エピソード10.5 水先案内人は二度現れる
家島の伝承について説明をしていた狭野尊 (以下、サノ)一行のもとに、見知らぬ男が現れた。
サノ「な・・・なんやっ?! 誰なんやっ?!」
見知らぬ男「いやっ・・・あのう、聞いてません? 宇津彦から?」
サノ「も・・・もしやっ! よ・・・四代目か?」
見知らぬ男「その通りっ! わてが四代目の槁根津日子だす。」
サノ「槁根津日子? なんか椎根津彦と名前がかぶってるな。」
そのとき、槁根津日子 (以下、サオネツ)が熱く語り出した。
サオネツ「その通り! 『日本書紀』においては、椎根津彦として登場し、逆に『古事記』では、槁根津日子として登場するんや。」
ここで、椎根津彦 (以下、シイネツ)も参戦してきた。
シイネツ「実は、登場する場所も別々で、うちが速吸之門。サオネツが速吸門で登場するんやに。」
サノ「ちょっと待てい! 速吸の文字がかぶってるっちゃ。どういうことっちゃ?」
シイネツ「そこなんですが、うちの場合は豊予海峡。サオネツの場合は明石海峡のことを指すんですな。」
サオネツ「せやっ! わてが思うに、速吸之門も速吸門も、結局、同じ意味で、固有名詞やのうて、普通名詞なんやないかと思ってるんや。」
サノ「普通名詞っちゅうんわ、どういうことっちゃ?」
サオネツ「流れの速い海峡っちゅう意味なんやないかと・・・。」
そこに長兄の彦五瀬命 (以下、イツセ)が会話に参加してきた。
イツセ「じゃっどん、サオネツ殿。結局、シイネツと同じやり取りで、サノから槁根津日子の名前を貰うんやろ?」
サオネツ「せやな。竿を掴んで船に上がったっちゅうことで、名付けられるんや。」
イツセ「なら、この家島で登場してはダメなのではないか? 汝が登場するんは明石海峡やろ?」
サオネツ「さすがはイツセ様っ! そうなんですわ。ホンマは明石海峡で登場せにゃならんのに、亀のやつが、家島に伝承残して、大岩になってしもうたさかい、急遽、ここで登場することになったんですわ。」
話題に上るのを待っていたかのように、亀こと二号が、唐突に鳴いた。
二号「ンア~。」
サノ「おっ・・・おったんか?!」
サオネツ「まあ、我が君。聞いてやってください。亀のやつ、ホンマ、いじらしいやつなんですわ。」
サノ「わ・・・分かったっちゃ。」
サオネツ「二号・・・もとい亀は、家島の白髪白髪の老人に仕えてたんですが、ある日、老人が水先案内人を頼まれて、サノ様と一緒に向かったんですわ。それで、現地で大活躍しましてな。」
サノ「ええ話やないか。大活躍したんやろう?」
サオネツ「そのあとが問題ですわ。亀は仕事を終えて、先に帰ったんですが、待てども待てども老人は帰って来いひん。やがて待ってるうちに、亀は石になってしもうたんですよ。」
イツセ「なるほど・・・。それが、前回紹介された『どんがめっさん』っちゅう大岩のことなんやな。」
サオネツ「そうです。まあ、わては、白髪白髪の老人でもないし、どっちか言うたら、ブラッド・ピットみたいな顔なんですけど、『古事記』で亀に乗って登場したりするんで、類似性高いやないかっ! 言うて、作者が無理矢理、登場させたっちゅうわけです。」
一同「ぶらっどぴっと?」×9
サオネツ「なんです? よう分からへんけど、おもろいネタ持ってはるんですなぁ。」
サノ「とにかく、実際は、次の明石海峡の件で登場するところを、作者の陰謀で、今回の登場に早められたっちゅうことか。」
サオネツ「そうなんですよ。それもノーギャラですよ。どつき廻したろか思いましたわ。」
サノ「なんか・・・この前、三本足のカラスに遭遇したんやが、カラスも、そんなこと言ってたっちゃ。」
サオネツ「カラスですか?」
イツセ「まあ、とにかく『日本書紀』ではシイネツで、『古事記』ではサオネツなんやろ?」
シイネツ・サオネツ「そうです。」×2
イツセ「っちゅうことわ、同一人物っちゅうことでもあるな。」
シイネツ・サオネツ「そういうことになりますね。」×2
イツセ「今後の話の展開を考えた時にやな・・・。まあ、二人おるっちゅうんわ、何かと不便なんやないかと思うんやじ。」
シイネツ・サオネツ「えっ?! それはどういうこと(っちゃ)(でっしゃろ)?」×2
イツセ「そこで、二人には、ここで合体してもらおうと思うんやじ。」
シイネツ・サオネツ「えっ?! (まこち)(ホンマ)?」×2
ここで、次兄の稲飯命が反対の声を上げた。
稲飯「兄上、合体って・・・。分祀はできても、合祀っちゅうんわ、一緒に祀るっちゅう意味で合体するわけやない。本気で言っちょるんですか?」
イツセ「本気っちゃ。作者の陰謀とサノの神秘的な力をもってすれば、できるはずっちゃ。」
稲飯「ほぼほぼ、作者の陰謀で成り立つ話やないかっ!」
イツセ「まあ、そう言わんでくんない(ください)。では、サノっ! 任せたっちゃ。」
サノ「では、本邦初の合体実験を試みるっちゃ。合体せよっ!」
光に包まれたシイネツとサオネツは合体してしまった。半分がシイネツ。もう半分がサオネツという姿である。
サノ「よしっ! これで完成っちゃ! 名前はこれより・・・五代目っちゃ!」
イツセ「名前でも何でもないやないかっ!」
稲飯「もうちょっと、コンビ名みたいな名前を付けようぞ!」
ここで、目の周りに入れ墨をした大久米命が提案してきた。
大久米「あのう、シイネツ殿とサオネツ殿の合体ということですよね。そこで、シイとサオ・・・。シイサオ・・・。シーソー・・・。Seesawっていうのは、どうでしょう?」
サノ「コ・・・コンビ名っちゃ・・・。」
Seesaw「じゃあ、これからはシーソーって呼んでくださいっ!」
こうして、我が国の政府が公式に発行した『日本書紀』にあやかって、椎根津彦で統一していくこととなった。
サノ「結局、作者の陰謀の方が強いってことになるやないかぁぁぁ!!」
結論・・・合祀は合体ではない。一緒に祀るということである。




