入道雲
残酷な描写あり
冬空に沸き立つ想い
沸騰させた水蒸気
冷やされた伝う滴
繰り返す急騰と冷却
昇っては降り止まない雹雨
とどまること知らず打ちつける嵐
風穴だらけの身体
吹き抜けるたび奏でられる音
響き合わないひとり
夜中に涙ひとり
ただひとり沸き立つ想い
真冬に解き放つ命
たたきつける路面
飛び散る息吹
瞬間冷凍
衝撃に粉砕
どれもこれも自分
振り向かない真逆の季節
眠ったまま沈黙した日々
まだ触れたことのない白さ
もう触れられない白さ
何も触れられず解き放つ命
大空に旅立つ次の日
久しぶりに澄んだ空
積め込んだはずのトランク
空っぽの夢の中
浮かんでいる眩しさ
まだ微笑む天使
嬉しさは幻
掴んだはずの無い片手
巻き戻るはずの無い時間
巻き戻された時間
再生して旅立つ次の日
真実に先立つひとり
巡り会う約束ひとつ
握りしめたひとつ
思い込んだひとつ
誰かからもらったひとつ
無くしたひとつ
季節はひとつ
想い出はひとつ
ひとつだけこぼれ落ちた空
ひとりだけ呼ばれた空
空に先立つひとり
森林に降り立つ光
地面に残された影
雨土に濡れた散乱物
ひっそりとたたずむ虫たち
草木の蒸し香る季節
木漏れ日に通る清い風
涼しさ心地良い暑さ
獣道に祠
いつか誰か想い
いつも誰か想い
想い降り立つ光
真剣に突き刺す瞳
瞼の向こう側の愛しさ
天井に曇る表情
大粒の雨
あたたかい雨
握られた手のひら
触れられなかった白さ
白さに際立つぬくもり
潤んだふたりに蜃気楼
揺らいだ眼に蜃気楼
蜃気楼に突き刺す瞳
晴天に抱き合うふたり
蒸し上がるアスファルト
湧き上がる気圧
混ざり合う柔らかな気流
含まれた想い雫
昇りゆく今
気づいた形
雨上がりの夕立
立ち込めて染め上げた赤色
赤く立ち昇る夕焼け
初めて立ち昇る夕焼け
立ち昇る夕焼けに抱き合うふたり