#14 サバイバルスキル
第二章開幕。いよいよ本編スタートです。
高評価とブックマーク登録を是非お願いします。
「――よし。これで完成だな」
錆びた鉄鍋の中に香り付け用の葉っぱを添えると、俺は近くにあった木の切り株に腰かけた。
『やっぱりぐれんは料理が上手いのだ……じゅるる』
「はは、そんなよだれ垂らしてるような声出しても、お前にはあげないぞ?」
『ぶー、ケチなのだ』
「というかそもそもお前、食えないだろ」
『確かに。なのだ! にゃはは』
そう言って桜花は笑った。
もうこのやり取りも何十回、いや何百回としたかもしれない。
――そう。あの日から、もう約二年も経ったのだ。
俺が桜花と出会った洞窟の周辺にある、とても広大な森。そこで俺は二年間、一人で原始人みたいな生活を送っていた。
行く宛も無ければ、頼る宛も無い。
お金の持ち合わせももちろん無いし、稼ぐ手段も、王によって指名手配されていた俺には無かったのだ。
桜花と契約した手前、そう簡単に死ぬことは許されない。
『聖剣』である桜花は、魔王が復活した今とても重要な役割を持つことになるからだ。
俺は事のきっかけを思い返しながら、今しがた作った料理を口に運んだ。
「うん……まあいつも食ってるし、大した感想は無いな……」
俺がいつも食べているのは、森に生息しているイノシシのような動物を狩って、調理して、水と塩とその辺で使えそうだった木の実とかを混ぜて作った味気ないスープだ。
醤油とかソースとかあれば、もう少しはマシな料理にはなりそうだが……。
まあ贅沢は言ってられない。
それに、俺は恵まれている方なのだ。
今俺の拠点としているこの森は、実は結構人々の生活圏から離れた場所にあって、ほぼまったくと言っていいほど人が来ない。
それでも何度か、王の直属と思われる騎士たちが森にやってきたこともあったが、それもとある能力のお陰で毎回切り抜くことができたのだ。
そして、肝心のその力というのが――
『――スキル! そろそろ慣れてきたのだ?』
「ああ、まあな」
そう。スキルだ。
ゲームとか異世界ファンタジーには必要不可欠な存在の、『スキル』。
それが俺にも手に入れることができたのだ。
――どうやら、この世界ではスキルはほとんどが後天的に手に入れる物であり、自分の得意能力が昇華してスキルになるのだとか。
例えば、剣術を小さい頃から学んでいて、剣を扱う能力が一定以上に達した時。
それは『剣術』のスキルになって、剣にまつわる様々な補助能力が得られるのだ。
……まあ全部桜花が教えてくれたことなんだけど。
「俺の得たスキル『料理』と、スキル『生存』……。まあこんな生活してたら、そりゃそうなるよなって感じだけどな」
『でも、すごい便利なのだ! 早いうちにその二つのスキルを手に入れられたのはラッキーだったのだ』
俺がこの二つのスキルを手に入れたのは、森での生活を始めて三ヶ月くらいが経った頃だった。
いきなり脳内に流れ込んでくる情報と、まるで前から出来たかのような華麗な手さばき。
その時、初めて『スキル』を認知したのだ。
そんな俺が得たスキル『料理』と『生存』。
ざっくりどんな効果か説明すると、
・『料理』……料理・調理の技術、知識の補助獲得や食材鑑定眼など。
・『生存』……主に隠密行動能力の獲得や、罠知識の獲得、そして投擲技術に関連する能力の向上など。
まあどっちも、言わば『サバイバルスキル』みたいなものだ。
正直めちゃくちゃ便利だし、これが無かったら今頃死んでたんじゃないか、とはぶっちゃけ思うところはある。
姉さんからある程度の生きるための知恵、みたいなのは教わってたけど。
いざこうしてやってみると、サバイバル生活というのはとても難しいものだ。
『今日はこの後どうするのだ?』
「んー、そうだな。とりあえず『剣術』のスキルを手に入れるために特訓して、残った時間で森の探索……かな?」
『ん、いつも通りなのだ~』
「まあそれ以外にすることも無いしな」
俺は今、のんびり気ままに生きながら強くなろうと努力をしている最中だった。
最終目標は、無事に平和で静かな暮らしを手に入れること。それか日本に帰ること、だ。
その為には、自分の身を守れるくらいの……あるいは魔王を倒して世界を救えるくらいの力は必要だからな。
スキルが後天的に手に入れられるのであれば、あとはその人がどれだけ努力したかで差が出てくるはずだ。
……はず、だ。
「うし、そんじゃあ今日も一日張り切っていきますか!」
『おー!!』
――その時!
俺が背伸びをして、今日も頑張ろうと意気込んだ直後の事だ。
「――へへへ……やっと追い詰めたぞ。このクソガキが……」
「――ブヘへッ。安心してボクたちに捕まっていいからねぇ。やさ、優しくしてあげるからさぁ……!」
気持ちの悪い人間の言葉が、近くから聞こえてきたのだ。
そして……
「――い、いや! 近づかないで……っ! 誰か……助けてッ!」
助けを求める女の子の声も、聞こえてきたのだった。
次回は明日更新です。
高評価とブックマーク登録をお願いします。