エピソード7.5 第三の男
船団を整え、武具や食料などを調達した狭野尊 (以下、サノ)一行は、再び海路を進んだ。
一行は、途中、江田島の切串に立ち寄っている。長谷川の河口にある丘陵地に宮を作り、しばらく滞在したと伝わっている。しかし、洪水に遭遇したようで、エピソード5.5で紹介した、「古事記」に記された多祁理宮とされる、広島県府中町にある、多家神社に戻ったようである。江田島においても、水稲耕作教室をおこなっていたのかもしれない。
その後、一行は再び海路に出て、次は広島県呉市に向かったようである。呉市天応も立ち寄ったという伝承が残る地で、名前も天皇を由来として名付けられたそうである。
一行が呉に来た時、里の者から、このような話を聞いた。
里の者「山に賊がはびこっていて、我が物顔で振る舞い、我々を苦しめとるんじゃ。」
サノ「けしからん輩やな。よっしゃ。わしらが平らげるっちゃ!」
サノたちは船に乗り、討伐に向かった。そのとき、一羽のカラスが舞い降りてきて、先導を始めた。よく見ると、カラスの足が三本ある。三本足なのである。サノはカラスに尋ねたかもしれない。
サノ「汝は何者や? もしや、亀みたいにしゃべれんのか?」
カラス「・・・・・。」
カラスは無言で、唐突にフリップを出してきたかもしれない。
『本来の登場シーンではないので、セリフは控えさせていただきます。』
サノ「どういうことや!? 本来って何ね? しゃべれるのに、しゃべらんのか!?」
再びカラスはフリップを出した。
『今回は特別出演で、ノーギャラなので、セリフは控えさせていただきます。』
サノ「全く意味が分からん!」
カラス・・・もとい八咫烏は、船に先立って賊の住む山で羽を休めた。賊たちは、その美しさに恐れ慄き、サノたちと戦う気力を削がれ、降参したのだという。
呉市清水にある亀山神社は、市内に八咫烏神社を摂社に持つ。賊がいた山は高烏山と呼ばれ、現在も山中に、八咫烏神社の奥宮があり、地元の人々に守られているそうである。
ちなみに、なぜ奥宮と呼ばれるのかというと、山中まで踏み入るのは大変だということで、昭和になって麓に下ろされたからである。
ここで、カラスが再びフリップを出してきた。
『八咫烏って、バラすな! この、馬鹿作者!』
無視して、話を続けよう。
海路を進む天孫一行に緊急事態が発生した。南風を受けて、舵が折れてしまったのである。急遽、修理することになり、二つの島に挟まれた海域に入り、浜辺に船を着けた。
余談になるが、島と島との間の海域を瀬戸と呼ぶ。この瀬戸がたくさん有る内海ということで、瀬戸内海と呼ぶのである。
天孫一行は、修繕を施す作業場を確保するため、近隣の蒲 (水辺に生える植物)を刈り取った。このことから、二つの島は上蒲刈島、下蒲刈島と呼ばれるようになったという。
ちなみに、上陸したのは、上蒲刈島の向浦とされている。両島に挟まれた瀬戸は三之瀬と呼ばれるようになった。
次に一行が立ち寄ったのは、大崎下島である。この島に大浜という地名があるが、ここが上陸地点とされている。元々「王浜」と命名されたものが転訛したのだという。サノたちは、この島にもしばらく滞在したようで、行宮 (仮の御所)を建てた地が大長である。古くは「王朝」という表記だったという。
この島の沖合は潮が速く、昭和の頃でも、フェリーが欠航するような海域である。サノたちも、厳しい潮流を避け、同島に立ち寄った可能性がある。
なお、この島にあるのが、宇津神社である。この神社の祭神は宇津彦命という。芸予海峡を通過するに当たって、サノたちの水先案内を務めたという神である。
そのやり取りは、このようなものではなかったろうか・・・。
サノ「またまた初登場か! 汝は誰ね?」
宇津彦「宇津彦と申します。うっちゃん・・・って呼んでください。」
サノ「そうか・・・だが、断る! 汝は、三代目っちゃ。」
宇津彦「三代目?」
サノ「じゃが(そうだ)。椎根津彦 (以下、シイネツ)が初代水先案内人。そして、このしゃべれない亀が二代目。そして、汝が三代目っちゃ。」
宇津彦「分かった! 僕は三代目として頑張るよ!」
シイネツ「頼むぞ! 三代目! 屋号をしっかり継承し、次代につなげてくれよ!」
二代目「ンア~」
ここで、次兄の稲飯命のツッコミが炸裂した。
稲飯「ちょっと待てい! 屋号って何ね? いつ、そんなもんが発生したんや?」
シイネツ「いや、いつって言われても・・・今としか言いようが・・・。」
更に三兄の三毛入野命 (以下、ミケ)が疑問を呈してきた。
ミケ「あのう、素朴な疑問なんやが・・・。二代目の必要性って、有ったんやろか?」
シイネツ「えっ!?」
ミケ「わしが亀・・・二代目を頼りなく見てたのは、前回のエピソードでも分かると思うが、最初から、宇津彦殿を呼んでおけば良かったんやないかと・・・。」
シイネツ「そうですね。ミケ様の気持ちも分かりますよ。ただ、電波状況が悪くて、うっちゃんと連絡がつかなかったんやに。それで、一号にお願いしたというわけで・・・。」
そこにマロ眉の天種子命が話に割り込んできた。
天種子「ちょっ、今、一号って言うたか?」
シイネツ「えっ!? 言いましたよ。それが何か?」
天種子「と言うことは、二号もおるっちゅうことか?」
シイネツ「なっ!? な・・・なぜ、それを汝が知っている・・・。」
天種子「アホか! 一号がいたら、二号がおるんは相場や! 相場! 仮面ライダーもサンダーバードも、そうやろ?!」
シイネツ「ちょっ、何言ってんのか分かんないっす。」
サノ「まあ、良いではないか。いずれ、分かる日も来よう。」
稲飯「汝は、あまり気にならぬのか?」
サノ「兄上、これは作者の陰謀ですぞ。こうやって、2号とは?! みたいな感じで、釣ってやろうという思惑が見え見えっちゃ。わしは、その手には乗らん!」
稲飯「さすがは我が弟よ! わしは、その手に乗るところやった。」
こうして、二代目・・・もとい一号・・・もとい亀は帰っていった。宇津彦という新たな水先案内人を迎え、一行は海の難所、芸予海峡を進んでいくのである。




