オカマの群れ
◇ ◇ ◇
「いやぁん」
「きゃぁ~」
「誰かぁん~助けてぇ~」
金髪の超絶美少女に変身したセツと、銀髪のイケメンに変身した私は、商店街の裏通りに来ていた。
お店の屋根から裏通りの様子を窺う。
すると、そこには棍棒を持ったゴブリンに襲われている……………………………オカマの群れがいた。
なんだろう。
この助けたくない集団。
いや、オカマを否定する気はない。
世の中には、体の性別と心の性別が違う人もいるし、そこは否定しない。
でも、オカマやるならせめて無駄毛を剃るなり、髭を剃るなりするものじゃないだろうか。
このオカマたちは、『漢』って感じの人たちが無駄毛処理も一切せずに、ただワンピースを着て、メイクをしただけって感じだ。
オカマやるなら、もっと気合い入れて『女』に近づこうとして欲しい。
そもそも、なんでこんな土日の真っ昼間からオカマの群れがゴブリンに襲われているところ見なきゃならんのだ。
ちなみに、助けたくないと思ったのはセツも一緒だったようで、嫌そうな感じで呟いた。
「とりあえず、両方討伐しちゃえばいいかな?」
「いや、オカマは助けてやれや!」
チャームのままのハッピーリさんから的確な突っ込みが入る。
ですよね~。
よし。
さっさと、ゴブリン倒して帰ろう。
「じゃあ、倒そう。ゴブリン」
私は、そう言って専用魔道具のワンドを構える。
ちなみに、変身する際にステッキは必要だが、専用魔道具を使う時は小さくしてチャームにしておける。
といっても、チャームホルダーみたいなのはなく、いつも首から下げているリボンで持っておくしかない。
そのうち、チャームホルダーみたいなのも欲しいな。
それは、そうと先手必勝。
魔法で一気に数を減らそう。
ゴブリンの弱点ってなんだっけ。
まあ、火なら大体の生き物の弱点だよね。
「ファイアアロー!展開!追尾モード、オン!」
ゴブリンは、スライムより動きが素早かったので追尾モードをつけることにする。
にしても、専用魔道具って凄いな。
全然、魔力が減った感じがしない。
「ファイア!」
ファイアアローは、ゴブリンたちにめがけて放たれる。
詠唱の呪文が違うって?
ノリで言ってるだけだから、大丈夫!
ゴブリンたちは、ファイアアローを見て逃げ出したが、追尾モードのおかげで次々に命中する。
ファイアアローを逃れたゴブリンもいたが。
「やっ!」
ゴブリンたちが逃げた先に降り立っていた、セツの剣によって、次々に倒されていく。
剣は的確に、ゴブリンの首をはね、心臓を突く。
セツは、柔道や剣道を参考にしたらしい足さばきで棍棒を持っているゴブリンの攻撃を軽々と避け、剣でゴブリンを消滅させている。
消滅したゴブリンは、光の粒子となって霧散した。
私も、オカマとゴブリンの間に降り立つ。
この通りは、一本道。
これで、もうゴブリンたちに逃げ場はない。
私とセツに挟まれたゴブリンたちは、半狂乱となって襲いかかってきたが、残念ながら私のファイアアローとセツの剣技によって全て消滅した。
「きゃぁ~ん!かっこいい~」
オカマの群れからそんな言葉が聞こえた気もするが、スルーさせてもらう。
「大丈夫ですか?」
5メートルくらい離れた位置から、オカマたちに聞く。
「「「「大丈夫でぇ~す!」」」」
いや、聞くまでもなく無茶苦茶元気そうだった。
てか、近くで見たら身長2メートルくらいある大漢のオカマもいるのですが。
ゴブリンくらい倒せたのでは?
「あのぉ~お名前をお聞かせください~」
あ、やっぱり名前を聞きますか。
一人のオカマの言葉に表面上の笑顔を浮かべて告げた。
「ユキといいます。では、私たちはこれで失礼します」
「セツナです。お姉さんたちもこれからは魔物に気をつけてくださいね」
いつの間にか、私の隣に来ていたセツも名乗る。
というか、セツの猫かぶり具合が凄い。
超笑顔の可愛い声で心配するような事を言っているが、心の中では1ミリも心配していない。
しかし、それを気取らせないところがセツの凄いところだ。
まあ、私は付き合いが長い腐れ縁だから、分かっちゃうんだけど。
私とセツは、それだけ告げるとスタッとジャンプしてお店の屋根に飛び乗り、屋根づたいに走り出す。
「きゃぁ~!かっこいい~」
「ユキくん~是非お店に来てぇ~」
「セツナちゃん~さいこ~」
お店へのお誘いは、心の中でお断りさせていただこう。
にしても、お店ってオカマバーでもやっているのだろうか。
少なくとも、興味は湧かない。
てか、オカマの中に動画撮ってる人がいた。
まさか、ネットに拡散されたりするのだろうか。
いや、間違いなくされる。
前回は、ナツだけだったからそういうのは大丈夫だったんだけどな。
魔法少女と魔法少年の映像か………………………
デマだと思われますように!
◇◇???◇◇
「魔法少女と魔法少年か……………」
物陰から様子を窺う少女。
笑みを浮かべると、その場を立ち去る。
「面白い事になりそうだね……………」
その言葉だけが風にのってその場を漂い、そして消えていった。
◇ ◇ ◇ ◇
◇フユカ視点◇ ◇
「ふぅ………精神的に疲れた。さっさと帰って変身解除しよう」
「そうだね」
そんな感じで、短く言葉を交わした私とセツは家に向かって屋根づたいに移動していた。
と、その時。
ビービービービービービー!
脳内に大音量で音が鳴り響く。
この感じって、まさか…………………
「フユカ!セツ!ヤバいで!北東にある廃ビルに急行や!」
「何があったのさ!」
私がハッピーリさんに尋ねると、ハッピーリさんは本気で慌てたように言った。
「幹部や!組織の幹部がでよった!」
「幹部!?」
まさかの、三回戦目で準ボス級ですか?
これから、どんどん忙しくなりそうです。
投稿ペースが遅くなるのは確実ですが、ストックなどをしてある程度定期的に投稿したいと思っています。(あくまでも、希望)
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