真の世界
あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いいたします!
戦いやすくなった。
とはいえ、現実は甘くない。
なぜなら、敵は力が未知数のサキュバスなのだから。
ま、肉弾戦は苦手そうだけど。
それよりも、戦いの前に聞いておきたいことがある。
「真の世界ってなんですか?それだけは聞いておきます」
これまで戦ってきた、『人拐いスライム』や『人殺しゴブリン』を使って何をしたかったのかだけでも聞き出しておきたい。
ちなみに、『人殺しゴブリン』はオカマたちを襲っていたやつらのことで、ハッピーリさんに後で名称を聞いたんだよね。
そんな事はともかく、サラノアは驚いたように目を丸くすると笑みを浮かべる。
「いいでしょう。そちらから、聞いてくるとは思いませんでしたが話しましょう。真の世界というのは………簡単に言うと、百合、薔薇、重婚等が出来る素晴らしい世界のことです」
なぬっ!
百合に薔薇に重婚だと!
「さらに、それらに関する制限は一切なし。好きな人が何人いようとも全員を嫁や婿に出来るのだし、同性婚も普通という世界なのです。もちろん、全員がそうなのですから、差別などもない住みやすい世界なのです。戦争もなく、飢える事もない」
なんだと!
ちょっと、それさ………………
尊い。
「まさに、『楽園』じゃん」
ヲタク目線だけじゃない。
その世界にはこの世界にはないものがある。
きっと、差別もなく、生活しやすいんだろうな。
もしかしたら、宗教による対立とか国同士のいざこざもないのかもしれない。
食べ物がなく飢える事も、逆に飽和状態になる事もない。
戦争なんて、抗争なんて、一切ない。
なんだろう、こっちが『楽園』を邪魔する悪者じゃんか。
「ねえ、あっち側ついてもいいかな?」
「いや、駄目でしょ!てか、なんで心揺れてるの?」
わりと、セツにガチで怒られた。
でもさ、最高の世界の実現を邪魔しているのならこちらが悪者なのではと…………………
「ざけんなや!」
これまで、ずっと黙っていたハッピーリさんが叫ぶ。
「何が『楽園』や!何処に人を拐ったり、殺したりして創られる『楽園』があるんや!アホ!俺はそんなやり方で創られた『楽園』なんかが正しいなんて思えへんわ!だいたい、そんな誰かが管理してる世界なんて人権も糞もねえやろ!」
はっとした。
そうじゃん。
理想郷のように聞こえてたけど、そんな方法で創られた世界なんて駄目だよね。
それに、その世界は自由はないのかもしれない。
いや、確実にない。
そっか、きっと管理されきった『死の楽園』なんだ。
そもそも、サラノアの話は飛躍し過ぎだ。
薔薇も百合も重婚も出来るだけで世界が平和になるわけがない。
いや、それが実現するだけでも尊いという事ではありがたいんだけど。
でも、サラノアのいうボスのやり方は間違っている。
「ごめん、目が覚めた」
私が小声で謝ると、ハッピーリさんとセツは口々に言う。
「なら、いいんや」
「ちょっと、どうしたのかと思った。心配かけないでよ」
私は気を取り直してサラノアと対峙する。
「相も変わらずそちらは、呆れる程の偽善者っぷりですね。本質はそちらも変わらないというのに」
「本質?」
サラノアの言葉にセツが首をかしげる。
「その通りです。貴方がたは下僕からオカマたちを助けたそうですね。では、何故下僕がオカマたちを襲っていたのか知っていますか?」
「知りません」
逆に理由があるのか?
首をかしげる私とセツを見てサラノアは淡々と告げる。
「あの者たちは、オカマを軽蔑していました。それどころか、面白い商売道具としてオカマを利用したのです。さらに、体が男でも心が女なのでオカマをやっている人がいるという事実を根底から否定していました。『そんな人間いるわけないだろ』と」
「酷い…………」
あのオカマたち、そういうやつらだったのか。
あながち、セツの両方退治は間違えでなかったかも。
「我らは、そんな底辺をかたずけようとしたのです。一回失敗しただけで諦めるつもりはありませんでした。しかし、魔法王のした事によりその必要はなくなりました」
「「魔法王のした事?」」
私とセツの声がハモる。
ハッピーリさんは何も言わない。
「結果から言うと、魔法王のせいであいつらのオカマバーは経済的に破綻して、やつらは多額の借金を背負っています。まさに、生き地獄。さらに、自殺しようとしても運よく助かるという奇跡を授けてました。そんな方法で制裁を加えているのでなあらば、我々が動く必要はないと判断いたしました」
絶句した。
セツも無言になっている。
偽善者でありつつ本質は変わらないと言いたい気持ちは分かる。
でも、それでも。
何かが違う。
魔法王のした事は確かに酷い。
慈悲の欠片もないし、徹底的に生き地獄に落とすつもりだ。
でも、殺すのとは違う。
社会不適合者だからといって殺すなんて事はあってはならない。
そんな権限、誰も持ってない。
確かに、本質は同じ。
でも、私は―――――――――――――
「ハッピーリさん。私はどちらが正しいとか分からない。でも、サラノアさんが何処か歪んでいると感じた。ハッピーリさんが真っ直ぐな芯を持っていると感じた。魔法王の話はどう反応していいのかわからないけど、ハッピーリさんの方を信じる」
「そうだね。まあ、人を殺す方よりはチャンスがある魔法王の方がましなんじゃない?」
セツはそう言って私の意見に賛同する。
基準がわりと、ドライな感じもするが。
「…………そうですか。残念ですね。賛同してくれるかと思いましたのに」
サラノアは、本当に残念そうにため息をつく。
私は、専用魔道具のワンドを構え、セツも無言で剣を構える。
「その選択、後悔させてあげましょう」
サラノアのその言葉を皮切りに戦いが始まった。
次回、シュン視点をはさんでからいよいよVSサラノアです。
次回投稿は一月十日です。
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