エピソード23.5 中つ国 未だ平定せず
中つ国を平定した狭野尊 (以下、サノ)一行は・・・。
ウマシ「ちょっと待ちなはれっ!」
唐突に、可美真手命 (以下、ウマシ)が割り込んできた。
ウマシ「まだ平定できてまへんでっ。」
サノ「どういうことっちゃ? 長髄彦も討ち取られ、もう敵はいないはずやろ?」
ウマシ「中つ国には、他にも抵抗勢力があるんだす。」
ここで、小柄な剣根が、主君に代わって質問した。
剣根「ウマシ殿たちに従わない勢力があるということですか? あの長髄彦殿の武力をもってしても、屈服させられなかったと?」
ウマシ「その通りや。すごい奴らでな・・・。」
サノ「詳しく教えてくんない(ください)。」
ウマシ「まず一人目・・・。新城戸畔や。」
サノ「戸畔ってことは女か?」
ウマシ「よお分かりまへんけど、層富県の波哆丘岬を根城にしている奴でんがな。二千年後で言うと、奈良市や大和郡山市の辺りですな。奈良県北部って言えば、分かりますかな?」
そこに、マロ眉の天種子命と夜麻都俾 (以下、ヤマト)、そして弟猾が乱入してきた。
天種子「ウマシ殿・・・。そのような解説では、読者に分かってもらうことはできまへんでっ。」
ウマシ「えっ?! そうなりますのんか?」
天種子「こういう感じに説明するんやっ。層富県は、奈良県北部、佐保川が流れる辺りの地域のことにあらしゃいます。佐保川が地名の語源になっております。奈良市の大部分が含まれますなぁ。」
ヤマト「大和郡山市の一部や、生駒市の一部も含まれるみたいですね。明治の頃までは、添上郡と添下郡と呼ばれていたみたいですけど・・・。」
弟猾「大きい地域やったからな。不便っちゅうことで、奈良時代の頃に、上下に分けられたんや。わしらの時代は、層富とも、曾布とも呼ばれたんやが、だんだん『添え』と訛っていったんやろな。」
ヤマト「それで、波哆丘岬って、どこなんですか?」
弟猾「そこは、よお分からへんねん。まあ、昔のことやさかい、しゃあないわな。」
天種子「こんな感じに解説するんや。」
ウマシ「見事な連携やなぁ。わても、これからは一人で説明せんと、みんなで解説するようにします。以後、よろしゅうっ。」
天種子「こちらこそ・・・。」
サノ「あのう・・・。わだかまりも解けて、ホンマにええことなんやが・・・。解説は終わっちょらんぞっ! まだ、一人目っちゃ!」
ウマシ「そ・・・そうでしたな。では、二人目・・・。居勢祝っちゅう奴です。こいつの本拠地は、和珥の坂下になります。」
天種子「二千年後の天理市周辺みたいですな。奈良市の春日辺りも含むみたいにあらしゃいます。」
ヤマト「天理市内に、和珥っていう地名もあるから、そこを中心とした周辺地域なんでしょうね。」
弟猾「ちなみに、祝っちゅうんわ、祭祀者っちゅう意味や。生贄なんかを捧げる意味合いもあるんで『はふる』は、屠るにも通じるんや。まあ、ちょっと怖い雰囲気の言葉やなぁ。」
ヤマト「なので、居勢祝は、祭祀権を司る豪族なんだと思いますよ。」
ウマシ「補足説明、ありがとうなぁ。それから、三人目・・・。こいつは、猪祝、言います。臍見の長柄丘岬を根城にしてる奴です。」
天種子「長柄は、御所市の長柄のことやと言われております。臍見は、よお分かりません。」
弟猾「この三か所の勢力を・・・。土蜘蛛って呼んでくれっ。手足が長く、身長が低いんで、そう呼ばれてるんや。『日本書紀』では、侏儒に似てる・・・と書かれてるんやが、これは小人っちゅう意味だす。」
ヤマト「弟猾殿・・・。手足が長い云々は、蔑称で、本当は、そうじゃないみたいですよ。人間と違う身体的特徴を書くことで、恐ろしさを強調しているんじゃないですかね。」
弟猾「そういう説もあるみたいやな。せやけど、山中の穴で生活してたみたいやから、もしかしたら、ホンマに、そういう体つきやったかもしれへんで。」
天種子「まあまあ、諸説ありっちゅうことで・・・。」
サノ「と・・・ところで、蔑称って、なんね?」
ヤマト「これは、馬鹿にした呼び方といいますか、下に見た呼び方という感じの言葉です。」
サノ「なるほど・・・。それで、この三人を倒せば、本当の意味で、中つ国を平定することになるんやな?」
ウマシ「いえ、まだですっ。」
サノ「まだっ!?」
ウマシ「高尾張邑にも土蜘蛛がいるんだすっ。」
サノ「名前は、なんや?!」
ウマシ「それが、よお分かりまへんのや。なんで、こいつにだけ名前がないんでっしゃろ? わてが教えてほしいくらいだす。」
弟猾「ちなみに、高尾張邑は、二千年後の御所市北窪と言われてるんや。」
天種子「葛城山の麓という説もあるみたいやな。」
弟猾「まあ、諸説ありっちゅうことやな。」
サノ「エピソード19でも、ちらっと高尾張邑の名前が出てたけど、あの時から、抵抗してるってことか? 赤胴の八十梟帥って呼ばれてなかった?」
弟猾「ああ、あれですか・・・。台本に詳しい説明がないんで、よお分からんのですが、一緒なんとちゃいますか。」
サノ「これも、諸説ありっちゅうことか・・・。」
剣根「あのう・・・。思ったより解説が長引いたんで、平定については次回になりそうですぞ。」
サノ「いっちゃが、いっちゃが(いいよ、いいよ)。どうせ、台本では説明だけのところっちゃ。戦闘シーンもないし、一部の軍隊を派遣しただけみたいやし・・・。」
台本では、一部の軍隊を派遣したと書かれているが、率いた人物の名は語られていない。そこで、この物語では、夜麻都俾と味日命にしようと思う。




