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秋葉原に佇む巨塔

作者: 三田 元

新宿から総武線に乗り継ぎ秋葉原へ向かう。

秋葉原に現れた円錐状の巨塔のニュースで、

世間はざわついた。

僕もその世間の1人だ。


僕は、

いや僕たちはもしかしたら

その巨塔の意思によって

集められていたのかも知れない。


向かいに座る頭髪の白い老人と目が合う。

「あなたもですか」

「ええまぁ」

「あんまり関わるもんではないですよアレは」

「ははは、、、」

もっともな意見だ。


インスタ映えとかを狙って

巨塔に集まる人もいるようだが、

でも僕はとにかく「非日常」を求めていた

ただの人間だ。

写真も撮らないしインスタ、

ツイッターにあげるわけでもなかった。


でもその日は撮らずにはいられなかった、

その美しすぎる巨塔を見てしまったから。


あぶないのでおさがりください。

そういう警備員を前に、

僕はシャッターを切る。


「これはやばい」

心臓が拍動を早め、体が熱くなる。


塔を取り巻く美しいフォルムとは裏腹に、

不自然にとってつけられたような「ガンキュウ」

と呼ばれるようになった丸い物体は、

せわしなくどこを見るのでもなくうごめき続けている。


しかし、

巻貝のようなそのフォルムの

中で何を守ろうとしているのか。


我々の生活は徐々にこの異質な物体に翻弄され、

惑わされ、壊されていった。


洞穴と呼ばれ始めた、

巻貝に空いた穴の中は真っ暗で

ここからでは何も見えない。

いや、近づいても何も見えないだろう。

知りたければ入るしかない。

二度と出られないことを前提に。


中で蠢くそのもにょもにょしたものは、

死体だろうか、もしくはただの幻覚だろうか。


先日洞穴の中に入って出られなくなった人の安否が

気にかかるがしかし。


人々がどれだけ騒いでも、

秋葉原に現れた巨塔は動かない。


「さようなら」

そう言って僕の隣で警察を振り切った少年の、

どこか清々しい横顔を眺める間もなく、

その穴へ向かってかけていった。


まただ。

僕はまた先を越されてしまった。



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