エピソード10 家島、胞島になるってよ
狭野尊 (以下、サノ)一行は、播磨灘の中央に位置する家島諸島に到着した。
ここで、本編の主人公、サノが口を開いた。
サノ「前回の予告通り、家島に着いたっちゃ! 兵庫県姫路市に編入されてる島やじ。」
三兄の三毛入野命 (以下、ミケ)が合いの手を入れる。
ミケ「伝承では、嵐に遭遇して、難を逃れるために立ち寄ったみたいやな。」
サノ「では、嵐が来るのを待ちますか?」
ミケ「だ・・・大丈夫っちゃ。もう、嵐はコリゴリっちゃ。」
そのとき、目の周りに入れ墨をした大久米命が説明を始めた。
大久米「この島には、現在、家島神社があります。殿が、武運長久と航海の安全を祈願して、天津神を祀ったことが由来ですね。」
サノ「天津神?」
大久米「またまた、知ってるじゃないですか。高天原におわします、神々のことですよ。」
サノ「読者のためっちゃ。許せよ。」
大久米「あと、この神社の由緒書によると、家島と名付けたのは、殿みたいですよ。どうぞ、こちらを御覧ください。」
<港内が風波穏やかで、あたかも我が家のように静かであったので「いえしま」と名付けられた>
サノ「そうそう、わしが命名したんやじ。島の人は、覚えていてくれたんやなぁ。」
ここで、マロ眉の天種子命が補足説明を始めた。
天種子「家島の港は、深く入り込んだ湾で、水深もありますよって、船をつなぎ留めるには、絶好の場所にあらしゃいます。天然の良港っちゅうやつですなあ。嵐に遭わんでも、立ち寄ったと思います。」
ミケ「明石海峡に向けて、船団を整えるためやな?」
天種子「さすがはミケ様! そういう軍事的理由もあったでしょうな。家島神社がある場所も、天神鼻という岬で、明石海峡に通ずる、海の静けさと厳しさの狭間のようなところなので、その解釈は素晴らしいですぞ。」
そこへ、小柄な剣根が乱入してきた。
剣根「ちなみに、島の人は、家島のことを『えじま』と呼んでいるんですぞ。」
サノ「どういうことっちゃ? わざわざ『い』だけ省略したんか?」
剣根「この島の伝承で、家島は国生み神話にも深い関りがあるとか・・・。」
サノ「なっ!? 国生みっ!?」
剣根「ただ『い』を省略したのではなく、もともと胞島と呼ばれていたとか・・・。」
天種子「どういうことにあらしゃいます?」
剣根「国生み神話の個所で『日本書紀』に一説に、磤馭慮島を以ちて、胞と為し・・・という記載があるんですが、その胞こそ、胞島のことなのですっ。」
サノ「おい、剣根よ。説明のようで、説明になっとらん。オノゴロ島が何なのか。胞とは何なのか。ちゃんと言わねば、全く意味が分からんやろう?!」
剣根「いや、殿。これには順序というものがありまして・・・。」
サノ「なるほど・・・。それは何なのかっ! っちゅうところで、次回に続く・・・みたいな感じで締めるつもりやな?」
剣根「オノゴロ島とは、国生みで伊弉諾尊と伊弉冉尊が、一発目、見事に失敗した際に生まれた島です。」
サノ「か・・・華麗にするう・・・っちゅうやつやな・・・。」
剣根「そのオノゴロ島を胞と呼んでいるのが、最初に説明した『日本書紀』の記述にござりまする。ちなみに、胞とは、胎児を覆う膜のことですな。転じて、兄という意味とされてます。」
サノ「見事に失敗とか、けっこう無礼なことを言っとるが、まあ、そういう理由で、胞島と呼ばれてるんやな。」
剣根「そうなんですよ。」
サノ「しかし、なして、転じて兄になるんや?」
剣根「兄も『え』と呼びますよね。中大兄皇子みたいな・・・。そういう理由ですぞ。」
サノ「生まれてない奴を参考にするなっ。」
剣根「まあまあ、その辺はともかく、国生み神話の伝承は、昔から語り継がれてたみたいですぞ。」
ミケ「家島の隣にある西島の山頂には、イザナギ尊とイザナミ尊が建てた『天の御柱』といわれる大岩もあるみたいやしな。」
剣根「その通りですぞ! 頂上岩とか、てっぺん石とかいわれてる大岩なんですが、そういう見方もあるみたいですな。」
そのとき、筋肉隆々の日臣命が自慢気に語ってきた。
日臣「剣根よ! 家島の真浦港にある大岩は知っちょるか?」
剣根「ふっ・・・日臣よ。わしが知らぬとでも・・・。」
日臣「し・・・知っちょるんか・・・?」
剣根「亀の形をした大岩・・・その名も『どんがめっさん』にござりましょう?」
日臣「さ・・・さすがっちゃ。」
剣根「家島マスターのわしに、知らぬものなどありませぬっ。」
一同「ますたあ?」×9
剣根「宇津彦がいなくなっても、そのネタやるんですね!」
そこへ、一代目こと椎根津彦 (以下、シイネツ)が加わってきた。
シイネツ「ふっ・・・剣根よ。まだまだ甘いのう。」
剣根「ど・・・どういうことじゃ?」
シイネツ「わしらが来た時・・・そんな岩はなかったんやっ!」
剣根「そ・・・そんな・・・なかった?」
シイネツ「じゃがっ(その通り)! わしらが来た時は、まだ亀やったんやにっ!」
サノ「また、亀っちゃぁぁぁ。」
シイネツ「我が君っ! そんなこと仰らずっ! そこを何とか、あと一回だけっ。」
天種子「ま・・・まさかっ?! それが、二号っちゅうことか?!」
シイネツ「そのまさかなんですよ。」
すると、見知らぬ男がやってきて、勝手に会話に入ってきた。
見知らぬ男「説明長いんやっ! はよ(早く)セリフ言わさせろやっ! 出番待ちで終わらせるんかいっ!」
突然現れた、見知らぬ男。一体、この男は何者なのか。次回に続く。




