エピソード9.5 亀と島と米と・・・
興世姫と別れた狭野尊 (以下、サノ)一行は、嵐に遭遇した。アイドルグループのことではない。危機的状況の中、一行を先導する者が現れた。
二代目(一号)「ンア~。」
サノ「おおっ! 二代目っ! 助かったっちゃ!」
二代目(一号)は、一行を荒波の届かぬ湾に導いて避難させた。この湾が、水門湾である。二代目はそのまま、役割を終えたからなのか、石になってしまった。
ここで、一代目水先案内人の椎根津彦 (以下、シイネツ)が説明を開始した。
シイネツ「現在は亀石神社が建ってるっちゃ。ちなみに、亀石は、亀そのものではく、化身ともされてるに。岡山市東区の水門町にある神社で、旧暦6月15日には満潮祭がおこなわれてるんやに。」
サノ「満潮祭? 亀石まつりのことやろう?」
シイネツ「さすがは我が君! そうとも呼ばれてるっちゃ。ちなみに、この祭りは、帆柱から山形にちょうちんを飾り付けた、シャギリ船という船が、笛や太鼓などを演奏しつつ、水門湾内を巡って、五穀豊穣を祈る祭りなんやに。」
ここで、宇津彦命が三代目として、司会の役目を奪い取った。
宇津彦「この水門湾に直結しているのが、児島湾です。この児島湾に浮かぶ無人島に、我々は辿り着いたんです。」
サノ「これまで高島宮候補地の説明だったのが、急に亀石の話に飛んだかい(から)、なんか怪しいと思っちょったんや。この無人島が七つ目ってことやな。」
宇津彦「その通り! この島の名前は、ズバリ、高島です。岡山市南区にある島です。」
ここで、マロ眉の家来、天種子命がツッコミを入れてきた。
天種子「まんまやないか!」
宇津彦「そんなこと言われても、仕方ないじゃないですか。」
サノ「名前は気にしないっちゃ。それより、どうしてここが候補地なんや?」
そのとき、一代目水先案内人のシイネツが司会役を取り返した。
シイネツ「よくぞ聞いてくださいました。江戸時代の大規模干拓がおこなわれる前の児島湾は、水島灘とつながり、主要航路になってたんやに。交通の要衝ってことっちゃ。」
サノ「なるほど・・・。じゃっどん、稲作をするのに、無人島を選ぶとは思えんのやが・・・。」
シイネツ「さすがは我が君! ここで八つ目の候補地が関連してくるわけっちゃ。」
天種子「八つ目がここで出てくるんやな。」
ここで宇津彦が、司会の座を奪い取った。
宇津彦「その八つ目というのが、児島湾より北に位置する、高島山です。JR岡山駅から北東に約5キロほどの場所にある龍ノ口山一帯を指します。」
一同「・・・・・・。」×10
宇津彦「今回は、じぇいあある って言わないんですね!」
ここで、次兄の稲飯命が乱入してきた。
稲飯「山の尾根には高島宮址と書かれた石碑があるっちゃ。覚えておいてくれよなっ。ちなみに、後の世には、備前の国府が置かれてるっちゃ。」
宇津彦「この地域は、古来より穀物豊穣の土地だったみたいです。間違いなく、我が君の御指導の賜物ですね。」
サノ「なして、そんなことが分かるんや?」
宇津彦「実は1968年(昭和43年)に、山から数キロ離れた地で、遺跡が発見されたんです。その名も津島遺跡。岡山市北区にある遺跡です。」
天種子「その遺跡がどうしたんや?」
宇津彦「遺跡から、弥生時代前期の水田と集落の跡が、一緒の状態で発見されたんです。日本初です。更に、旭川を隔てて東側にも遺跡が見つかりまして・・・。」
サノ「それも同じような遺跡なんか?」
宇津彦「百間川遺跡群と言いまして、同時期の水田跡が見つかってます。ですから、この高島山は、吉備でも、かなり早くから水稲耕作がおこなわれていた地域なんですよね。」
シイネツ「この地域は、三角州で、二つの遺跡は氾濫原になるっちゃ。だけん(だから)、この地の人々は、微高地に集落を築き、低地に水田を作ってたんやに。」
宇津彦「氾濫原というのは、洪水時に、川筋から氾濫する低地帯のことです。」
稲飯「そして、ここで採れた米が、児島湾を通じ無人島・・・もとい高島に移送されたということか。」
サノ「なるほど・・・。そこで七つ目の高島とつながってくるんやな。」
宇津彦「なので、七つ目と八つ目を合わせて、一個と見てもいいんじゃないかって思ってます。」
稲飯「汝が勝手に決めるなっ!」
宇津彦「いやっ! どっちかっていうと、作者の考えで、僕の考えじゃないんですけど・・・。」
ここで、息子の手研耳命 (以下、タギシ)が加わってきた。
タギシ「七つ目と八つ目を合わせて一個となるらしい。残念だが仕方がない。ま、そういうことだ。」
稲飯「可愛い甥っ子よっ。言いたかっただけやろっ!」
タギシ「そうとも言える。残念だが仕方がない。ま、そういうことだ。」
宇津彦「タギシ様っ! 悪ふざけは、もう少しあとにしておいてもらえますかっ! 高島の説明中なんですからっ!」
サノ「で・・・高島宮候補地八つ、全部出揃ったっちゅうわけやな?」
宇津彦「はい。しかし、岡山県の伝承はこれだけではないんですよ。」
一同「おかやまけん?」×10
宇津彦「そこは言うんですねっ!」
そのとき、長兄の彦五瀬命 (以下、イツセ)が高笑いを始めた。
イツセ「はっはっはっはっ!」
サノ「ど・・・どうしたんや? 兄上!」
イツセ「次回はわしが本編の主人公になるのかと思うと・・・。これが笑わずにおられようかっ!」
次回、彦五瀬命が主人公になるらしい。スピンオフになるということなのか・・・。




