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ジャパンウォーズ  作者: kikuzirou
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エピソード15 進撃の巨熊

 熊野の荒坂津あらさか・のつに漂着した狭野尊さの・のみこと (以下、サノ)一行のもとに、謎の女が現れた。


謎の女「聞いておくせっ! 見て臆せっ! 我こそが、この地を治める丹敷戸畔にしきとべや!」


サノ「荒坂津は別名が丹敷浦にしき・のうらという。そこから付いた名前やなっ!」


丹敷戸畔にしきとべ「その通り! 侵入者めっ! 闖入者ちんにゅうしゃめっ! その首、もらい受けるっ!」


サノ「女ひとりで、わしらを討ち取るつもりなんか? 頭がおかしいっちゃ。」


丹敷戸畔にしきとべいなっ! 我一人にあらずっ! 野郎ども、戦じゃあぁぁ!」


荒坂津のみなさん「戦じゃあぁぁぁ!!!」×多数


サノ「ちょっと、待ってほしいっちゃ。誤解っちゃ! わしらはただ流されてきただけっちゃ!」


 そのとき、サノの息子の手研耳命たぎしみみ・のみこと (以下、タギシ)が唐突に説明を始めた。


タギシ「こうして我々は、丹敷戸畔を討ち取ったんや。」


丹敷戸畔にしきとべ「説明で終わらせるの禁止やっ!」


タギシ「そ・・・そんな、セリフ合わせでは、そうなってたやろ?」


丹敷戸畔にしきとべ「心変わりや! あたいの夢は、舞台の上で、アドリブの花咲かせる女優になることや!」


 ここで、マロ眉の天種子命あまのたね・のみことわめき出した。


天種子あまのたね「台本では一行で終わる話なんや! ホンマでっせ。」


丹敷戸畔にしきとべ「うるさい! 皆の者、かかれえぇぇ!!」


サノ「分かったっちゃ! いましをアドリブの女王と認めるかい(から)、アドリブついでに、自分の説明をしてくんない(ください)。」


丹敷戸畔にしきとべ「仕方ないなぁ。説明したるわ。」


サノ「おお、さすがはアドリブの女神っちゃ!」


丹敷戸畔にしきとべ「あたいは、和歌山県の串本町くしもとちょうから三重県の大紀町たいきちょうにしきまでの熊野灘くまのなだ沿岸を統治する豪族と考えられているんや。」


サノ「説明、御苦労っちゃ! クランクアップの挨拶も頼むっちゃ!」


丹敷戸畔にしきとべ「もう少し活躍したかった。ニシキって呼んでほしかった!」


荒坂津のみなさん「ニシキィィィ!!!」×多数


 こうして、サノ一行は丹敷戸畔を討ち取ったのであった。


サノ「立派な女優さん・・・いやっ、立派な豪族やったな・・・。」


謎の声「それで、終わったと思っているのか? サノよ。」


サノ「えっ! つ・・・次は誰や!? 男の声? 次は、アドリブ男優か?!」


 そこに現れたのは、謎の男でもなく、アドリブ男優でもなく、大きな熊であった。


サノ「熊・・・。熊がしゃべってるっちゃ・・・。」


タギシ「父上、タコでもカメでもしゃべれること、お忘れか?」


サノ「そ・・・そうやった! 大蛸おおだこ、一号、二号・・・。元気にしてるかな。」


天種子あまのたね「そないなこと考えてる時やあらしませんっ!」


サノ「わ・・・分かってるっちゃ。読者のためっちゃ!」


天種子あまのたね「どこがや! どこが、読者のためなんや!」


タギシ「父上、天種子、何やら、熊が語り出しましたぞ。」


大きな熊「貴様が新しき国を作るうつわかどうか、ここで見極めさせてもらう!」


サノ「ちょっと待ってくんない。まず、名を名乗ってほしいっちゃ。」


大きな熊「われは熊野の神なり!」


サノ「えっ?! 熊野のかみなり?!」


熊野の神「ここでボケること、禁止する!」


サノ「そんなこと、作者が許さないっちゃ。」


作者「・・・・・・。」


サノ「えっ!? どういうことっちゃ! 神様には従順なんかっ!」


熊野の神「そろそろ、わしの毒気が効いてくる頃であろう。」


サノ「そう言われてみると、なんだか体がしびれてきたっちゃ。」


天種子あまのたね眩暈めまいもして参りましたぞ・・・。」


タギシ「くらくらするっちゃ。」


 ここで筋肉隆々の日臣命ひのおみ・のみことが脂汗を掻きながら説明を始めた。


日臣ひのおみ「ちょっと言わせてほしいっちゃ。みんな、フラフラで、倒れる者も出て来たっちゃ。力が湧いて来ないんやじ。もう、気持ちが悪くて、悪寒まで走る始末っちゃ。そしてついには、眠くなってきたっちゃ。」


熊野の神「これくらいで、へこたれるのか? サノよ。」


サノ「ううっ。悔しいっちゃ・・・。」


熊野の神「神の試練を乗り越えられないようでは、新しき国など作れぬぞっ!」


 すると、そのとき、一人の男が颯爽と駆けつけてきた。その男は一振りの剣を手にしている。


男「お・・・お久しぶりです。この剣、サノ様に献上します。」


サノ「つ・・・剣? ど・・・どういうことっちゃ?」


男「剣の名前は・・・韴霊ふつのみたま。これを渡せと言われました。」


サノ「ふ・・・韴霊?」


男「これを持てば、助かると・・・。」


サノ「分かったっちゃ。持ってみるっちゃ。」


 言われた通り、サノが剣を手にすると、一瞬にして眠気やら痺れやら悪寒やらが消え失せていった。周りの者たちも同様に、力を取り戻した。


サノ「す・・・すごい剣っちゃ。これは神宝ではないのか?」


男「た・・・武甕雷神たけみかづち・のかみの剣です。」


サノ「おお、そんなすごい剣とは・・・。」


熊野の神「武甕雷が動いたか・・・。」


サノ「どういうことっちゃ。」


熊野の神「台本には書いてないが、説明してやろう。わしは試練を与えた。本当に新しき国が作れるのかどうか、疑っておったのじゃ。だが、それは杞憂きゆうであったようだ。天津神あまつかみの力がいましに与えられた。それ、すなわち、汝らが、それだけの苦難を乗り越えてきたあかしじゃ。」


サノ「乗り越えてきた証?」


熊野の神「嵐を乗り越え、稲作を伝え、兄を失い、仲間を失い、それでも諦めず、ここまで来た。その苦労の結晶、ほとばしる熱情が天に届いたということよ。天津神を動かせるほどのものになったということじゃ。わしも安心したぞ。では、さらばじゃ。神の子よ。」


 こうして熊野の神は去っていった。謎の男を一人残して・・・。呆然と立ちすくむ男。いぶかし気な表情の一行。一体、この男は何者なのか? 次回に続く。


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