エピソード22.1 巨星 墜つ
狭野尊 (以下、サノ)一行が、兄磯城の軍と戦っていた頃、中つ国で、一大事が起きようとしていた。この地を治める、饒速日命 (以下、ニーギ)が死を迎えようとしていたのである。
ニーギ「都合が悪くなったら、退場する予定だったからな・・・。」
そこに、息子の可美真手命 (以下、ウマシ)がやって来た。
ウマシ「おとん・・・。そろそろやな。」
ニーギ「そうだ。そろそろなのだよ。だが、汝らを残して去るというのは、何とも申し訳ない限りだ・・・。しかし、まさか死んでいたとはな・・・。よもやよもやだ。」
ウマシ「おとん、何か言い残したことはありまへんか? 伝えておきたいこととか?」
ニーギ「台本にはない展開だからな・・・。何を言えば良いのやら・・・。」
そのとき、ニーギの妻で、ウマシの母親、三炊屋媛がやって来た。
三炊屋「だんなはん! もう逝きはるんですか?!」
ニーギ「都合が悪くなったからな・・・。三炊屋・・・いい女になるのだな・・・。」
三炊屋「もう、いい女だす。何を言うてはるんですっ。」
ニーギ「言ってみたかっただけだ・・・。」
そこへ、ニーギのもう一人の息子、高倉下がやって来た。
高倉下「ち・・・父上、親不孝な私を・・・お許しください。」
ニーギ「おお、高倉下か。親不孝とは、何だ?」
高倉下「サノ殿に協力してしまいました。不器用・・・ですから・・・。」
ニーギ「何も問題はない。サノ殿と力を合わせ、新しき国を造っていくのだ。」
高倉下「えっ?! よ・・・よろしいのですか?」
ウマシ「あにさん、おとんは、最初っから、サノはんと戦うつもりはないんや。一連の戦いは、長髄彦のおっちゃんが、勝手にやらかしたことやさかい。」
高倉下「そ・・・それでは、私のやったことは、間違いではなかったと・・・。」
ニーギ「そういうことだ。」
ウマシ「良かったな、あにさん。」
三炊屋「せやけど、だんなはん・・・。わてのあにさんには、何て説明するんだす? 今さら、戦をやめろ、言うても、聞かん、お人でっせ?」
ニーギ「そこなんだが・・・。是が非でも、説得をしてもらうほかないな・・・。」
ウマシ「わては自信ないでっ。」
高倉下「す・・・すみません。私も・・・ぶ・・・不器用・・・ですから。」
三炊屋「えっ? わて? ちょっと、何を言うてますのん。そんなこと、できるわけ、ないやないですかぁ。」
ニーギ「じゃあ、誰が説得するんだ?」
ウマシ「やっぱり、ここは、おとんが・・・。」
ニーギ「さて、そろそろ逝くか・・・。」
ウマシ「あっ! 逃げるんか?! おとん!」
ニーギ「これは、自然界の宿命というものであって・・・。年老いた者から、命が尽きるというのは、永久不変の道理というものであって・・・。」
高倉下「どうか・・・父上、逝く前に、一言、長髄彦殿に・・・。」
ニーギ「わ・・・分かった。分かったよ。汝らの、たっての願いとあれば、聞かないわけにもいかないな・・・。」
こうして、長髄彦 (以下、スネ)が呼び出された。
スネ「あにさんっ! どうしたんでっか? こっちは、天孫もどきとの戦の準備で、忙しいんですわ。単刀直入に御願いしますっ。」
ニーギ「実は、そろそろ逝くことになったのだよ。」
スネ「なるほど、神になって、天孫もどきを打ち破る作戦でっか?」
ニーギ「い・・・いやっ、そうではない・・・。サノ・・・殿とは、戦をやめるべきではないかと思っているのだ。」
スネ「なるほど、和睦と見せかけて、闇討ちにするっちゅう作戦ですな?」
ニーギ「い・・・いやっ、そうではない・・・。本当に和睦すべきだと・・・。」
スネ「さすがは、あにさん。敵を騙すには、まず味方から・・・っちゅうことですな。やりますなぁ。そこまで、言い切る、あにさんのこと、ホンマ、尊敬しとりますっ。」
ニーギ「い・・・いやっ、これは作戦ではない。本当に、サノ殿と和睦を結び、新しき国造りをおこなっていくべきだと・・・。」
スネ「あにさん、台本にはない展開ですけど、言ってええことと、悪いことがありまっせ。」
ニーギ「た・・・確かに、そうだが・・・。」
スネ「高倉下が吹き込んだんでっか? あいつ、山に埋めときましょか?」
ニーギ「長髄彦・・・汝こそ、言っていいことと、悪いことがあるぞ・・・。」
スネ「す・・・すんまへん。つい、日頃の想いが口に出てしまいました。せやけど、天孫もどきを受け入れるっちゅうんわ、納得いきまへん。あにさんが、やめろ言うても、わてはやめまへんでっ。」
ニーギ「どうしても、戦うというのか?」
スネ「はいっ! 一度言ったことは曲げへん・・・それが、わてのポリシーでんがな。」
ニーギ「ウマシや、高倉下をも、敵に回すかもしれないんだぞっ。」
スネ「台本にはない展開ですから、言わせてください。わては、覚悟しとります。わてが勝てば、ええんですから・・・。」
ニーギ「あくまで、戦うのか・・・。」
スネ「すんまへん。こればっかりは、あにさんの言うことには従えまへん。」
ニーギ「そんなに、サノ殿が嫌いか?」
スネ「わてにとって、天孫っちゅうんわ、あにさんであり、ウマシのぼっちゃんなんですわ。今さら、高千穂とかいう、辺鄙なところから来た奴を受け入れることはできまへん。」
ニーギ「そ・・・そうか・・・残念だ・・・ガクッ。」
スネ「あにさぁぁん!!」
こうして、中つ国を治める豪族、饒速日命は、その生涯を閉じたのであった。
サノ「ようやく登場できたっちゃ。ちなみに『記紀』では、饒速日命が登場するっちゃ。でも『先代旧事本紀』では死んだことになっちょる。そこで、このジャパンウォーズでは、死んだことにしたわけっちゃ。じゃっどん、なして(なぜ)?」
作者「その方が、劇的かな・・・というのは嘘です。このあとの展開で、その方がしっくりくるんじゃないかと思ったんです。」
サノ「どうなることやら・・・。とにかく、次回は、再び、わしらの物語に戻るっちゃ。期待してくれよなっ。」




