いざ、変身!
「魔物!?」
私は、いち早くその言葉に反応する。
魔物………魔法少女と魔法少年の敵は魔物なのか。
ハッピーリさんは、白スーツのポケットからガラスの球らしき物を取り出す。
パリンッ!
ガラスの球が砕けると、その破片が勝手に空中で形づくっていく。
まるで、空中に窓が出来ていくみたいだ。
セツは、そんな光景を絶句して見ている。
そして、その窓に映像が映し出された。
「なにあれ!?」
ここから近い、見覚えのある人気のない通りにいたのは透明なスライム。
しかもですよ。
かなり大きい。
自転車くらいなら、余裕で包めそうである。
うーん。
あれが敵か……………………………………………
正直、気持ち悪いから嫌なのだが。
確かに、魔法少女とかものすごーく心引かれるよ。
でも、スライム相手というのはね。
私がそんな感じで悶々と考えていることなんぞ、露知らず。
ハッピーリさんは、魔物について説明し出す。
「あれは、『人拐いスライム』やな。体内に人間を取り込み、異界へと連れ去る。異界に連れ去られたら最後、二度とこっちの世界には戻ってこれないんや。そして今、そいつに狙われているのは……………………」
ハッピーリさんが、そう言うと窓に違う映像が映し出された。
映し出されたのは、私たちと同じ学校のブレザーの制服を着た女の子。
私は、息を飲んで叫んだ。
「ナツ!?」
そう。
私の友達のナツだ。
さっきのスライムがいた通りにいるようで、歩きながらイヤホンで音楽を聞いている。
………………一応、私たちの学校って登下校時にイヤホンで音楽を聞くとか禁止のはずなんだけど。
そんなことより、今の説明だとナツがピンチってこと!?
私は、考えるより先に家から飛びだした。
◇ ◇ ◇
「ちょっと待ちいや!まだ、説明終わっとらんし!」
道を走る私に、ハッピーリさんは声をかける。
なんだか、妖精とか言ってたわりに息とか上がっててついてくるのが大変そうだ。
セツも私の後を追って来たようで、私の後ろにいる。
「だって、ナツがピンチなんでしょ!?助けなきゃ!それと、ハッピーリさん。さっきの提案。私は了解だよ!」
そう言って、私はタンッと塀に飛び登る。
この塀の上を通ったほうが、早く着く!
セツも塀に飛び登り、私の後をついてくる。
「ちょ!その上行くんか!?」
ハッピーリさんもなんだかんだでなんとか塀の上によじ登り、私たちの後を追って来る。
「僕は、まだ信じてないからね。まあ、もし本当にあの魔物とやらが現実にいるとするならば、やっつけるのに協力してもいいかな」
「えっと、それは二人とも提案を受け入れてくれるちゅうことでいいんやな?」
息が上がりつつも、芯の通ったイケボで確認してくるハッピーリさん。
「もちろんだよ!」
「本当にいたらね」
口々に答える私とセツ。
「よっしゃ!契約成立や!クーリングオフとかなしやで!」
ハッピーリさんの言葉と同時に私たちは、さっきの映像で見た通りに着く。
目の前では、ナツと今にも襲いかからんとするスライムがいた。
「本当にいた…………………………」
呆然と呟くセツ。
私は、まだスライムに気付いていないナツを見て決意を固める。
「それで、どうすればいい?」
「これを使うんや」
ハッピーリさんが何処からともなく出したのは、真っ白いステッキ。
1メートルほどの長さで、片方の端に丸い小さなトレイのようなものがついている以外、なんの飾りもない。
私とセツがそれを受け取ると、ハッピーリさんは手の平をさしだす。
手の平の上には、ふたつの宝石が乗っていた。
ひとつは、蒼い星の形。
もうひとつは、紫の月の形。
私は、なんとなく紫の月の形をしてる宝石を選ぶ。
セツも、蒼い星の形の宝石を手にとった。
「その宝石をステッキのパネルに乗せるんや!それで変身出来る」
パネルというのは、さっきトレイのようなものだと思ったこれだろう。
「合言葉みたいなのはあるの?」
私が聞くと、ハッピーリさんは頭をかきつつ言った。
「特にないんやけど、言いたいなら『月よ。我に力を』みたいな感じでどうや?」
「よし、それじゃあ………いざ、変身!『月よ。我に力を』!」
私は、そう言って宝石をステッキに乗せた。
ちなみに、セツは黙って普通に乗せていた。
おい。
変身のときのお約束を無視すんな。
そう思った瞬間。
私とセツは光に包まれた。
◇ ◇ ◇
……………………………。
あれ?
どうなった?
私が、目を開けるといつもより目線が高い。
「おお~!成功や。なかなか、いい感じにいったなぁ~ほい、姿見」
ハッピーリさんが何処からか、姿見を出して私の前に置く。
「えっ!?」
そこに写っていたのは………………………………銀髪のイケメン男子に変身した私だった。
今日はあともう一話投稿します。