エピソード15.5 神と神
熊野の神の試練を乗り越えた狭野尊 (以下、サノ)一行。そして、窮地を助けた男だけが残った。この男は何者なのか?
男「お・・・お久しぶりです。」
サノ「前にも会ったことがあるみたいやな。」
男「神邑の天磐盾でお会いしました。」
サノ「あっ! あの地元の民か?!」
男「印象が薄くて、すみません。不器用・・・ですから。」
サノ「なして、ここが分かったんや? 汝は誰ね?」
男「そ・・・それがしは高倉下と申しまする。」
サノ「高倉下か。本当に助かったっちゃ。かたじけないっちゃ。」
高倉下「ただ剣を届けただけ・・・不器用・・・ですから。」
サノ「じゃっどん、どうしてここが分かったんや?」
高倉下「武甕雷神が、それがしの夢に現れ、剣をサノ様に渡せと・・・。」
サノ「夢の中に・・・。」
すると、いきなり雷鳴が轟き、雲間から武甕雷神(以下、タケミー)が出現した。
サノ「ちょっと! 台本にはない展開やじ。」
タケミー「仕方なかろう。高倉下が不器用すぎて、説明が進まんのじゃ。わしが代わって説明をしてやる。」
サノ一行「ははぁぁぁ。」×多数
タケミー「天照大神は心配しておった。汝のことが気になって仕方がないらしい。まあ、孫みたいなものだからな。」
サノ「まあ、孫みたいなもんやな。」
武甕雷「そして、こう仰った。」
すると突然、日輪が眩く輝き始め、天照大神(以下、アマちゃん)が現れた。
アマちゃん「葦原中国は、いまなお、さやげりなり。」
サノ「おお、天照様。お初にお目にかかりまする。狭野っちゃ。」
アマちゃん「分かってますよ。みんな頑張ってるわね。」
ここで、マロ眉の天種子命が喰いついてきた。
天種子「ところで、さやげりなり・・・とは、どういう意味でっしゃろ?」
アマちゃん「騒がしいようだ・・・って意味よ。そして、タケミーに言ったの。もう一回、汝が征伐して参れってね。」
それを聞いて、剣根が疑問の声を上げた。
剣根「もう一回・・・って、どういうことですか?」
アマちゃん「出雲の大国主神に国を譲ってもらった時、タケミーを派遣したんだけど、そのときも、いろいろ抵抗勢力がいたのよ。」
タケミー「まあまあ、そんな昔のことは・・・。それより、今回の話ですぞ。」
アマちゃん「そうだったわね。そこで、タケミーは、こう言ったのよ。」
タケミー「わしが参らずとも、国譲りの交渉に使った剣を下せば、自ずと平らかとなりましょう。」
アマちゃん「諾なり。」
ここで、いきなり日臣命が説明を始めた。
日臣「諾なり・・・とは、よかろう、という意味っちゃ。」
サノ「それで、高倉下の夢に現れたんやな。」
タケミー「そうじゃ。家の倉に置いておくから、天孫のところに持って行って献上しろと伝えたのじゃ。」
高倉下「倉の床に、さかさまに立っておりました。」
サノ「さかさま?」
タケミー「柄の部分が下で、刃の方が上になるように置いたのじゃ。」
天種子「なにゆえ、そのようなことを?」
タケミー「これを見れば、絶対に神の意志が働いていると、馬鹿でも分かるであろう?」
高倉下「ば・・・馬鹿ですか・・・。」
タケミー「い・・・いやっ、すまん。そういう意味では・・・。」
アマちゃん「とりあえず、良かったじゃない。さあ、狭野! もうひと踏ん張りよ! 頑張ってねぇ!」
そう言って帰ろうとする二柱の神。そのとき、サノの息子、手研耳命 (以下、タギシ)が質問を投げかけた。
タギシ「アマちゃ・・・いやっ、天照様。なにゆえ、高倉下だったのでしょうか?」
アマちゃん「それを決めたのは、タケミーよ。汝が説明しなさい。」
タケミー「さ・・・されど『記紀』には書かれていないこと。申してよいのかどうか・・・。」
アマちゃん「許すっ!」
サノ「許すっ!」
タケミー「調子に乗るなよ、サノ。」
サノ「さ・・・作者の陰謀っちゃ。」
タケミー「いいだろう。説明しておいてやろう。こやつは、神邑の住民ではない。饒速日の息子じゃ。別名を天香語山と言う。」
サノ一行「ええぇぇぇぇ!!!!」×多数
高倉下「す・・・すみません。不器用・・・ですから。」
剣根「饒速日殿の御子息ということは、敵対する我らを救ってはいけないのではありませぬか?」
高倉下「父は父、それがしはそれがし・・・。お許しくだされ。不器用・・・ですから。」
サノ「いっちゃが、いっちゃが(いいよ、いいよ)。汝は汝っちゃ。気にすることなか。」
高倉下「サ・・・サノ様・・・。」
タケミー「おお、そうじゃ! 他にも伝えておくべきことがあった。」
サノ「調子に乗るなってことやろ? 分かってるっちゃ。」
タケミー「いや、熊野で常世に旅立った汝の兄のことじゃ。」
サノ「兄上?」
タケミー「稲飯は鋤持神となったぞ。農具の鋤のような鋭い歯を持つサメの神じゃ。」
サノ「サ・・・サメ? そ・・・それでミケの兄上の方は?」
タケミー「三毛入野は生きておるので、まだ神にはなっておらん。」
サノ「なっ!? ミケの兄上は生きておられると?」
タケミー「じゃが(そうだ)。」
タギシ「タケミーも高千穂の言葉を?」
タケミー「一度言ってみたかったんじゃ。それと、天照様以外は、タケミー禁止ぞ!」
タギシ「す・・・すみませんでしたっ!」
サノ「ミ・・・ミケの兄上が生きておられる。」
タケミー「ミケの話は、異国の言葉でいう、スペシャ・・・じゃない。スパイラ・・・じゃない。スペクタル?」
このとき、颯爽と日臣命の息子、味日命が説明を補足した。
味日「三毛入野様の物語については、スピンオフにて紹介するってばさ!」
タケミー「そうっ! それっ! スピンオフ!」
こうして二柱の神は高天原に帰っていった。




