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ジャパンウォーズ  作者: kikuzirou
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エピソード19.5 北北西に進路を取れ

 西方を大軍勢によって抑えられ、身動きの取れない狭野尊さの・のみこと (以下、サノ)一行。この現状を打破するため、天照大神あまてらすおおみかみ (以下、アマちゃん)より授かった奇策で挑むことにしたのであった。


サノ「・・・ということで、天香久山あまのかぐやまやしろの中の土を取ってくるんや!」


 その時、八咫烏やたがらす (以下、三本足)がツッコミを入れてきた。


三本足「おめえ馬鹿かっ?! それとも、アマちゃんが馬鹿なのかっ?!」


サノ「馬鹿とは失礼っちゃ! それに、わしは馬鹿ではないっ!」


三本足「じゃあ、知ってんのか? 天香久山は、敵陣の向こう側ってこと・・・。」


サノ「えっ? 敵陣の向こう側?」


三本足「そうだっ。敵陣を越えて行かなきゃ、辿り着けねぇんだ。」


サノ「わしはともかくとして・・・アマちゃんは馬鹿かも・・・。」


三本足「そんな、でけえ声で言ったら、アマちゃんに聞こえっぞ。」


 そこへ、天種子命あまのたね・のみことが割って入ってきた。


天種子あまのたね「ここは、変装して山に向かうべきやと思いますが、如何いかがにあらしゃいます?」


サノ「変装?」


天種子あまのたね八十梟帥やそたけるが警戒せんよう、変装して向かうんです。」


サノ「なるほど・・・。よしっ! その手で行くっちゃ。」


 変装大作戦を決行することにしたサノは、椎根津彦しいねつひこ (以下、シーソー)と弟猾おとうかしを呼び出した。


サノ「椎根津彦よ。いましおきなをやれっ。爺ちゃんってことっちゃ。弟猾よ。汝はおうなをやれっ。婆ちゃんってことっちゃ。」


シーソー「爺ちゃんですか?」


弟猾おとうかし「婆ちゃんでっか?」


サノ「じゃがっ(そうだ)! いましら二人は、天香久山に行って、こっそり埴土はにつちを取って参れっ。新しい国造りの大業たいぎょうの成否は、汝らの務めにかかってるんやじ。慎重に頼むっちゃ。」


シーソー「わ・・・分かったっちゃ。」


弟猾おとうかし「分かりました。任せてください。」


 未曽有みぞうの作戦を任された二人。無事に成功できるのか? 次回につづ・・・


シーソー「まだ、終わっちょらんっ。」


弟猾おとうかし「せやっ。これからやぞっ。」


シーソー「しかし、爺ちゃんと婆ちゃんに変装したからって、本当に通れるんやろか?」


弟猾おとうかし「ホンマですねえ。」


シーソー「よしっ! こうなったら、誓約うけいするっちゃ。」


弟猾おとうかし「できるかどうか、占うんですか?」


シーソー「じゃが(そうだ)。それじゃあ、いくっちゃ! 我が君が、本当に新しい国を造れるんなら、行く道が自然に通れるはずっちゃ。もし、そうでないんやったら、賊軍にさまたげられるやろう・・・。」


弟猾おとうかし「えらいこと言うてもうたんやないですか?」


シーソー「これくらいの覚悟が必要っちゃ! 行くぞっ!」


 こうして、爺ちゃんと婆ちゃんに化けた二人は、腰を曲げて、よろよろとした足取りで、敵陣に向かった。賊兵たちは、二人を見て大笑い。


八十梟帥「大醜乎あなみにく老父老嫗おきなおうな。」×多数


 ここで、八十梟帥の一人が説明を始めた。


説明のお兄さん「これは、古代の言葉だよ。『あなみにく』とは、何て汚らしいって意味。直訳すれば、なんて汚らしい、じじいとばばあだ・・・って意味だよ。」


弟猾おとうかし「お兄さん・・・説明、ありがとうな。それじゃあ、わしらは山に向かうさかい、道を開けてくれへんか?」


説明のお兄さん「どうぞ、どうぞ。」


 誰にも怪しまれず山に辿り着いた二人は、せっせと土を取り、持ち帰ったのであった。サノが喜んだのは言うまでもない。


 早速、一行は土器作りを開始した。80枚の平瓮ひらかと80枚の手抉たくじり、それから厳瓮いつへを作ったのであった。


 ここで、サノの息子、手研耳命たぎしみみ・のみこと (以下、タギシ)が説明を始めた。


タギシ「平瓮は平らな皿、手抉は手で土をえぐって作った土器、厳瓮は神酒みきを入れる神聖な瓶ってことだ。えっ? 手抉は、アマちゃんが言及していなかったじゃないかって? そんなことは知らんっ。わしらは、台本通りに進めるだけっちゃっ!」


 土器を用意した一行は、丹生にうの川上で、天神地祇てんじちぎまつるための準備を始めた。


 ここで、味日命うましひ・のみことが、頼んでもいないのに語り出した。


味日うましひ「丹生の川上は、奈良県ならけん東吉野村ひがしよしのむらおむらにある丹生川上神社中社にうかわかみじんじゃなかしゃだと言われてるってばさ。すぐ傍に、三本の川が合流する夢淵ゆめぶちというのがあって、そこで誓約うけいをおこなったみたいだな。ちなみに川の名前は、高見川たかみがわ日裏川ひうらがわ四郷川しごうがわの三本ですっ!」


サノ「中社ってなんね?」


味日うましひ天武天皇てんむてんのうの頃に創建された神社なんだけど、戦国時代の混乱を通じて、所在不明になっちゃったんだな。」


サノ「ちょっと言ってる意味が、よく分からないっちゃ。」


味日うましひ「1871年(明治4年)に下市町しもいちちょうの神社が認定されたんだけど、その後、1896年(明治29年)に、川上村かわかみむらの神社が有力視されたんだよね。でも、1922年(大正11年)になって、東吉野村出身の森口奈良吉もりぐち・ならきちさん、というお爺さんが、言い出しちゃったんだってばさ。」


サノ「言い出した?」


味日うましひ「では、時空を超えて、ならきっつぁん、どうぞ!」


奈良吉「蟻通神社ありどおしじんじゃこそが、丹生川上神社であるっ!」


味日うましひ「そういうことで、研究調査の結果認められちゃって、三つの神社が並存することになったんだけど・・・。」


奈良吉「既に川上村の方が上社かみしゃ、下市町の方が下社(しもしゃ)と名付けられとったんで、中社なかしゃになったんや。」


サノ「前の名前は、蟻通神社やろ? この社名はどういうことっちゃ?」


奈良吉「天皇陛下の吉野離宮への行幸ぎょうこうの様子が、遠目に見て、蟻が通ってるように見えたことによります。ちなみに、行幸ゆうんは、天皇陛下が旅行することやで。」


サノ「そうか、わしらが祭祀さいしをしたあと、いろんなことがあったんやな・・・。」


 感慨深げなサノをほったらかして、準備は着々と進むのであった。

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