男女逆転
うん。
状況を整理しよう。
白スーツを着た男―――ハッピーリさんに魔法少女にならないかと持ちかけられて、友達がピンチだということで承諾した。
そして、変身したらですよ。
茶色っぽい瞳に、茶色みがかっていたセミロングヘアーの私が、なぜか銀髪のイケメンに変身しているのだ。
手には真っ白いステッキを持ち、服は紫色で白糸で刺繍の入ったいわゆるローブである。
ローブの下は、騎士の飾りっ気がないバージョンとでもいうのだろうか。
中世ヨーロッパ風の動きやすそうな薄紫色の服である。
よく見ると、ステッキの先が月の形の宝石になっていたが、そこにはさほど驚きはない。
そう。
そこではない。
問題は、なぜ女の子の私が男の子になっているのかということだ。
「あの、ハッピーリさん。これは?」
戸惑いつつも、ハッピーリさんにそう言った私は気付く。
声までイケボになってる!
そのことに、少しばかりショックを受けつつ、私は視線を返事のないハッピーリさんのところに向ける。
ハッピーリさんは―――――――――――――金髪の超絶美少女に馬乗りにされていた。
明らかに、その超絶美少女は怒っている。
あー。
これは、あれだ。
男女逆転だ。
なんだか、ストンと府に落ちた。
「セツ?」
私が首を傾げつつ呟くと、案の定その超絶美少女は立ち上がり私を見る。
「フユカ……か?」
可愛らしい、少し高めの声で呟いた超絶美少女ことセツ。
言葉使いはセツなのに、見た目が超絶美少女なのが違和感半端ない。
黒髪に、夜を思い起こさせる黒の瞳だったセツ。
それが、なんとびっくり。
金髪の超絶美少女へと変身していた。
琥珀のような瞳に、蒼いワンピース、蒼い手袋、蒼いロングブーツ、薄い蒼のタイツ。
ロングの金髪を結んでいるリボンも蒼と蒼ずくしだった。
セツの横には、ステッキの先が星の形になっているものがある。
とにかく、魔法少女っぽかった。
というか、中身がセツだと知らなければ有名コスプレイヤーさんとかが魔法少女のコスプレをしたのかと思っただろう。
とりあえず、可愛かった。
ただ、そんなセツがハッピーリさんに馬乗りしているのはなんというか。
しかも、腕もしっかり押さえてるし。
「あの、そろそろどいてくれへんか?ちゃんと説明すっから」
◇ ◇ ◇
あのスライムは、進む速度が遅いので手短になら説明出来る、というわけでハッピーリさんに説明してもらった。
「いや、これは魔法王様の趣味でな。魔法王様ってのは妖精王様の彼女なんだけども、変身システムとか考えてるのは魔法王様なんや。だから、文句は魔法王様に言ってくれや。まあ、魔法少女や魔法少年としての力は保証するで」
セツが押さえていた腕をさすりつつ、座りこんだまま、説明したハッピーリさん。
いろいろと突っ込み所があるのだが。
まあ、それは後で聞くとしよう。
それは、ともかくスライムだ。
私たちが、もたもたしたせいで、ナツとあと10センチくらいのところまで迫っている。
というか、気付かないナツもナツだけど。
ナツも、スライムに追いつかれるくらいのんびり歩くのはどうかと思う。
イヤホンで音楽を聞いているからしょうがないのかな?
ともかく、スライムをやっつけますか。
魔法少女―――いや、私は魔法少年なんだけども、だいたい登場する時は高い所から登場するんだよね。
例えば、そう。
屋根の上から!
「そこのスライム!止まりなさい!」
セツが、テンプレ無視の地面にいる状態で言葉を発した。
しかも、なかなかさまになってる。
でも、テンプレ無視すんなよ!
心の中で叫びつつも、私はステッキを構える。
セツも私と同じように―――というかたぶん、私を真似したんだろうけどステッキを構える。
セツ。
さっき怒ってたわりに、意外とノリノリ?
ちなみに、スライムは一瞬反応しただけだった。
ナツは、当然気付いてない。
……………なんか寂しい。
よし。
「焼こう」
私は、呟いた。
だって、スライムとか気持ち悪いし。
だいたいのスライムの弱点は、火だった気がする。
「ハッピーリさん。魔法ってどう使うの?」
「念じれば、使えるでぇ」
後ろから、未だに地面に座りこんでいるハッピーリさんの声が聞こえてきた。
なるほど。
それなら、話は早い。
「ファイアボール!」
異世界転生もののアニメなどから、アイデアを拝借し、ファイアボールをぶっぱなす。
まあ、無詠唱でもいけるけどそこはノリだ。
ファイアボールをぶっぱなした瞬間に、私の中の何かが減った感じがした。
スライムは、あっという間に消滅する。
「えっ!?何!?」
そこで、ようやくナツは気付いたようで、イヤホンを外してこちらを向く。
「何これ!?」
ナツが、目を見開く。
それは、こっちのセリフでもある。
スライムを倒したとたん。
凄い数のスライムが、排水溝やら塀の向こうやら脇道やらからわらわらと出てくる。
なんで、こんなにいるんだよ。
第2ラウンド突入ですか?
今後は、不定期更新で週一投稿は必ずするという形でやっていく予定です。
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