表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジャパンウォーズ  作者: kikuzirou
57/61

エピソード26.5 君に捧げる恋歌

 遊びたわむれる七人の乙女のもとへ、目の周りに入れ墨をした、大久米命おおくめ・のみことが向かう。狭野尊さの・のみこと (以下、サノ)の求婚相手、媛蹈鞴五十鈴媛ひめたたらいすずひめ (以下、タタラちゃん)に求愛の歌を贈るためである。


 大久米命おおくめ・のみことは、七人の乙女に、というか、タタラちゃんに聞こえるように歌をうたった。



やまとの 高佐士野たかさじのを 七行ななゆく 媛女をとめども たれをしまかむ



大久米おおくめ「大和の国の高佐士野を、七人連れで歩く乙女たち。その中の誰を妻となさいましょう。」


 この歌に、サノが返す。当然、タタラちゃんに聞こえるように・・・。



かつがつも いや先立さきだてる をしまかむ



サノ「どの娘とも決めがたいんやが、一番先頭を歩く、年長の乙女を妻にしよう。」


 大久米命が、乙女たちのもとに近付いた。そのとき、年長の乙女、すなわち、タタラちゃんが、大久米命に向かって歌を贈った。



あめつつ ちどり ましとと などける鋭目とめ



タタラちゃん「あまつばめや鶺鴒せきれい、千鳥やしとどでもないのに、どうしてそんな裂けた鋭い目をしているの?」


 大久米命が、負けじと返す。



媛女をとめに ただはむと ける鋭目とめ



大久米おおくめ「お嬢さん、じかに、お目にかかりたくて、私の裂けた鋭い目は・・・。」


タタラちゃん「分かりました。結婚を承諾致します。」



大久米おおくめ「えっ!? いいんですか?!」


タタラちゃん「はい。ちなみに、私と母は、大阪府おおさかふ茨木市いばらきし五十鈴町いすずちょうにある、溝咋神社みぞくいじんじゃにもまつられてます。」


 そこに、狭野尊さの・のみことも駆けつけた。


サノ「ホンマにええんか?」


タタラちゃん「はい。ちなみに、『日本書紀にほんしょき』で父とされている、事代主神ことしろぬしのかみは、溝咋神社から二キロほど離れた、高槻市たかつきし三島江みしまえにある、三島鴨神社みしまかもじんじゃに祀られてます。」


サノ「歌の返しが見事で、わしはれてしまったんやじ。それに、ちゃっかり、解説を入れてくるところも気に入ったっちゃ。」


タタラちゃん「ありがとうございます。ちなみに、三島鴨神社から溝咋神社へ神輿みこしが渡る行事もありました。二千年後は、やっていないみたいですが・・・。」


サノ「事代主神が、妻と娘に会いに行ってたんやな・・・。」


タタラちゃん「はい。ちなみに、雨つばめは、夏の渡り鳥。鶺鴒も千鳥も鳥の名前です。しとどは、ホオジロなどの小鳥の古名です。そのほかに、質問はございますか?」


サノ「あ・・・あるっちゃ。どこにすべきか、迷ってるっちゃ。この辺りの地理が不案内で・・・。不器用・・・ですから。」


大久米おおくめ高倉下たかくらじのモノマネが流行ってるんですか?」


サノ「これで何とかなると学んだんやじ。」


タタラちゃん「そういうことを、乙女に、お尋ねになっていいものなんでしょうか?」


大久米おおくめ「えっ? でも、乙女っていいながら、どういう意味か分かってるってことですよね?」


タタラちゃん「あっ・・・(〃▽〃)ポッ」


サノ「大久米よ。読者のために解説、頼むっちゃ。」


大久米おおくめ「ええ、さきほど、結婚が成立したということで、次はむつむ場所が必要になってくるわけです。でも、我が君は、ここの地理が不案内ということで、たずねちゃったんですね。ちなみに『記紀』には、こんなやり取りありませんので、しからず・・・。」


サノ「・・・というのも、当時の習俗では、男女は自由に相手を選べてたんやじ。相思相愛になれば、人目をしのんで逢瀬おうせを重ね、その後、女性の親に認められて、初めて正式な夫婦になるという流れやったんやじ。」


 こうして、紙面の都合で、二人は想像にお任せして、そういう関係になったのであった。このとき、サノは歌を詠んだ。



葦原あしはらの しけしき小屋に 菅畳すがたたみ いや清敷さやしきて 二人寝ふたりね



サノ「河原の草むらにある、むさ苦しい小屋にすげの畳をきれいに敷いて、二人で寝たよね。」


大久米おおくめ「直球じゃないですか・・・。」


サノ「お・・・お父様にあやかって・・・。不器用・・・ですから。」


タタラちゃん「これで、私たち夫婦ですね。」


 すると、台本にない展開が待ち受けていた。父親の事代主神と母親の玉櫛媛たまくしひめが現れたのである。


事代主ことしろぬし「娘のこと・・・頼みますぞ。もしも、泣かせるようなことがあったら、わしは・・・わしは、許さんからなっ! そんなことになったら、わしに仕える役目である、役前やくまえとして、永久に奉仕してもらうけんなっ!」


玉櫛媛たまくしひめ「娘のこと、幸せにしてけろ。おめえさんなら、タタラちゃんを幸せにできるって信じてるだよ。それから、ぜってい、泣かしちゃダメだかんなっ!」


サノ「は・・・はいっ。」


 こうして、サノは震えながら、タタラちゃんを嫁に迎えた・・・と思いたい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ