エピソード21.5 動き始めた作戦
狭野尊 (以下、サノ)一行に敵対する兄磯城の軍勢は、磐余に布陣していた。この状況を如何に打破するか・・・。一行は、直ちに軍議を開くのであった。
サノ「・・・というわけで、兄磯城は戦うつもりみたいやな。召したのに来ないっちゃ。どうしたらええんやろう?」
その問いに、諸将は答えた・・・と『日本書紀』には書かれているが、ここは便宜上、軍事専門家の道臣命に答えてもらおう。
道臣「兄磯城は腹黒い賊っちゃ。まず弟磯城を遣わして、教え諭させるべきやじ。」
発言を聞いていた弟磯城 (以下、クロ)が、話の途中で、ツッコミを入れてきた。
クロ「本名は黒速なのさ。だから、クロちゃんって呼んでほしいんだよね。」
道臣「わ・・・分かったっちゃ。」
クロ「それで、僕が説得に行けばいいんだね?」
道臣「じゃが(そうだ)。それと、一緒に兄倉下と弟倉下にも説得してもらうっちゃ!」
クロ「えっ? 新キャラですかっ?」
道臣「ここでいきなり登場し、それ以後、活躍をみせない兄弟やじ。」
その台詞を待っていたかのように、倉下兄弟は口を開いた。
兄倉下「そうなんですよ。いきなり登場するんですよ。それも、台詞のみの登場なんですよ。」
弟倉下「熊野で遭遇した、高倉下と名前が似てるんで、何か関係があるのかなぁ・・・なんて、作者が考えて調べたそうですが、特に、そんな記載もないみたいです。」
道臣「じゃあ、これで・・・汝らの出番は終わりっちゃ!」
兄倉下・弟倉下「ええぇぇ!!」×2
サノ「仕方なかっ。活躍してない汝たちが悪いんやじっ。」
兄倉下・弟倉下「そ・・・それは、そうですが・・・。」×2
道臣「まあ、熊野か菟田で味方になった豪族っちゅうところでしょうな。」
兄倉下「じゃ、そういうことでっ。」
弟倉下「名前的に熊野の豪族っぽいですよね?」
サノ「どっちにしても、今回限りの登場になるんやろな・・・。」
兄倉下・弟倉下「いやぁぁぁ!!」×2
道臣「泣き叫ぶ二人は置いといて・・・。それじゃあ、台詞を続けるっちゃ。」
サノ「頼んだじ。」
道臣「それでも帰順しないんやったら、それから武力を使っても遅くないち、思うちょります。」
サノ「よしっ! では、クロと倉下兄弟よっ! 行ってくんない(ください)!」
クロ・兄倉下・弟倉下「わかりましたっ。」×3
数時間後・・・・・・
クロ・兄倉下・弟倉下「ダメでしたぁぁ。」×3
サノ「やっぱりダメやったか・・・。」
道臣「こうなったら、戦うしかなかっ。」
そのとき、椎根津彦 (以下、シーソー)が献策してきた。
シーソー「では、まず女軍を忍坂の道から出撃させましょう。女軍とは、別動隊という意味やに。」
サノ「別動隊を出してどうするんや?」
シーソー「賊軍は、これを見て、必ず兵を繰り出し、迎え討たんとするはずやに。そこで、我らの本隊は、墨坂方面に進み、敵の背後を襲い、不意を突けば、必ず破ることができるはずっちゃ。」
そこで、味日命が疑問を呈してきた。
味日「ちょっと待ってくれよ。墨坂って、賊軍が炭火を起こして、道を塞いでる峠じゃねえか。そんなところ、どうやって通るんだよっ。」
シーソー「菟田川の水を取って、賊軍が起こした炭火に注いで、火を消すんやに。まさか、そこを通って来るとは、思っていないはずっちゃ。」
味日「菟田川って、二千年後で言う高見川のことだな。」
シーソー「その通りっちゃ!」
サノ「よしっ! その作戦でいくっ! 『記紀』には、何も書かれちょらんが、女軍を率いる将が必要やじっ! そこで、椎根津彦よっ! 汝が女軍を率いよっ!」
シーソー「承知仕ったっ!」
椎根津彦率いる女軍が出撃すると、兄磯城の軍勢は大挙して押し寄せてきた。予測通り、大軍勢が来たと勘違いしたのである。激しい攻防が繰り広げられた。兄磯城軍は、全力を挙げて抵抗したと記されている。
一方そのころ、サノたちの本隊は、墨坂方面にいた。作戦通り、炭火を決して、敵の背後を突くためである。しかし、ここで問題が発生した。皇軍の兵士たち、すなわち久米部たちの疲労が極限にまで達していたのである。
道臣「これでは、速やかに火を消すことも、戦場に辿り着くこともできないっちゃ!」
クロ「ヤバいんじゃないか? 我が君・・・どうしたらいい?」
サノ「よしっ! ここは歌を謡って慰めるほかないっちゃ! すぐに作るじっ!」
数分後・・・・・・
目の周りに入れ墨をした大久米命が久米部たちの前に踊り出た。
大久米「汝らっ! 新曲が出来たぜっ! それでは聞いてください。『ヘルプ 久米部はアイドル』・・・。」
楯並めて 伊那瑳の山の 木の間ゆも い行き瞻らひ 戦へば 我はや飢ぬ 嶋つ鳥 鵜飼が徒 今、助けに来ね
道臣「盾をつらね、伊那瑳の山の木の間から、相手を見守って戦ったから、わしらは空腹になってしまった。鵜飼の仲間よ、助けに来てくれっ・・・という意味やじ。」
サノ「伊那瑳の山は、宇陀市にある伊那佐山のことやじ。標高637メートルっちゃ。ちなみに、題名は嘘っぱちなんで、無視してくれよなっ!」
大久米「そ・・・そんな・・・。」
サノ「とにかく、これで兵の士気は上がるっちゃ!」
なぜ、歌を謡うことで、兵の士気が上がるのであろうか。次回、その意味が明かされる。




