エピソード8.5 高島は何処
吉備国 (今の広島県東部と岡山県)を訪れた狭野尊 (以下、サノ)一行。地元の人々へ、稲作と灌漑技術を教えることに傾注していた。そこで築かれた行宮 (仮の御所)が高島宮である。
高島宮の候補地は八つある。前回、松永湾の三候補地を紹介させてもらったので、今回は残りの紹介ということになる。
では、御一行のみなさん。説明を御願いします。
サノ「今回は、早めに台詞がまわってきたな。」
ここで、長兄の彦五瀬命 (以下、イツセ)が、作者に代わって説明を始めた。
イツセ「長々と説明文が続くより、会話形式の方が分かりやすいんじゃないかと思ったそうやじ。作者も、いろいろ試行錯誤してるんやな。」
次兄の稲飯命が合いの手を入れる。
稲飯「わしらの旅と同じやな。わしらも試行錯誤を重ねて、地元の人々に教えていったんや。」
そこに、天種子命のツッコミが入った。
天種子「そんなこと言ってる時やありまへん! それより候補地の説明が先にあらしゃいますぞ!」
サノ「そ・・・そうやったな。して、三代目よ。前回の松永湾を発ったあと、わしらはどこに行ったんや?」
問われた三代目こと、宇津彦命は意気揚々と答えた。
宇津彦「まず訪れたのは、田島という島です。ここは、二千年後には、広島県福山市の内海町と呼ばれるところです。」
イツセ「松永湾を抜けて、陸伝いに南へと進んだんやな?」
宇津彦「その通り! 我々の時代の航海術は未熟ですからね。陸伝いに進むしかないんですよ。」
ここで、興世姫が会話に加わってきた。
興世「陸伝いなのに、どうして島なんかに行っちゃったの?」
宇津彦「南に進んでいると、正面にドカンと現れるのが、田島なんですよ。だから、ここに上陸したんでしょうね。本州から、大きく離れているわけでもないですしね。」
そのとき、日臣命が、呼ばれてもいないのに、勝手に説明を始めた。
日臣「この田島には、皇森神社があるっちゃ。王太子宮とも言って、地元の人は『王太子さん』と呼んでるそうや。ちなみに、今は、本州と橋で結ばれちょるんで、自動車で行くことも可能やじ。」
一同「じどうしゃ?」×11
日臣「華麗にスルーして、説明を続けるっちゃ。この神社には、高島宮址と書かれた大きな石碑があるじ。地元の方々の意気込みっちゅうんか、なんというか、圧巻の一言に尽きる代物やな。隣には、矢ノ島があるじ。ここは弓矢を作ったとされる島っちゃ。」
一同「するう?」×11
ここで、司会者的立場の宇津彦が修正をおこなった。
宇津彦「ええ、お見苦しいところをお見せしてしまいました。申し訳ございません。気にせず、次に進んで参りましょう。我々が次に向かったのは、福山市の田尻町です。ここも高島宮址の候補地で、田尻八幡神社の入り口に石碑が建ってます。」
サノ「じゃっどん、宮の址は、更に北に進んだところにある宮原という伝承もあるみたいやな。」
宇津彦「さすがは殿! よくご存じで! 宮原は、ネットで調べても出てこないそうです。作者曰く、唯一の手掛かりとなったのは、宮原共用墓地の存在だったとか・・・。地図でいうと、田尻民俗資料館より上、JA福山市田尻支店より左の集落です。」
一同「じぇいえい?」×11
様式美となってきたボケに対し、目の周りに入れ墨をした大久米命が、華麗にスルーして補足説明を始めた。
大久米「ちなみに、田島と田尻は沼隈郡に所属する町です。」
一同「ぬまくまぐん?」×11
ここで、三番目の兄、三毛入野命 (以下、ミケ)が、華麗にスルーして追加説明を始めた。
ミケ「次の場所に行く前に、田尻の八幡神社について説明するっちゃ。八幡神社には、我々が船をつなぎ留めたという石がある。神武天皇御東遷纜石や。『ともづな』っちゅうんわ、前回説明したかい(から)、割愛させてもらうっちゃ。ちなみに、田尻八幡神社は、武ノ宮八幡宮とも呼ばれてるっちゃ。覚えておいてくれよなっ。」
サノ「覚えておく必要はないと思うんやが・・・。」
呆れ顔のサノの傍らで、息子の手研耳命 (以下、タギシ)が、宇津彦に尋ねてきた。
タギシ「ところで、三代目よ。そのあと、我々はどこに向かったんや?」
宇津彦「はい。我々は、ついに岡山県に入りました。」
一同「おかやまけん?」×11
宇津彦「岡山県の笠岡市です。ここに、高島という島があるんですが、ここも宮の候補地となってます。」
サノ「三代目も『華麗にするう』とかいうやつを身に付けたんやな・・・。」
宇津彦「す・・・すみません。僕って、そういうノリが苦手で・・・。」
サノ「いっちゃが、いっちゃが(いいよ、いいよ)。ところで、この島には、何があるんや?」
宇津彦「上陸して宮を建てたという王泊。天津神に捧げる水を汲んだ真名井。山頂で吉凶を占った神卜山などがあります。」
ここで、一代目こと椎根津彦 (以下、シイネツ)が補足説明を始めた。
シイネツ「高島の近くには、稲積島があるっちゃ。この島の名前は、殿が稲を積んで蓄えていたことから名付けられたそうやに。」
イツセ「中つ国に向けての準備を進めつつ、吉備の人々に稲作を伝播してたんやな。」
タギシ「伯父上、ついに戦を想定して動かねばならなくなってきたわけですな。」
イツセ「じゃが(そうだ)。よだきい(面倒くさい)などと言ってはおられぬぞ。」
サノ「そうか・・・。もうそんなところまで・・・。そろそろとは思っていたが・・・。」
イツセ「どうした?サノよ。」
サノ「それについては、次回、説明するっちゃ。」
次回、サノが何か語るらしい。吉備の旅は、まだまだ続く。




