エピソード16.5 三本足再び
高倉下と別れた狭野尊 (以下、サノ)一行は、熊野から中つ国を目指し、山中へと足を踏み入れた。しかし、山深い土地柄である。通れそうな道も見つからず、進むことも退くこともできない状況となってしまった。要するに迷子である。
サノ「迷子とか言うなっ!」
ここで、マロ眉の天種子命がツッコミを入れてきた。
天種子「いいえ、迷子にあらしゃいます。この期に及んで、妙な自尊心は捨てるべきやと思いまするが、如何に?」
サノ「み・・・認めるしかないんか・・・。」
天種子「どう致します? 戻りますか?」
サノ「うっ・・・。こ・・・こうなったら、寝るっちゃ!」
自暴自棄になったのか、ふて寝したくなったのか、一行は野宿することとなった。と言っても、何日も彷徨っているので、もう何度目か・・・という野宿である。
しかし、今日の野宿は、いつもと違った。サノが夢を見たのである。夢の中には、あの大御所、天照大神 (以下、アマちゃん)が登場。こんなことを言ったとか、言わなかったとか・・・。
アマちゃん「サノっ! 何、へこたれてんのよっ。」
サノ「へこたれてないっちゃ。それより、夢に出てこなくても、天津神スマホでピピッとすれば、ええやないかっ。」
アマちゃん「それは台本にない設定でしょ。作者オリジナルを採用しちゃダメ! 絶対!」
サノ「そ・・・それで『日本書紀』の通り、夢の中に出てきたんですか?」
アマちゃん「そうよ。基本的に、このやり方以外の接触方法はないからっ。そこのところよろしくねっ。」
サノ「前置きは、これくらいにして、本題を言ってほしいっちゃ。」
アマちゃん「スマホとか、言うからでしょ! まあいいわ、本題に移りましょう。汝は今、迷子よね?」
サノ「うっ・・・。これは悪夢?」
アマちゃん「そういうことで、先導者を遣わすわね。その名も、八咫烏よ!」
サノ「ヤタガラス?」
アマちゃん「期待しててね。じゃあねぇ。」
サノは、そこで夢から覚めた。本当かよ・・・と思っていたとか、いなかったとか・・・。すると、上空から何かが飛来して、サノの目の前に降り立った。何がやって来たのか・・・。言うまでもないが、念のために言っておこうと思う。八咫烏である。
八咫烏「オッス! オラ、八咫烏っ! いっちょ、やってみっか!」
サノ「さ・・・三本足の大きなカラス? どこかで見たような?」
八咫烏「言うんじゃねえ。言ったら、ぶっ殺すぞ!」
サノ「あっ! エピソード7.5で登場した、ノーギャラなのでとか言って、フリップで説明してきたカラスっちゃ!」
八咫烏「言わなくてもいいじゃねえか。」
サノ「汝が先導者?」
八咫烏「そうだっ。よろしくなっ。」
サノ「瑞夢の通りである。これこそ天照大神の徳が成せる業よ。天津日嗣の大業を助けてくださらんとの思し召しであろうか。」
八咫烏「急に真面目に台詞言っちまってよお。棒読みに聞こえっぞ!」
サノ「棒読み・・・ですから。」
するとそこに、日臣命がやって来た。
日臣「先導者の三本足っちゃ! やったじ!」
サノ「まず、ビックリしろ! じゃっどん、なして(なぜ)知ってるんや?」
日臣「紙面の都合っちゃ。というわけで、わしが三本足の導きに従って、道を切り開いていくっちゃ。」
サノ「えっ? そんなんできるんか?」
日臣「荒事担当、軍事の天才、日臣様とは、わしのことやじっ。」
サノ「初耳っちゃ・・・。まあよか、汝に任せるっちゃ。頼んだぞ! 日臣!」
三本足「ちょっ、オラのあだ名、三本足になってねえか?」
サノ「そういうことっちゃ。行けい! 三本足よっ!」
三本足「はいはい。行きゃあいいんだろ。いっちょ、やってみっかぁ。」
そこに目の周りに入れ墨をした大久米命もやって来た。
大久米「指揮官は日臣ですが、実際に、兵士たちをまとめているのは、この大久米ですよ。一緒に参りますよっ!」
サノ「えっ? それも初耳やじ。」
大久米「これまで説明する機会がなかったから、仕方ないですよね。実は、日臣が士官で、私が下士官みたいな扱いなんですよ。」
サノ「そ・・・そう言われてみると・・・。」
すると次に、日臣命の息子、味日命もやって来た。
味日「当然、父ちゃんが行くんだから、俺も行かねえとな。」
サノ「いやっ、しかし、汝は『記紀』には登場せんやろ?」
味日「我が君っ。それでも、父ちゃんと共に活躍したいってばさ!」
サノ「う~ん。まあ、そうやな。大伴一族の活躍が始まった、歴史的瞬間やかい(だから)、息子がいた方が映えるよなぁ。」
日臣「我が君、よかですか?」
サノ「よかっ!」
日臣・味日「やったっちゃ!!」×2
すると、寝ぼけ眼の状態で、椎根津彦 (以下、シーソー)がやって来た。
シーソー「おはようございます。ところで、大伴一族って何ですか?」
日臣「何を隠そう。わしが大伴氏の御先祖様なんや!」
シーソー「へえ。」
味日「と・・・父ちゃん・・・まだ、大伴は有名じゃないみたいだな。」
日臣「心配しなくてもいいっちゃ。今日、知ることになるんやじ。大伴が、どれだけ偉大なのかをっ!」
シーソー「三本足のカラスが、大伴っちゅうことか?」
日臣「ちがぁあう! わしら親子が・・・。」
三本足「コントは、それくれえにしてよ、そろそろ行かねえか? オラ、飛びたくてウズウズしてんだけんどよお。」
サノ「では、三本足、大伴一家、そして大久米の兵士たちよ! 行っちゃってくんない!」
こうして、八咫烏の先導を頼りに、日臣らが道を切り開き、そこを一行が通る作戦が開始されたのであった。




