表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジャパンウォーズ  作者: kikuzirou
17/61

エピソード9 神島外浦の夜明け

 岡山県おかやまけん笠岡市かさおかし高島たかしまという島に滞在中の狭野尊さの・のみこと (以下、サノ)一行に、戦という言葉が聞こえ始めた。


 戦を想定しつつ、吉備きびの民に稲作を伝播するという日々が続く中、サノは、一つの決断を下した。


サノ「というわけっちゃ。すまぬが、ここまでや。」


 唐突なサノの台詞に対し、妃の一人、興世姫おきよひめのツッコミが炸裂する。


興世おきよ「そんなんじゃ、読者に何も伝わらないでしょ!」


サノ「じゃ・・・じゃっどん、てげ(とても)悲しいんや! 正直、言いたくないんや!」


興世おきよ「殿! 諦めないで!」


サノ「くっ・・・。仕方なか。では言うっちゃ。」


興世おきよ「はい。」


サノ「これからは戦を想定し、調練などもおこなうことになる。みな、荒々しくなるやろう。そのようなところにいましを置いておくわけにはいかん。汝は対岸の地に移れ。」


興世おきよ「そ・・・そんな・・・。対岸の地に移れって・・・。もしかして、そのまま、ここに残れってこと?」


サノ「その、もしかしてっちゅうやつや。戦が起きるかもしれん旅に、いましを連れては行けん。」


興世おきよ「聞いてはおりましたが・・・。やはり戦になるかもしれないのね?」


サノ「考えてもみよ。『記紀』には何も書かれてはおらんが、なかくに饒速日にぎはやひ殿に、文の一通や二通は送ってるはずっちゃ。いい返事が貰えてないからこそ、わしらは武装して、中つ国に向かうんやないか?」


興世おきよ「そうよね。平和の使者が武装して来訪するなんて、聞いたことがないわ。じゃあ、最初から戦をするつもりで向かうってこと?」


サノ「その通りっちゃ。だからこそ、いましを連れていくことは出来んのや。」


興世おきよ「分かったわ。そういうことなら、わたくしは諦めましょう。足手まといになって、殿を苦しめるようなことはしたくない・・・。」


サノ「分かってくれるか、興世!」


 すると、息子の手研耳命たぎしみみ・のみこと (以下、タギシ)が、突然、乱入して説明を始めた。


タギシ「興世殿が住んだ対岸の建物は、のちに神社となった。その名も、神島神社こうのしまじんじゃ。対岸の本州側なのに、島とはどういうことや?」


 ここで、水先案内人三代目の宇津彦うつひこが乱入してきた。


宇津彦うつひこ「タギシ様。まんまと騙されましたな。」


タギシ「なっ・・・どういうことっちゃ!」


宇津彦うつひこ「タギシ様が持っている地図は、令和年間のもの! 実は、1966年、すなわち昭和41年までは、島だったのですよ!」


タギシ「まっ・・・まこっちゃ(本当)?」


宇津彦うつひこ「ま・・・まこち(本当だよ)! 干拓事業で陸続きになったんです!」


タギシ「ちなみに、神島神社のある地名は、笠岡市の神島外浦こうのしまそとうらだ。しかし、島だったとはな・・・。残念だが仕方がない。ま、そういうことだ。」


宇津彦うつひこ「どのあたりが残念だったのか、よく分かりませんが、次に進みましょう。我が君は、狩りをするため、高島から海を渡って神島こうのしまに通っていたそうです。そこで、興世姫と、あんなことや、あんなことや・・・。」


 恍惚な表情の宇津彦の両頬に、サノと興世姫の拳が突き刺さる。


サノ「そういうことを言うキャラではないはずっちゃ!」


興世おきよ「作者の妖術に惑わされないでっ!」


 作者の陰謀を阻止した、サノと興世姫の顔は、自信に満ち溢れたものだったとか、なかったとか・・・。


 そこへ、剣根つるぎねが、呼ばれてもいないのに乱入してきた。


剣根つるぎね「前回、全く登場させてもらえませんでしたからなっ。では、神島神社の社伝紹介をおこないますぞっ。」


<皇后興世姫命は、引き続き神島にご滞在なされ、島民の尊敬を集めて当地でこうじられた。島民はさっそくやしろを建立し、興世明神としてお祀りした>


 この社伝を読んで、興世姫は顔を赤らめた。


興世おきよ「こ・・・皇后だなんて・・・。そ・・・そんな・・・恥ずかしい。」


サノ「まあ、島の者たちから見れば、いましは皇后っちゃ。」


剣根つるぎね「社伝の通り、この神社には、興世殿が祀られております。そして、殿も御一緒に祀られておりますぞ。」


サノ「おお、そうか。それはありがたいが・・・。」


タギシ「父上、如何なされました?」


サノ「興世は、この地で亡くなるんやな。ということは、ここは、興世との永遠の別れとなった島ということでもある。」


タギシ「あっ! 確かに・・・そうなりますな。」


剣根つるぎね「申し訳ござりませぬ。呑気に御一緒に・・・などと・・・。」


サノ「いっちゃが、いっちゃが(いいよ、いいよ)。出会いがあれば、別れがあるっちゃ。だからこそ、再び出会えた時の喜びは大きいんやじ。それに、この神社では、永遠に一緒なんやろ?」


興世おきよ「殿、再び会える日を心待ちにしながら、お志が成就されることを祈っておりまする。」


サノ「興世よ。最後に言っておきたいことはあるか? 作者曰く、“くらんくあっぷ”とかいうやつらしいっちゃ。」


興世おきよ「さきほどの言葉で、充分でございます。」


 そこに正気を取り戻した宇津彦うつひこが再乱入してきた。


宇津彦うつひこ「神島神社が創建されたのは、726年、すなわち神亀3年のことです。二人が別れてから1392年後のことです。」


興世おきよ「えっ?!」


サノ「なっ!?」


興世おきよ「お・・・思ったより長い・・・。」


サノ「ちょっと短くは出来んのか? 50年後とか・・・。」


宇津彦うつひこ「申し訳ありませんが、水先案内人の僕には、どうすることも・・・。」


 思った以上に長かったことに驚愕する二人。居た堪れない気持ちの三人。今回登場しなかった面々は、そんなことなど露知らず、吉備の人々と共に汗を流し、米作りに精を出していたのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ