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最弱な俺が『最強』の美少女たちに姫扱いされる件  作者: テトラ
第九章 ≪禍つ魔の災厄≫
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#90 Good morning『The Grim Reaper』

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明日はお休み~



「――絶対に、渡すもんか……ッ!」

「この……ッ! 抵抗、するなッ! 早く、私にその剣を渡せ……このガキがッ!」


 ドカ、ドカと俺の身体は何度も何度も魔王アレンによって踏みつけられ、蹴られていた。

 しかし、俺は先程手に入れたばかりの【魔双剣】と、少しだけ離れていたところに立てかけて置いてあった【聖剣】の桜花をどちらも抱えて、その場にうずくまったのだ。


 絶対に、『十大武具』であるこれらを渡すわけにはいかない。

 それに、大切な相棒を渡すわけにもいかないし、このまま武器が奪われてしまったら、仲間たちが傷ついた意味が無くなってしまう気がしたから。


「チッ……面倒だ。このガキが『十大武具』に選ばれし者でなければ、すぐさま殺したいところだが……」

「魔王様……一つだけ、確認したいことがあるのですが」

「なんだ……ユウ。今私はとてもイライラしていてな……。――どうでもいいことであれば殺すぞ」

「……ッ。分かり、ました。――魔王様。僕や彼女に使ったあの力は、紅蓮には使えるのですか? もし、使えるのなら……」


 何だ……何を、話している?

 悠兄さんや、影咲に使った術……だと? それって、二人の頭に生えた二本の黒い角と何か関係しているのか――?


「――『死者蘇生』のスキル、か。……確かに、あれなら……そうか。その手があったか……ッ!」

「……どうやら、使っても問題はなさそうですね。なら、殺してしまっても構わないかと」

「ああ、そうだな。ククク……アハハハハハハハハッ! よくやったぞユウ! やはり貴様は最高のしもべだ……褒めてやろうッ!」


 『死者蘇生』……? 殺す……?

 い、一体、何の話なんだ。その会話だと、『俺をよみがえらせることが可能だから、今だけ殺してしまおう』……みたいな風に聞こえるが。


 まさか――そのまさかなのかっ!?


「――クク……少年。いや、ヒカミグレンと言ったか」

「なん……だ……ッ!」

「ではグレンよ。すまないが、これも私の大いなる野望の為に必要なことなのでな。悪いが、一度――いや、一瞬だけ死んでもらうぞ」

「なッ――――!」


 こういう展開は、何回か見たことがあった。

 だが、大体こういう時は決まって相手側が何かしらの慈悲をくれたり、仲間たちが主人公の窮地を救い出してくれるものだと、思っていた。


 しかし、ここは『異世界』でも。もう、俺たちにとっては『異世界』じゃなくて。

 『現実』という物はやはり、何処まで行っても残酷なのは変わらなくて。


『グレン――――ッ』


 俺の身体には、次の瞬間。


「――――ガハァッ……!」


 鋭い刃が、突き立てられていたのだ。




◆◆◆




「一体……一体何が起きているというのだ……ッ!」


 その光景を目にしたとき、アレクさんは『絶対に見つからないように』という自分の指示も忘れて声を出してしまっていた。

 それだけじゃない。僕以外のクラスメイト達も、みんなその光景を、前のめりに、息を呑んで見守っていたのだ。


 それは、一人のクラスメイトが、圧倒的な力の前に為す術も無く虐げられている様子だった。


「彼のことはあまり良く知らなかったが……あれは流石に、ひどすぎるよ……ッ!」

「ああ……いくら何でも、助けたいって思っちまうぜ……ッ!」


 先頭では、八木君と楠木君が拳を握りしめながらそう言った。

 よく見ると、他のクラスメイト達も何人かは彼らと同じような反応を見せていた。


 かく言う僕も同じ反応をしてしまっていた。

 同じ同郷の、それに似たようなタイプだった彼が――緋神紅蓮君が、あんなことになっているのだから。


「やっと、見つけたというのに……ッ!」


 アレクさんは、僕たち異世界人を守ろうと。助けようとしてくれていたのだ。

 だから、居なくなった異世界人を道中で思いがけず見つけたのに、あんなことになっていて――とても悔しそうにしていた。


「何か――何か無いのか? どうにかして彼を救い出す方法は――」

「もう、無理なんじゃないでしょうか」


 アレクさんの呟きに、僕は無慈悲にもそう返した。


「何故だ……月島君!」

「だって、彼はさっき……明らかに殺されていたじゃないですか」

「……クッ……だが、だが……ッ!」


 僕だって、信じたくはない。

 だが、さっきのあの光景を見たら、嫌でも分かってしまう。


 彼は無慈悲にも殺され、そしてそういうことができるくらい彼らは無慈悲で残酷な奴らなんだという事が。


「なんにせよ……絶対に見つかってはダメです。見つかったら、僕たちだってどうなるか分からない……ッ!」


 僕がそう呟くと。

 ぽつり、ぽつりと徐々に雨が降り出し始めた。




◆◆◆




 遂に。遂に、この時が来た。

 我にかけられた四つの『死』という封印は解かれた。


 目障りな龍の神も、今は眠っているようだ。


 ああ、やっとだ。やっと、我は地上へと舞い戻ることができる。



「ククク……この者の肉体は絶対に死なせないぞ。我が、完全復活を果たすその時まではな――」




 ――魔王アレンが、緋神紅蓮を殺したその瞬間。

 彼の身体の中では、とある神が動き出そうとしていた。


 それは、この世界に来た時に彼の身体に真っ先に宿っていた神であり。

 『死』という呪縛に囚われ、眠っていた神で。



「――ようやく……お目覚めになったんですね」



 ――何度も、紅蓮の死を救ってきた神で。



「――おはようございます。死神様」



 その神は、今。世界に、目覚めを告げた。

明日はお休みで、明後日は第一章の更新日にします!

次話更新は明々後日!

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