
そう思ったのだが……
「お前らァッ! 手が空いてる奴はあのガキを追えッ!」
「俺らのとこも同じだッ! あの小僧を追えッ!」
おいおいマジかよ……!
盗賊団と荒くれ者団の下っ端たちが何人かずつ俺たちのことを追ってきたのだ。
「クソ、何が何だか分からんが今はお前たちを捕らえるのが優先だ!」
幸い、騎士団の方からは追手は来ないようだった。
それにしても火災がどんどんとひどくなっているが、本当にこのままこの場所で戦い続けたらマジで敵味方問わず全員死ぬ、みたいなことがあり得るんじゃないか?
「待てッ!」
「待ちやがれッ!」
ああもう、面倒くさいな!
ずっと追ってきやがって!
『ぐれん! この先はまだ火が燃え移ってないのだ!』
桜花がそう叫んだ。
確かに、もう少し進んだ先はまだ炎に浸食されていないようだ。
ここなら追手を撒けるか……?
「敵の数は……6人ね。それなら……!」
「どうかしたのか、メル?」
「ねえグレンさん! あれくらいの数なら私たちでも倒せるんじゃないかしら!」
「倒すって、マジで言ってるのか!?」
そんないきなり言われても、俺にはそんな……
「ずっと訓練してたじゃない! 絶対いけるわ!」
ッ…………そうだ。俺は強くなりたくて、ずっと鍛えてたんだ。
その力を確かめるには、これはいい機会じゃないか!
「……分かった。戦おう」
「そうこなくっちゃ!」
「ただし、無理だと思ったらすぐに逃げるぞ。いいか?」
「ええ、もちろん!」
なんだか成り行きで大変なことになってしまったが……生まれ変わった俺の初陣だ!
さて、やれるだけやってみようか……!
次回は明日更新!