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ジャパンウォーズ  作者: kikuzirou
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エピソード21 烏が来りて率過と鳴く

 忍坂おしさか八十梟帥やそたけるを討ち取った、狭野尊さの・のみこと (以下、サノ)一行は、大いに喜び、天を振り仰いで大笑いした。そして、次の歌をうたった。



今はよ 今はよ ああしやを 今だにも 吾子あごよ 今だにも 吾子よ



 ここで、目の周りに入れ墨をした大久米命おおくめ・のみことが解説を始めた。


大久米おおくめ「今はもう 今はもう ああしやを 敵を全滅させたよ 今だけでも 我が軍よ 今だけでも 我が軍よ 敵を全滅できて嬉しい・・・って意味ですよ。『ああしやを』というのは、笑い声ですね。ワッハッハみたいな・・・。」


 そのとき、五十手美いそてみ (以下、イソ)も解説に加わってきた。


イソ「久米部のみなさんが、歌ったあとに、大笑いするようになったのは、このときを起源とするようですぞっ。」


サノ「これも一種の呪術ってことやな。」


大久米おおくめ「こちらもニューアルバムに収録予定の新曲ですよ。聞いてください。」



えみしを 一人ひだり ももな人 人は言へども 抵抗たむかひもせず



大久米おおくめ「夷敵は一人で百人に当たるほど強いと人は言うが、来目の軍に対しては、抵抗さえしないではないか・・・という意味ですよ。」


サノ「解説御苦労っちゃ。ちなみに、久米部くめべが勝手に歌っているわけではないっちゃ。わしを中心に、みんなで作詞作曲をしているんやじ。」


 そこへ、サノの息子、手研耳命たぎしみみ・のみこと (以下、タギシ)がやって来た。


タギシ「父上、次は兄磯城えしきと戦うわけですが、何か策略を用いられるのですか?」


サノ「いましも、久米部らも、戦いに勝っておごってないっちゃ。これこそ良将の振る舞いっちゃ。さて、賊兵の首領格は、ほとんど滅びたが、まだまだ残党軍が残ってるっちゃ。兄磯城の動きも分からん。なので、いつまでも、ここにいるべきではないち、思っちょる。まず陣営の場所を変えるっちゃ。」


タギシ「忍坂から、どこに移動するんですか?」


サノ「それが『記紀』には、何も書かれてないんやじ。」


タギシ「そんな曖昧な情報で移動すると仰ったんですか?!」


 すると、弟猾おとうかしがやって来て、台本にはないことをしゃべり始めた。


弟猾おとうかし「とりあえず、忍坂には別動隊を残して、本隊は墨坂すみさかに近いところまで移動した方がええんやないですかね。」


サノ「なして?」


弟猾おとうかし「まあ、なんと言いますか・・・。台本的な?」


サノ「また、台本か!」


タギシ「ところで、父上・・・。当然、いくさで決着を付けるわけではないですよね? ほかの策もありますよね?」


サノ「当たり前っちゃ。まずは降伏を勧めるつもりっちゃ。」


タギシ「じゃっどん、降伏するでしょうか?」


弟猾おとうかし「タギシ様、兄磯城は分からへんけど、弟磯城おとしきは降伏する可能性、高いでっせ。」


タギシ「弟磯城?」


弟猾おとうかし「そうだす。わしら菟田うだの人間と同じように、磯城の地も、天孫御一行に従おうとする勢力とあらがおうとする勢力に別れてたんです。それを兄と弟で表現したんやと思います。」


タギシ「なるほど・・・。では、弟猾殿も、従おうとした勢力の代表者的な人格ということですな?」


弟猾おとうかし「そういうことですな。」


イソ「それで、我が君、降伏勧告の使者は誰が?」


サノ「まずは、こちらに出頭するよう命じてみるっちゃ。それで断ってくるようなら、八咫烏やたがらすを派遣して、説得してもらうっちゃ。」


 それを聞いて、八咫烏やたがらす (以下、三本足)は悲鳴を上げた。


三本足「ええぇぇ!! オラが行くんか?!」


サノ「いましなら、ひとっ飛びやろ?」


三本足「そ・・・そうだけんど、よう・・・。」


サノ「行けいっ! 三本足っ!!」


三本足「分かったよ。行けば、いいんだろっ。」


 こうして紀元前663年11月7日、まずは兄磯城をしてみたが、命に従う気配がなかったので、予定通り、八咫烏が兄磯城の陣に向かったのであった。


三本足「天神の御子が、おめえを召してっぞ! 率過いざわ、率過!」


兄磯城えしき「わしが兄磯城だけど・・・。その率過いざわって何だよ?」


三本足「さあ、さあ・・・って意味だけんど、昔は、そう言ってたみてえだな。」


兄磯城えしき天圧神あめおすのかみが来たって聞いて、うるさく思ってたところに、烏が嫌な声で鳴きやがるぜ。わしの矢で、死にやがれっ。」


 そう言うと、兄磯城は矢を放ってきた。間一髪でよけた三本足は、すぐに飛び去り、次に弟磯城の屋敷へ向かった。


三本足「天神の御子が、おめえを召してっぞ! 率過いざわ、率過!」


弟磯城おとしき「天圧神・・・すなわち、威徳の有る神が来たと聞いて、朝から晩まで恐れかしこまってたんだよ。烏さん、よくぞ鳴いてくれたね。」


 弟磯城は、その後、葉盤ひらでを8枚作り、三本足に御馳走したのであった。葉盤とは、平たい皿のことである。


 そして、弟磯城は、三本足に付き従って、サノの陣営を訪ねたのであった。


サノ「よく来てくれたっちゃ。嬉しいっちゃ!」


弟磯城おとしき「お初にお目にかかります。弟磯城こと、黒速くろはやです。」


サノ「く・・・黒速?」


弟磯城おとしき「実は本名があるんだよね。それが黒速なのさ。」


サノ「そ・・・そうか・・・。」


弟磯城おとしき「今後、クロちゃんって呼んでくださいね。」


サノ「よしっ! では、クロよ! 兄貴の方はどうなってるんや?」


クロ「兄は八十梟帥やそたけるを集めて、武器を準備しているよ。抵抗するつもりみたいだ。急いで、討ち果たすべきだね。」


サノ「やっぱり、そうか・・・。すぐさま、諸将を集めて軍議するっちゃ。」


 こうして、兄磯城対策評議会という名の軍議がおこなわれることになったのであった。

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