専用魔道具
◇◇ハッピーリ視点◇◇
「おらあ!」
セツは金属バットをひょいっとかわし、男の懐に入ると次々に無力化していく。
無言で敵を無力化してくとか、カッコええなぁ。
俺には、武道に関する知識はあんまねえから、技の名前とか分からんのが実に残念や。
まあ、俺がこんな呑気やのはセツが強過ぎて余裕そうやったからなんやけど。
「っ!そうはさせるか!」
急にセツが叫んで、ポケットの中の石っころを投げる。
なんで、ポケットに石っころがあるんや?
そして、その石っころは一人の男の手に当たる。
手を押さえてうずくまった男の手から落ちたのは、拳銃。
てか、なんで拳銃があるんや!
セツは残り少なくなっていた、男を無力化し、拳銃を持ってた男を取り押さえる。
「拳銃があるということは、暴力団とか拳銃の密売組織とかと繋がりがあったってことかな?とりあえず、警察呼ぶか」
スマホをウエストポーチから出して、電話をかけるセツ。
その間も、男たちに目を光らせ、拳銃を持ってたやつはしっかり馬乗りになって取り押さえとる。
拳銃を持っていたんは、一人だけやったようや。
ところで、セツ。
拳銃を持ってたやつに勝ってんやけど。
てか、えらい手馴れとったんやけど。
まさか、これもいつものこととか言わんやろな?
◇ ◇ ◇ ◇
「お手柄だよ。セツ君。おかげでまた、拳銃密売のルートがひとつ分かりそうだ」
「そうですか。それはよかったです。佐藤さん」
「でも、危ないことに首を突っ込んでいくのは止めてね。セツ君の身に何かあってからじゃ遅いから」
「いつも、気付いたら拳銃で狙われてるんですよ」
「まあ、事情聴取は後日行うから、今日は帰っていいよ」
「ありがとうございました」
セツ。
これ、よくあることなんやな。
もしかしなくても、とんでもないやつを魔法少女にしてしまったわ。
そうや。
セツの魔道具は、あれにしたろ。
◇ ◇ ◇ ◇
◇フユカ視点◇ ◇
後日。
「おお~これが、妖精特製のワンド!」
私は、興奮してワンドを見つめる。
紫の芯となる部分に、白い蔓のようなものが巻きついている。
洗練された感じのおしゃれなやつだ。
一言言おう。
無茶苦茶嬉しい!!!
そして、セツの分もハッピーリさんは用意してきてた。
「剣!?」
セツが少し驚く。
まあ、現代日本で生活していれば、運悪く拳銃を見ることこそあれ、剣は見ないもんね。
「せや。どうやらセツは体動かすんが得意のようやし、ピッタリやろ」
セツが、おそるおそる純白の鞘に入った剣を抜く。
美しい剣身は、剣なんかに詳しくなくとも見とれてしまう。
剣身以外のところは、全て純白になっている。
鞘のところに蒼のリボンがチョウチョ結びになっているのは、魔法少女だからだろう。
「まあ、確かに剣術も基礎は出来るけどね。これ、魔法少女が持ってていいものなの?」
「剣術も出来るんかい!いや、確かに剣渡したんはいろいろ武道が出来るみたいやったからやけど………………まあ、普段はチャームとして持ち運ぶし、その剣で切ることが出来るのは魔物だけや。人間やら、ただのその辺にある物やらは切れん。安心マジカル設計や!」
「…………なら、いいか」
こうして、私とセツに専用魔道具のチャームが与えられた。
まあ、今のとこ、強敵どころかあの時のスライム以外に戦ってないけどね。
◇ ◇ ◇
「宿題終わったぁ!」
私は家から飛び出す。
魔法少年になってから、二回目の土日ですがあの時のスライム以外に魔物はまだ出ていない。
平和と喜ぶべきか、せっかくの専用魔道具が試せなくてがっかりするべきか迷うとこだ。
セツはどうやら、自分の家の庭で剣道の練習してるみたいだし、私は特にすることなし。
勢いで家を飛び出したけど、どうしようかな。
「フユカちゃん!ちょうどいいところに!」
この声は!
「ナナお姉さん!」
私は、ナナお姉さんに駆け寄る。
ナナお姉さんは私の家のむかいに住んでいる高校生である。
茶色の髪に、澄みきった茶色の瞳で肌は白く、服は清楚な感じの白いワンピース。
格好いい彼氏もちのリア充だが、アニメ、漫画、ラノベ、本、ゲームなどなどが大好きなヲタク気質の人なのだ。
特に、ジャンルがファンタジーや魔法、異世界転生系統のため私ともの凄く気が合う。
「これ、読み終わったから貸すね!約束してたでしょ?」
ナナお姉さんは、ラノベを一冊差し出す。
なんと、あの話の最新刊か。
「ありがとうございます!続き気になってたんですよ!」
「私的には、ユウキが好き過ぎて尊くて最高だったよ!」
ナナお姉さんが思い出すかのように、宙を見つめる。
残念ながら、私とナナお姉さんの最推しキャラは違う。
推しとしてはかぶっているキャラもいるが、ナナお姉さんの最推しは、実は私は好きではない。
まあ、敵役だからね。
あと、ポジション的に汚い裏切り者みたいな要素も少しあるし。
ナナお姉さんは、それがまたいいとか身悶えてたけど。
「あ、そうだ。あれがアニメ化されるって情報……」
「知ってます!ついに来たって感じです!ナナお姉さんも知ってましたか」
「当たり前だよ!そんでさ、私の推しは……」
こんな感じで、会話が白熱していたその時。
ピロピロピロピロピロピロ!
なんか、聞き覚えのある音が水をさすかのように鳴る。
ちなみに、この音は普通の人には聞こえないらしい。
その証拠に、ナナお姉さんには聞こえてなさそうだ。
「あれ?フユカちゃんどうしたの?」
あ、でも様子がおかしいことには気付かれた。
「ごめん!ナナお姉さん!急用があって、またね!」
若干、不自然な感じではあるが、私はナナお姉さんにそれだけ言うと自分の家に駆け戻る。
「頑張ってね!」
少し呑気な感じで、私に手を振るナナお姉さん。
私は、それに軽く会釈だけすると、庭まで行き、そこでステッキと宝石を取り出す。
「フユカ!魔物が出たらしいぞ!」
セツが塀を乗り越えて私の家の庭に入ってくる。
それ自体は、珍しいことでもないので私はセツと一緒にいたハッピーリさんに話かける。
「場所は何処!?」
「魔物は、商店街の裏通りに出たんや。ちゃんと、音が聞こえてたようやな。よかったわ。たまに、気付かへんやつもおるし」
「とりあえず、早く行こう!変身!『月よ。我に力を』!」
そして、私は変身した。
ついでに、無言でセツも変身した。
よし、行こう!
いざ、商店街の裏通りへ!
忙しくなってきたので投稿ペースが遅くなります。
完全に止まることはないので、そこはご安心を。
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