エピソード14 兄たちの挽歌
名草戸畔を討伐し、神宝を祀る地を選定した狭野尊 (以下、サノ)一行は、次の目的地へと向かうことにした。
そのとき、神宝を子々孫々まで祀ることになった天道根命 (以下、ミチネ)がお別れの挨拶に来た。
ミチネ「これが異国で言う、くらんくあっぷ、というものらしいですぞ。皆さん、お達者で!」
ついでに、ミチネの息子の比古麻命も初登場で、別れの挨拶を述べてきた。
比古麻「初登場で、クランクアップですよ! お別れが寂しいっていうよりも、今回だけの登場っていうのが寂しいっ。」
サノ「仕方なか。諦めてほしいっちゃ。それでは、わしらは再び船路を進むっちゃ。」
それを聞いて、次兄の稲飯命が過敏に反応した。
稲飯「まだ船で進むんか?」
サノ「そのつもりっちゃ。」
稲飯「騙されたっちゃ。」
三兄の三毛入野命 (以下、ミケ)も参戦。
ミケ「なあ、サノ。もう陸路で良かち思うんやが・・・。」
サノ「いやっちゃ! 船で進むんやじ!」
稲飯・ミケ「いやじゃあぁぁ!!」×2
こうして、サノたちは、兄たちの要望を無視し、船で次の目的地を目指した。そして、狭野を越え、熊野の神邑に到着した。
ここで、小柄な剣根の子、夜麻都俾 (以下、ヤマト)が説明を始めた。
ヤマト「狭野は、和歌山県新宮市の佐野のことやじ。」
つづいて、サノの息子、手研耳命 (以下、タギシ)が説明を始めた。
タギシ「神邑も新宮市の三輪崎と言われちょる。」
サノ「で・・・タギシよ。なして、わしらは神邑まで来たんや?」
タギシ「それは、父上が行くと言ったからです。」
サノ「それじゃあ、説明になっちょらんやろ!」
ヤマト「我が君、御安心くだされっ! それがしが代わりに説明するっちゃ。」
サノ「おう、任せたぞ! 新キャラ!」
ヤマト「天磐盾に登るためっちゃ。場所は、新宮市の神倉山と言われているじ。」
サノ「で・・・何のために登ったんや?」
ヤマト「それは、我が君が登ると言ったからです。」
サノ「説明になっちょらん!」
そこへ、筋肉隆々の日臣命が途中参加してきた。
日臣「台本には理由も何も書かれてないんやかい(だから)、誰にも答えられないっちゃ。それを知っているのは、我が君だけっちゃ。」
サノ「じゃっどん、ロマンを奪ってはならん。」
ヤマト「じゃあ、作者の見解だけでも説明してもらえませんか?」
サノ「分かったっちゃ。作者は、周防の竹島の時と同様、今後の進路を検討するために、山に登ったんやないかと考えちょるみたいやな。まあまあ、いい線いっちょるかもしれんな。」
タギシ「あくまで答えは言わないんですな? 父上?」
サノ「人々からロマンを奪ってはダメっちゃ。」
すると、地元の民が突然、現れた。
地元の民「この山ですが・・・再登場するんで・・・よろしく。」
サノ「だっ・・・誰や!? なんや?! 名を名乗れっ!」
地元の民「不器用・・・ですから。」
サノ「もしや、汝も再登場するんか?」
地元の民「作者から口止めというか・・・不器用・・・ですから。」
サノ「その不器用なんちゃらを覚えておけば、ええんやな。分かったっちゃ。」
稲飯「サノ、こいつが何者か気にならんのか?」
サノ「どうせ、いつか分かることやじ。気にしても仕方なか。」
ミケ「これが、二千年後で言う、ポジティブシンキングか・・・。」
サノ「そういうことやじ。じゃあ、わしらは再び船路で次に向かうっちゃ。」
稲飯・ミケ「いやじゃあぁぁぁ!!」×2
サノ「なして、兄上たちは船が嫌いなんや? 武具も食料も運べて便利やろ?」
稲飯「何度も嵐に遭って来たんや! こんな恐ろしい乗り物はコリゴリなんや!」
ミケ「稲飯の兄上の言う通りや。もう陸路でええやろ?」
サノ「兄上、もう少しの辛抱やじ。堪忍してくんない。」
結局、一行は船で次の目的地に向かったのであったが、二人の兄の嫌な予感は的中してしまう。嵐に遭遇したのである。
稲飯「嗚呼、どういうことや?! わしらの祖先は天津神なんやぞ! 母上は海神の娘やぞ! それなのに、なして、陸でも海でも、わしらを苦しめるんや?!」
サノ「あ・・・兄上?」
稲飯「わしは下りるっ! さらばじゃ、サノよ! とおぅ!」
叫ぶや否や、稲飯命は剣を抜いて、荒れ狂う海に飛び込んでしまった。
サノ「そ・・・そんな・・・。」
ミケ「稲飯の兄上の言う通りっちゃ。母も祖母も海神なんや。それがどうや! なして、荒波を立てて、わしらを溺れさせるんやっ!」
タギシ「お・・・伯父上?」
ミケ「よしっ! わしもっ! とおっ!」
まるで引き寄せられるかのように、三毛入野命も海に飛び込んでしまった。
サノ「あ・・・兄上が二人とも・・・。ど・・・どういうことっちゃ?」
ここで、マロ眉の天種子命が説明を始めた。
天種子「稲飯様もミケ様も、ここで嵐に呑まれたんでしょうな。過酷な嵐だったということを、台本は、自ら身を投げた形で、表してるんやと思います。」
サノ「それでは、本当は海難事故にあって・・・。」
天種子「そういうことでしょうな。」
ヤマト「そ・・・それよりっ、この嵐はいつまで続くんでしょうか?!」
サノ「大綿津見神に聞いてくんないっ!」
突然の兄たちとの別れ。サノたちの船団は凄まじい嵐の中。一体、どうなってしまうのか? 次回に続く。




