転校生
◇フユカ視点◇ ◇
「幹部か……………」
私は学校の教室で自分の席に座りながら、先日の戦いを思いだす。
あの子………………シュンだっけ。
どうも気にかかる。
たぶん、あれは命令に逆らえないパターンじゃないかな。
ナナお姉さんが好きなパターンの。
うーん、仮にそれが本当だとしたら戦いにくいことこの上ない。
そもそも、人間の地点で戦いにくい。
困ったな。
「フユカ。何考えてんだ?」
「セツ、何か用?」
「いや、フユカがちゃんと宿題やって来たのかと思って」
「…………宿題なんてあったっけ?」
「それ、一番たちが悪いやつだろ。まあ、もうすぐ朝のホームルーム始まるから」
セツは、それだけ言い残すと自分の席に戻っていく。
宿題あったのか。
ヤバい。
存在ごと忘れてた。
また、怒られる!
私が内心で焦りまくっていると、担任の先生がやって来た。
「皆にビックニュースだ!」
朝の挨拶も無しに、いきなりそう切り出す先生。
「先生!ビックニュースって何ですか?」
男子の一人が聞くと先生は、少しタメを作ったあと言った。
「このクラスに、転校生がやって来た!」
「「「「「おお~!!!」」」」」
一気に盛り上がるクラスの中。
このタイミングの転校生か。
よくあるパターンだと、その転校生が実は敵キャラだったりするんだよな。
名前が、シュンとかだったら決定的だよね。
あり得る。
「じゃあ、転校生を紹介するぞ。入ってこ~い」
そんな事を考えていた私だが、そんなアホらしい考えは入って来た人物を見て一瞬で吹き飛んだ。
ガタッ!
私とセツがほぼ同時に立ち上がる。
向こうも、立ち上がった私とセツを見て目を丸くする。
「「ハルヤ!」」
私とセツが同時に叫ぶ。
「あれ、フユカちゃんとセツ君。久しぶりだね、駆け落ちして何処にいるかと思っていたらこんな所にいたのか」
「「駆け落ちじゃない!」」
私とセツの声がハモる。
というか、やっぱりハルヤだ。
この煽るような言い方は間違いない。
少しぼさっこい茶色の髪も、その炭のような瞳も昔のままだ。
実は、私とセツは幼馴染みだが、ずっとこの街に住んでいたわけではない。
私とセツは小さい頃に、この街よりも田舎に住んでいた。
ちなみに、その時もお隣さんだった。
しかし、ほぼ同時に親が転勤となり、驚くことに同じ街のしかもまたお隣さんになったのだ。
それって、どういう確率なんだろうと今でも思う。
親の会社も違うから、奇跡だよね。
…………ちなみに、そんな感じだから前のクラスメイトにはさんざん駆け落ちだとからかわれた。
ちょっと話がそれたが、ハルヤは私とセツの幼馴染みである。
引っ越しをする前は、よく一緒に遊んでいた。
ハルヤは、クラス全体を見て口を開く。
「フユカちゃんとセツ君の夫婦が「「夫婦じゃない!」」言ったけど改めて、ぼくの名前は 里神 春弥 です。よろしくね」
私とセツの突っ込みを無視して、ハルヤはそう言うと意地悪そうに笑った。
「えっと、里神と神原と神野は知りあいなのか?」
先生がそんなやり取りを見て、驚いたように聞いてきた。
◇ ◇ ◇
「いや、本当に驚いたよ。フユカちゃんもセツ君も元気そうでなにより」
休み時間。
転校生恒例行事。
転校生に話しかけまくるが始まっていた。
最も、ハルヤと私とセツの再会についての方に興味がある奴らが多いけど。
「駆け落ちしたと聞かされた時は……」
「「だから、駆け落ちじゃない!」」
ちょっと訂正。
私とセツがからかわれてるのを見たい奴らが多い。
盛大にため息をつくセツ。
こんなセツ、久しぶりに見たな。
「それにしても、元気そうだね。ハルヤ」
私がそう言うと。
「それはどうかな?」
フフフとでもいうように、笑うハルヤ。
そう。
ハルヤは、こういうやつなんだよな。
「ねえ、フユカ。えっと、ハルヤ君だっけ。なかなか、カッコいいじゃん!」
ナツが私の耳に興奮気味にしゃべってきた。
「えっと、あれのどこが?」
小さい頃から知ってるから、そう言われてもピンとこない。
いわゆる、久しぶりに会ったら超絶イケメンになってたとかもないからな。
よく分からん。
「どこが?とは、聞き捨てならないね」
耳ざとい。
てか、そこは聞こえてもスルーするところでは。
「カッコいい部分が私には分からん」
そう言ってやると、ハルヤは肩をすくめて残念そうに呟いた。
「そっか」
◇ ◇ ◇
放課後。
ハルヤの歓迎会をするとかなんとかで、私たちはファミレスに向かっていた。
学校帰りにファミレス寄るとか、初めてなんだけど。
だいたい、家に直行してアニメ見るか本屋寄ってラノベ買うかの二択だし。
てか、陽キャが多いこの集まりに陰キャの私が混じってて良いのだろうか。
ちなみに、セツも来ているがハルヤのことを睨みっぱなしである。
仲が悪いというか、相性が悪いんだよね。
あの二人。
まあ、いつものことなのでほっとくけど。
相性は悪いけど、意外に仲いいとこもあるし。
「フユカちゃん。あんまり、楽しくなさそうだね」
「ハルヤ。いや、陰キャの私がこんな陽キャの集まりにいていいのかなと」
ハルヤが、話しかけてきたので冗談混じりにそう返す。
「へえ、フユカちゃん陰キャなの?意外だね。だって…」
ハルヤがそこまで言った時。
「きゃあー」
「逃げろぉ!」
「通り魔だぁー!」
通り魔だと!!!
しかも、その騒ぎは明らかに私たちの方へ向かって来ていた。
通り魔なんて、出会う確率そうそうないよね。
不定期投稿はまだ続きます。
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