エピソード25 一つ屋根の下
紀元前662年3月7日、狭野尊 (以下、サノ)は、生まれて初めての詔を発表した。
そのとき、マロ眉の天種子命が、唐突に解説を始めた。
天種子「詔というのは、天皇の命令という意味にあらしゃいますが、どちらかというと、目標といいますか、政府方針みたいなものにあらしゃいます。」
サノ「生まれて初めてっちゅうことは、日本初っちゅうことでもあるな。」
天種子「そうなりますなぁ。ちなみに、この詔は、建国に先駆けて発せられたものにあらしゃいますので、国是となります。」
サノ「国是?」
天種子「国の目標ということにあらしゃいます。国家のスローガンと言った方が、二千年後の人には分かりやすいんやないかと思います。」
サノ「なるほど・・・。では、わしの意気込み・・・聞いてくんない(ください)。」
『わしが東征を始めて、六年が経過したっちゃ。その間、アマちゃ・・・天照大神などの天神の神威を借りて、賊軍を討ち滅ぼすことができたっちゃ。辺境の方はまだ鎮定されちょらんし、強力な敵も残ってるみたいやが、中つ国については、すっかり平定されたっちゃ。そこで、ここに都を置いて、宮殿を作ろうと思うんやじ。』
天種子「ここまでが、東征についての感想みたいなところにあらしゃいます。」
『世の中はまだ未熟で、民心も素朴っちゃ。穴に住む人も、まだ存在するような有り様や。そもそも、聖人は、その時々の状況に合わせて制度を作るもの・・・。なので、人々のためになることやったら、どんなことでも妨げられずに進められるはずっちゃ。そこで、これからは山林を切り開き、神々を祀り、皇位に即いて、民を治めようと思う。そして、上は天神の恩徳にこたえ、下は皇孫、すなわち瓊瓊杵尊の精神を広めようと思う。』
天種子「ここで、皇位に即く決心ができたと語っておられます。そして、次に語られるのが、国家方針。すなわち国是にあらしゃいます。」
『そして国を一つにして、都を開き、八紘を覆って、宇とする・・・。すごくいいんじゃないかと思うんやじ。』
天種子「大きく広がる空を屋根に見立て、一つ屋根の下に住まう家族のような国を造りたいという意味にあらしゃいます。そして、最後に・・・。」
『ここから一望すると、あの畝傍山の東南に位置する橿原の地は、国の真ん中にあるみたいや。ここに都を作るっちゃ。』
天種子「都の場所を決める言葉で締めくくるわけですな。」
サノ「この詔のことを、後世の人は『八紘一宇の詔』と呼んだっちゃ。『一』なんて字は、ないんやけど・・・。」
天種子「普通に読めば『八紘為宇』になりますが、『一』でも意味は通じますし、その方が、分かりやすいということではあらしゃいませんか?」
サノ「まあ、そうやな。一宇っちゅうんわ、一家と同じ意味っちゃ。一つ屋根の下に住まうって内容が、見た目でも分かるわな。」
天種子「では、都となる宮殿作りを始めねばなりませんなぁ。」
サノ「そうやじ。二千年後の橿原神宮っちゃ。」
天種子「もうネタバレするんですか?」
サノ「どうせ、分かる人には、すぐ分かることっちゃ。」
天種子「まあ、そうですが・・・。」
サノ「祭神は、言うまでもなく、わしやじ。」
天種子「ホントに言うまでもないことにあらしゃいますなぁ。」
サノ「じゃっどん、ここが日本発祥の地やじ。」
天種子「橿原神宮前駅の駅前にも書いてありますなぁ。『ようこそ、日本のはじまりへ』と書かれた看板がありますぞ。」
サノ「近鉄の駅やったな。」
天種子「そうです。駅から神宮までは徒歩10分ほどにあらしゃいます。タイミングが良ければ、やたちゃんとカーコちゃんにも会えますぞ。」
サノ「なんや? どういうことっちゃ?」
天種子「橿原神宮のマスコットキャラにあらしゃいます。八咫烏を模したキャラクターですなぁ。」
サノ「なんち・・・。まさか、三本足が・・・。」
そこに、元ネタの八咫烏 (以下、三本足)がやって来た。
三本足「オラがずっと、サノやん・・・じゃなかった、我が君を守ってやってんだぞ。すげぇだろ?」
サノ「誰も頼んどらん!」
三本足「いいじゃねぇか。それくらいよお。」
サノ「悪いとも言っちょらん!」
三本足「ちなみに、やたちゃんが青色で、カーコちゃんが赤色だ。参拝の際は、ぜってぇ見つけてくれよなっ。」
サノ「土日や祝日が、出会える可能性大っちゃ。平日は難しいみたいやじ。」
三本足「なんでだ?」
サノ「大人の事情っちゅうやつやろ。」
三本足「なるほどなぁ。オラなら、いつでも行くんだけんどなぁ。」
天種子「では、宮殿作りを進めるということで・・・。あとは、嫁取りだけにあらしゃいますなぁ。」
サノ「確かに、息子の手研耳は、まだ独身や。そろそろ嫁を探さにゃならんと思ってたんやじ。」
天種子「いえ、手研耳様ではなく、我が君の嫁にあらしゃいます。」
サノ「はっ?! どういうことっちゃ? わしには吾平津も興世もいるんや。なして、わしが嫁を取らにゃならんのや?」
天種子「高千穂と中つ国の統合のためには、是非とも必要なことにあらしゃいます。」
三本足「こんな髭もじゃのところに嫁いでくる姫がいるんか?」
サノ「ちょっと不愉快な表現やったが・・・。否めないっちゃ・・・。」
天種子の語る嫁取りとは・・・。次回、詳細が語られる。




