テスト前夜
◇◇? ? ?◇◇
「本当によかったのか?」
「何が?」
椅子に座って、問題を必死に解いている少女は億劫そうに少年の問いに問い返す。
「魔法少女と魔法少年の件だよ。確か、幹部十傑の一人がやられたんだよね」
「サラノアちゃんね」
少年は座っていたソファーから立ち上がり、少女の方へ向かって歩く。
「復讐とか、しなくてもいいの?その幹部の子、確か君との百合を望んでたんだよね?」
「………残念ながら、サラノアちゃんは好みじゃなかったんだよね」
少女はそう答えつつも、問題を解く手を止めない。
少年は少女の後ろで立ち止まるとやれやれとでも言いたげにつぶやく。
「それは手厳しい」
「別に貴方が気にする事じゃない」
「それもそうか。でも、本当にいいのか?あの戦いを経て、魔法少女と魔法少年の心境が変わって、より心が強くなったっぽいし。それ抜きにしても、テスト直前を狙ったほうが…」
「そんな無粋な真似しなくとも、『楽園』は実現させる。だから、心配しなくてもいい。魔法少女と魔法少年が罪悪感で潰れてくれなかったのは少し計算が狂ったけど、どちらにせよ問題ない。計画は着実に進んでいる。無粋な真似はしない」
「無粋ねえ…それより、なんでそんなに必死で勉強してるのさ?カモフラージュのために学校行ってるんだから、適当でもいいんじゃないのかい?」
「駄目だよ。私のポリシーに反する」
「ポリシーか。そんな感情を君が持ってるなんてね」
少女は少年をちらりと見ると言う。
「それ、どういう意味?」
「いやさ、これまでに数多の世界を恐怖に陥れ、目的のためなら手段を選らばない君にしては珍しいと思って」
「私は、このレベルのテストならズルをしなくても高得点取れるってことを自分に証明したいだけ」
「なるほどね。でも、これからどうするのさ?」
「とりあえず、幾つか試したい事があるから試す。魔法王と妖精王とあいつの対策を考えなくちゃね。うまく無力化しないと。それと、魔法少女と魔法少年はこちら側に来てもらうこれは決定次項」
「こちら側に来てもらうって、簡単にいくのかい?絶対に邪魔されるよ?」
「そもそも最初から、そんなの織り込み済み。だいたい、むこう側もシュンを引き抜くつもりだよ。絶対に」
「そうなの?」
「そうだよ。そもそも、魔法少女と魔法少年の友が敵幹部とか萌え展開過ぎだし、それでいろいろあってどちらかの陣営に鞍替えとか萌え展開過ぎでしょ!」
ガタッと立ち上がる少女。
「ああ、なるほど。分かった」
「よし、直々に命令を下す。魔法王側の陣営の調査を行え。気取られぬように徹底的にだ。手は出すな。どんなに相手が油断していようとも、今は攻撃をする事は許さん。そして、他の者には待機を命じておけ。私の代わりにな」
「その命令をこなせば、第二…いや、第三の夫に認めてくれる?」
「もちろん。私のためだけに仕えてくれるならば、その約束は必ず果たすよ」
少女の言葉に、暗い笑みを浮かべ恭しく頭を垂れると少年は言った。
「かしこまりました。我らがボス」
◇ ◇ ◇
◇フユカ視点◇ ◇
「フユカ。本当にそれでええんか?」
「ハッピーリさん、うるさい。明日提出なんだから、仕方ないじゃん!」
私はワークに赤ペンを走らせながら言う。
時が経つのは早いもので、明日がいよいよテストなのである。
そして、私は赤染めの儀を行っているのだ。
赤染めの儀。
それ即ち、答え全写しである。
「ハッピーリさん。いつも、私たちの生活に口出ししないのに、何でこんな時だけするかな?」
「いや、せやけど…流石に全部写すんは……」
「私たちの苦労が分からないから、そんな事言えるんだよ」
「それ、前の日までアニメを見まくってたやつのセリフじゃないやろ」
「うるさい」
テスト前のこの日に当番になるとかついてないな。
当番というのは、ハッピーリさんを預かる当番の事だ。
当番制にして、順番に預かる事になっている。
どちらかが、ずっと一緒ってのは良くないんじゃないかという事でこうなった。
当番制といっても、当番になる日が決まっているわけではない。
その日の当番を決める方法は、じゃんけんである。
朝のじゃんけんの勝敗で決まるのだ。
そんで、私の勝敗はというとかなり低い。
五回に一回勝てればいいほうで、二週間連続でなった事もある。
そして、今日も負けてしまったのだ。
テスト前くらい、セツが預かっててもいいのに。
「はあっ……」
「あからさまにため息つかんどいてくれや。俺のこと、そんなに嫌か?」
「なんていうかね。ハッピーリさんは妖精感がないんだよ。それが微妙」
「そう言われても、しゃーないやろ。俺もこう見えても、24時間365日魔物索敵をしとるし、魔法少女と魔法少年のリンクを繋げとかなかんし、魔法王様や妖精王様から呼び出しかからんかヒヤヒヤせなあかんし、大変なんやよ」
「……初情報がほいほいと出てくるね」
そういう事は早めに教えておいて欲しかったな。
私が白いリス状態のハッピーリさんをじいっと見つめてやるとハッピーリさんは気まずそうに言う。
「別にいいやろ」
「いや、よくない!そういう情報共有が大事なんだよ!」
「知らんわ!それよりもフユカ、課題は?」
「あ……いや、ハッピーリさんが邪魔するのがいけないんだよ」
「俺は関係ないやろ!」
「いいや、関係あるね」
「フユカ。それを言ったら―――」
私とハッピーリさんの口論は、セツがうるさいって窓越しに文句を言ってくるまで続いた。
まったく、嫌になっちゃうよ。
◇ ◇ ◇
ストックが尽きましたので、次回投稿を二週間後とさせていただきます。
二週間後には必ず投稿するのでご理解下さい。




