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暗殺者ケイン

黒い外套を身に着け、スティレットを手に持ち、準備完了だ。

時間停止。

俺は寝室の天井を突き抜け真上に飛び、村の上空に出た。

先ほどの偵察から5分と立っていないはずだ。

目印と景色は覚えている。

俺は迷うことなく現場へ急行した。

事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!!

・・・何となく「現場」という言葉に反応して思い出してしまった。

深い意味はない。


まずは状況確認だ。

レイラは・・・無事だ。

足元に猿が横たわっているから、レイラに向けて攻撃した猿が返り討ちにあったのだろう。

ボス猿は動いてないな。

レイラとは10mほどの距離を保っている。

他の仲間は何人かさらに傷を負わされているが、戦闘不能者はいないようだ。

敵の猿を倒せたのはレイラだけみたいだな。

多分、レイラ以外の仲間は、猿の木上からの攻撃に対処しきれないのだろう。

守るだけで精一杯というところか。

逆に猿の攻撃を返り討ちにしたレイラのセンスに驚くわ。


木の上に居る猿たちは1匹やられただけか。

ほとんど傷も負ってない。

威嚇を続けてるようで、牙をむき出しにしているのは先ほどとあまり変わりがない。

さて、1匹ずつ始末していきましょうか。

例え一撃で仕留められなくても、深手を負わせればそれでいい。

仕留めなきゃいけないのはボス猿だけだ。


まずは木から落下しながら、真下の村人に攻撃しかけて空中で止まっている、あの猿からだ。

村人は真上の猿にはまだ気が付いてない。

スティレットの切っ先を落下中の猿の喉元にくっつけるように下から合わせる。

猿は落下速が乗った状態で、俺は落下が始まるところなので、猿の方が落ちるのが早く喉を串刺しにできるはずだ。

スキル解除。

ズブッ!!

スティレットの刃が猿の喉に深く刺さったところで(ストップ)だ。

このような何かと俺がくっついた場合でも、スキルによって動けるのは俺と俺の持ち物だけだ。

これは何度も検証した。

俺は例え鎖に繋がれてても、このスキルで脱出できる。

あらためて効果確認だ。

猿の喉から頭頂部に向けて、スティレットの刃がしっかりと刺さっている。

動いた俺が持っているスティレットの刃を見ると、猿の血で赤く染まっていた。

猿の血は俺のものじゃないんだけど、刃に付いた血はスティレットのものということかな。

まあいい。

次の獲物だ。


木の上から滑空するように斜めに飛んでいる猿。

両手を突き出した状態だ。

手が邪魔で正面には移動できない。

いや逆さになればイケるな。

まず猿の正面に移動する。

右手でスティレットを手の平で回すように逆手に持ち替えて、顔のあたりに構える。

壁を拳で小指の方から叩く体勢だな。

スティレットの切っ先を猿の顔に合わせる。

このままだと猿の手が俺に干渉してるので、スティレットを中心に180度俺を回転させる。

俺の体勢は頭を下に逆さまの状態。

何度か素振りをしてみる。

スティレットの刃が猿の顔面に何度も吸い込まれる。

切っ先の位置を微調整して素振りを続け、素振りの途中、切っ先が猿の顔に触れる寸前でスキル解除だ。

ズブッ!!

スティレットの刃身が猿の顔深く刺さったところで(ストップ)


他に動いてる猿はいなさそうだ。

猿たちは木の上からレイラたちを見下ろしているので、真上からうなじを突き刺すのにもってこいだ。

スティレットの柄の尻に左手を添えて強く押し込めるようにやや下向きに構える。

猿の少し後方の上に移動して、何度かうなじを突き刺す素振りをして、触れる寸前でスキル解除だ。

ズブッ!!

スティレットの刃が猿の後頭部に深く刺さったところで、またスキル発動。


最初に刺した空中の猿は、まだ悲鳴すら上げていない。


木の上の猿たちは同じやり方で次々と仕留めていく。

でも5匹ほど、どうしても木の枝が邪魔でいい体勢が作れなかった。

どう仕留めるか悩んだが、猿たちは魔獣ではないので残りは放置でもいいだろう。

猿たちの殲滅が目的ではなく、倒さなきゃいけないのは魔獣のボス猿だけなのだから。

離れた木陰に隠れて、様子を見よう。

一瞬で手下の8割近くが倒された、ボス猿の反応も見てみたい。


ひときわ大きな木の裏に移動し、スキル解除だ。

訓練のおかげで、今の俺は地面に触れるギリギリの位置でのスキル解除ができるようになった。

音もなく木陰に隠れ、様子を窺う。

「「「「ギャアアアアアァァァァッッッッ!!!!!!」」」」

同時に大量の猿の断末魔がほぼ同時に森に木霊した。

落下攻撃を仕掛けた猿たちの懐に、黒い塊が一瞬だけ見たものがいるかどうか。

木の上の十数匹の猿の上にも、黒い塊がパパパパーッと点滅のように一瞬だけでも見えたものはいるかもしれない。

猿たちは次々と木から落下して絶命していった。

レイラも村人たちも呆然と立ち尽くし、ワケがわかってない様子だ。

生き残った猿たちも固まっている。


ボス猿は目を大きく開き、口を半開きにしていた。

ドラゴニュートのときも思ったが、驚いた時の表情って魔獣も同じなのな。

徐々に目が赤く血走っていき、わなわなと震えだした。

そりゃ怒るか。

ガアアアァァァッッッッ!!!!

ボス猿が天を仰いで両こぶしを頭上に掲げながら咆哮した。

黒いオーラが全身から吹き出ている。

魔力全開ってことか。

ボス猿はレイラを睨み、長い手を前足のように使ってダッシュした。

やべ、思ったより速いぞ。

レイラは展開の早さについていけてないのか、固まっている。

レイラは無防備だ。

(ストップ!!)


ボス猿はⅠ秒にも満たない一瞬で、レイラとの距離を半分に詰めていた。

密集している木は、ボス猿に触れたところが爆散したように弾けている。

黒いオーラが触れたものを爆散させているのか?

純粋な魔力のものか、スキルなのかは判別できない。

顔からはオーラは出てないな。

黒いオーラは顔以外の剛毛の先から吹き出ているようにも見える。

ここでボス猿を仕留めないとレイラが危険だ。


俺は左手にスティレットを持ち替えて、柄の尻に右手の平を添えて、右腰のあたりに構える。

あの時のリベンジだ。

ドラゴニュート戦が頭によぎる。

あの時は仕留められなかった。

今回は絶対に仕留める。

ボス猿の顔の前に移動し、切っ先の位置を調整する。

今回は左目じゃない。

眉間だ。

身体強化のための魔力をあらかじめ意識しておく。

行くぞ。

失敗は許されない。

覚悟しろ!!


解除。

ドオオオォォォォx-----ン!!!

ストップ!!


ふ~ぅっ・・・

やべっスティレットから手が離れちった。


俺はボス猿を刺突した瞬間に弾き飛ばされ、ボス猿の頭上で上下逆さまに大の字になっていた。

おかげでボス猿の顔がよく見える。

スティレットはボス猿の眉間に深々と刺さっている。


成功だ!!


いや、まだだ!


ボス猿のこのままのスピードだと、目の前のレイラをこの巨体が直撃だ。

レイラはまだ反応できていない。

避けられそうもない。


俺はレイラの右側に移動し、勢いをつけてスキル解除しながらレイラをダイブして突き飛ばした。

ストーップッ!!!


レイラを間一髪でボス猿の直撃コースから外すことができた。

よかった~~~・・・

間に合った。

お約束だな。


暗くなった頭上をみると、ボス猿の巨体が俺のすぐ真上にある。

とりあえずここから移動だ。

どうしよう。

最後まで見届けるか?

いや、帰ろう。

この一連の衝撃で、俺のどこかが壊れているかもしれない。

8歳になったので前みたいにすぐに大泣きはしないかもしれないが、痛みで大声は出すかもしれない。

外套にも少し返り血が付いている。

寝室に戻って俺時間巻き戻しをしよう。


レイラの目にはどう映ったのであろう。

ボス猿が吠えて黒いオーラを出して木を弾きながら自分に突進。

ボス猿の顔の前に黒い塊が一瞬出ては消えて。

右側に出た黒い塊に突き飛ばされて。

自分がいた場所にボス猿が倒れこんで死んでいる(ここは未確認)

・・・理解不能だな、間違いなく。

レイラがどう思ったか何を感じたかは、落ち着いたらあとで考えよう。

今はレイラが無事だったことと、村の危機が去ったということでよしとするか。


そういえば子供になってから初の実戦だったな。

結局教わった剣技なんか使いもしなかった。

戦法も時間停止スキルによる反則みたいなものだけだ。

ドラゴニュートの時から進歩してない。

まだまだ修行が必要だな。

いつかこのスキル攻撃が通用しなくなるかもしれない。

勇者への道のりは遠いな。

だいたい戦い方が勇者らしくない。


・・・暗殺者だったらすぐにでもなれそうだけど。


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