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なろう系エッセイなど

なろうで高ポイントを取るためのテンプレ考えてみた。みんなで「転スラ」を超える作品を量産しようぜイエーイフウウ!

作者: 小雪光(超プリン体)

1.はじめに


最近、「マーケティング」、「ビジネス視点」というものについて、色々考えている。もしかして小説についても、こういう視点って大事かもしれないなと思って考えてみました。


なろうでヒットを飛ばすには、「書きたいもの」では駄目で、「お客様が望むもの」を書かねばならないということ。つまりこれは、ビジネスライクな視点、「顧客満足度」が重要ということなのではないでしょうか。



2.お客様はなぜなろう系小説を読むのか


で、歴史的に見て、なぜなろう系小説が生まれ、話題になったかというと、理由は4つあると思う。


(1)バブル崩壊。日本経済が閉塞してしまって、暗い境遇に身をおく若者が増え、現実を忘れさせてくれる夢のある物語を欲した


(2)文芸界の崩壊。文学、文芸というものも、すべてやり尽くした感があり閉塞感があって、出版社は新しい風を求めていた


(3)読者・作者の裾野の広がり。PCの普及、スマホの普及により小説を書く人読む人の、間口が広がった。以前は一部の「書物オタク」のための趣味だった読書を、誰もがいつでも簡単に安価にできるようになった。


(4)災害・テロの日常化。テロとか災害とか戦争が、より身近に感じられるような時代になってきた。東日本大震災。ISの台頭。北朝鮮の脅威。パリの混乱。


このような暗い時代において、あえて娯楽である(はずの)小説でまで、そのような現実の危機に触れたいか。答えはたぶん「否」。そのような暗い小説を、読者は意識的に、あるいは無意識のうちに回避するはず。


そんな無意識のうちの暗いお話の回避が、「なろう系小説」の特徴であると言われている、「ご都合主義」、「危機感の欠如」、「チーレム」、という読者にやさしい世界への収束をうながしているのではないか。そうだとしたら、そこに求められる要素というのは、なんだろうか?



3.なろうでうける作品の特徴とは


ここで少し実例を見てみようと思って、なろうで比較的高ポイントをゲットしているある作品(転スラではない)の特徴を、分析してみた。結果驚くべきことがわかった。


[あるなろう系の高ポイント作品の特徴(分析結果)]

・各話の最初では古風な語り(ここはまあよい)

・地の文で説明的なひとり言を言い続ける

・地の文にたまに入る若者風の言葉づかい

・地の文にたまに入る幼児言葉

・多用されるオノマトペ

・何も考えてなさそうな軽いセリフ

・自虐&プラス思考の融合

・無味無臭の、乾いた描写

・個性的だが回りくどい形容句。

・アニメチックな物理法則・アンリアル

・頭のネジが一本足りないのではと怪しませるキャラたち

・空気が読めない・理解が遅い主人公

・頭のあまりよくなさそうな幼女たち

・おっさん並にエロい男の子

・男の子に優しいエロ姉さん


あかん……、なぜこれが高得点? と思って感想欄を見てみたら、どうやらその作品、書籍化もされているようで、その書評では散々叩かれ、フルボッコにされている模様。つまりなろうで高ポイントを得ている作品が、必ずしも一般的に見ていい作品とは言えないということだね。これだけは覚えておきましょう。


ただ、書籍化された後の批判はともかく、上記の中に、「なろうで高ポイントを取るためのヒント」は確実に隠されている。少なくとも、暗い時代を忘れさせている要素を、読者は求めているはずなのだ。それを抽出してみよう。



4.読者がなろう系小説に求めているものは「癒し」


なろうの読者は小説に何を求めているのか。


それをお祭りに例えてみる。


なろう系小説をお祭りに例えるなら、

それは近所の小さな神社で行われるお祭。


決して京都三大祭や、日本三大祭りのような、

巨大なお祭りを読者は求めてはいない。


これまでになかった奇抜なイベントや、

金のかかった夢のようなテーマパークも求めてはいない。


求めているのは、

普段着・軽装で気軽に立ち寄れ(極力軽い文体、平易な語彙)

開始前のわくわく感、ざわざわ感(期待感)

カラフルな屋台を満喫でき(わかりやすく目をひくガジェット)

タコ焼き・お好み焼きなどで小腹が膨らみ(軽い展開)

地元の子供たちによる太鼓の演奏が見られ(定番の設定・イベント)

時には花火があがり(迫力、驚き、感動)

恋人たちはそっと手をつなぎ、頬を赤らめる(ストーリーの進展)

これが、現在の私が考え得たなろうテンプレ。


毎回毎回、ちょっと違った新鮮な気持ちで立ち寄れる、


片意地はらないご近所のお祭。


その場の空気を共有している感、

みんなでイベントを作り上げている感、

などがあるとなおよい。


最後に最も重要なのは、

各話におけるコミカルなエンディングであろう。

「来てよかったな。来年もまた来ような」

「ええ(主人公の腕をつねりながら)」

「い、いてててて!」


読者が求めているのは、くすっと笑える小芝居なのだ。

例えそれが、テンプレで空虚で無味乾燥な笑いであるとしても。

そう、つまりなろう系読者が求めているのは「癒し」ではないか。

それが今回のエッセイの結論である。


次章では、テンプレを使ってみつつ、

テンプレを使うことの弱点を見てみたい。



5.テンプレを実際に使ってみる


まずテンプレを使い、ある小説の第一話を考えてみます。

タイトルや設定は、あえて考えない。


例)第一話のプロットをテンプレで作ってみる

・期待感:異世界もの。道端でしゃがむ若者。通りがかる主人公。

     若者が主人公に話しかけ、物語が始まる。

・わかりやすく目をひくガジェット:若者の持つ宝石付きアイテム

・軽い展開:「このアイテムを、この近くにある泉に捨ててきて欲しい」

      「いいぜ、報酬は?」軽い主人公。

・定番の設定・イベント:第一回から定番のイベントは難しいかも?

     主人公は突然バランスを崩して宝石付きアイテムを地面に落とし、

     壊してしまう。中に封じ込められていた魔女が現れる。

     第二話からは、この魔女の登場を定番のイベントとする。

・迫力、驚き、感動:小道で待つ若者に向けて、火球を放つ魔女。

     巻き込まれて焼け焦げる主人公。

     戻ってみると若者の姿はない。

・ストーリーの進展:

     主人公は魔女のパートナーを得て同棲を始める。

・空気を共有:

     主人公の住む町の人達と打ち解ける魔女。

・コミカルなエンディング:

     肉を火球で料理しようとし、あやうく家を燃やしそう

     になる魔女。「家の中では魔法禁止だあああ!」


うん、第一話でこれだけのものを詰め込める技術があれば、

なろう系読者も納得だろう。それを実現できるかは、今は考えない。


で、テンプレから第一話のプロットが完成。

同様に第二話、第三話と考えていけばいい。


だがここで注意点。1話ごとにテンプレを使ってお話を考えると、

どうしてもテンプレありきのストーリーとなってしまう。

期待感を高めるために毎回新しいキャラを登場させてしまったり、

毎回新しいガジェットを登場させ、ガジェットの意味が軽くなったり、

定番の展開を意識する余り、ストーリーがご都合主義になったり、

コミカルなエンディングを重視する余り、キャラの性格が変化したりと、

そういった分裂気質的なストーリーとしないために、必要なことがある。


それは愛だ。


その愛の欠如が、テンプレを使うことの弱点となる。

あまりに効率がいいために、作品への愛、主人公への愛、

キャラへの愛、世界観への愛を、育む必要すらなく

ストーリーを作れてしまう。

そのままだとそのうち、キャラの性格や、世界観は崩壊する。


せめてキャラクターシートを作ってキャラへの愛着を持ち、

後付けでもいいので設定資料を作り、矛盾が生じないように

するべきでしょう。


と、これで、なろうにおける「ビジネス視点」の検討は終了です。

結果、結構いいテンプレができたのではと感じています。

みんな、これを使って転スラを超える作品を作ろうぜイエーイ。


なろう系小説のためのテンプレ

・期待感:

・わかりやすく目をひくガジェット:

・軽い展開:

・定番の設定・イベント:

・迫力、驚き、感動:

・ストーリーの進展:

・空気を共有:

・コミカルなエンディング:


(終り)


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― 新着の感想 ―
[良い点] タイトルのテンションの高さに惹かれて読みました。 途中のお祭りの例えがいいですね。 分かりやすいです。簡単に想像できました。 簡潔で素晴らしい分析と、読み手への語り口調にギャップがあって…
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