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愛を失う

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 窓からギラギラと差し込む日差しに顔をしかめながら朝食の席で会社の出張なので明日から大阪に行くと告げる


 一年前に生涯を共にすることを誓った│明葉あきはに嘘をついたのはこれが初めてだった。
















 異変に気がついたのは先週辺りから。やけにそよそよしく放ったらかしにいていたはずの携帯もいつも身につけるようになり、何処か俺の前では何かを隠すようになった


 信じたくはない。なんせ浮気なんてされないように俺の出来る最大限の愛を伝えていたつもりだからだ。


 上司からの飲みの誘いもなんとか理由を付けていつも断り、すぐに家に帰って1秒でも長く一緒の時間を過ごせるよう努力したし、休日は買い物も、旅行なども十分にしていたし、上手く愛を伝えられてると思っていた。


 明葉とは大学時代に出会い。4年の交際を経てプロポーズへと至った。


 明るく、頭も良く運動もできる。友達も多い。俺とは似ても似つかないし、会話なんて交わすことも無いはずだった。


 成績も運動も、ゲームであっても器用貧乏で何でもできるけど何にもできないのが俺。容姿も普通のTHEモブ。


 そんな俺がなんの間違えか交際。果ては結婚まで至ったのは今思えば身の程知らずの馬鹿であった



 出張を告げてから数日。“あれ”の実行の日


 「気を付けてね。行ってらっしゃい」

 「ああ、行ってくるよ。留守頼んだよ」

 「うん分かった。ほんと、事故とか気を付けてね」


 俺は出張と嘯いて実は数台のカメラを家中に仕掛け近くのホテルへと向かった。会社は有給を取って休みを取っている。


 流石に一日中見てるのは無理だが出来る限り見張ることにした。


 数刻も経たないうちに明葉は化粧をしてお洒落を始めた。外出なら跡をつけ無ければと思い、パソコンから携帯端末にカメラの映像を移して家の向かいのマンションの6階へと上がりそっと顔を出す。


 しばらくすると明葉は外出では無く来客を迎えた


 俺と同い年くらい……イケメンというか、俺より明葉に釣り合ってるのかも……


 なんて馬鹿なことを考えてしまうほどに現実逃避をしていた。


 明葉はその男を家にあげ、思うままにイチャイチャし、最後には俺と明葉のベットへ向かい夜の営みを行っていた。


 「俺の……努力は無駄だったと?やっぱり俺なんかが明葉とは釣り合わなかった……?」


 ぽつりぽつりと口に出すたび絶望に染められていくのがわかった。


 「俺は……やっぱりか。また、失うのか……」



 6日の出張。その嘘が終わるまで、俺は家に帰れなかった。家へ行ってすぐにでもあの男を殴りたい。問い詰めたい。

 しかし、そんな事出来るはずもなく、出来るだけの事実確認を明葉の友人などを辿って調べ、6日後の今日帰宅した。


 「ただいま……」

 「ど、どうしたの!?そんなに目を腫らして……何かあったの……?」


 白々しい……怒りを通り越して呆れすら感じる。


 「あ〜……えっとさ、ちょっと昔話聞いて欲しいんだけど、いいか?」

 「え?あ、うん。なんでも話してみて?」


 「俺さ中学の時好きな子がいてさ、その子、親友の幼馴染で親友もその子が好きでさ。わざと自分でその子に嫌われるようにしてなんとか諦めたんだ。高校からはその2人付き合ったらしいけど。」

 「う、うん」

 「高校からは遠くの地域に行って恋愛なんて絶対しないって思ってた。けど、高校で出来た同じ部活の親友の野浜に『後輩の中村絶対お前に気があるから』ってほかの部活仲間からも冷やかされるから告白したんだ。少し気になってたしね。」

 「……」

 「OKは貰ったんだけど5日で振られたんだ。実は部長がその中村に『野浜は絶対お前に気がある』とか言ってたみたいでそれで実際は前から野浜の事が好きだったらしい。」

 「酷いすれ違いだね……」

 「けど振られる時なんにも教えられなかったし、それを知ったの振られたショックから立ち直った後なんだ、中村は俺を振ってすぐ野浜に告白して付き合ったって。その後すぐ野浜を振って居心地が悪くなった中村は退部した。」

 「……」

 「だからもう恋愛なんて無意味なこと絶対しないって、こんな事で壊れる関係なら最初から踏み込まなければいい。ずっと変わらない関係で。ずっと……ずっと、」

 「なんでいきなりそんな話をしようと思ったの……?」


 心底心配そうに明葉は俺を抱きしめる。それを押しのけ、続ける


 「大学で、明葉に出会って、明葉に好意を告げられ、明葉に愛され、明葉を愛した。最初から無かったような関係だったし失うものなんてないと思ってた。思ってしまった。」

 「ど、どうしたの?急に……」


 そう。思ってしまった。


 「お前に……!お前に失い続けた俺の何が分かる!」

 「なによ……そっちから話し始めたんじゃない!」

 「俺は……俺は、お前が、明葉が居ればそれで十分だった。失ってきた人生の中で唯一得た幸福だと思った!それがなんだ!俺がいない間に居たやつは誰だ!」

 「な、何のことよ!」


 あくまでシラを切るつもりか……


 「いいか、俺は出張と嘘をついてカメラを仕掛け近くのホテルで監視する事にした。明らかにお前の様子が変だったからだ!」

 「……っ!?」


 「俺もう……失うのは嫌だった、だから飲み会もすべて断って休日もお前との時間を大切にした!」

 「ち、違うの!あれは……」

 「何が違うんだよ!お前の言い訳は不倫してる奴がいう言い訳のテンプレとなんら変わらないんだよ!」

 「ッ……」


 取り敢えず言いたいことを言うだけ言って少し冷静になった。何も言わなくなった明葉を一瞥し、


 「明日、お義父とお義母の方にも報告するからな……」

 「や、やめて!お願いします!もうしませんからっ!」

 「もう?ずっと騙し続けてきた気分はどうだ?1回コッキリの関係じゃないことは知ってるんだよ。あの男の事もすべて調べてある。これでもまだ言い訳を続けるか?」

 「い、いや……捨てないで……私、あなたが居ないと……」

 「先に捨てたのはどっちだ?」

 「やだ、やだよ……絶対しない、したくないっ……携帯も……他も全部管理していいから!」

 「いや、俺とは遊びだったんだろ?だいたい管理して言うこと聞かせてるだけでこの傷が埋まるわけがないだろ?」

 「あ、あぁ……うっ…グズッ……」

 「泣きたいのはこっちなんだけど」


 「俺の父親、離婚したあとに不倫が発覚したって言ったよね?だから不倫は許せないんだ。絶対」


 6日の間に涙は枯れ果てた


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