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TAME GATE psychic record  作者: 時扉
篠崎勇羅の宝條学園事件簿
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32話・響side



『俺に聞きたい事?』

「組織上層部に、何らかの店構えてる構成員のリストなんだけど…。こっちに上げられるかな?」


館花二羽と名乗った一年の女子生徒に持ちかけられた相談は、普段なら対人関係の相談事を、あまり持ち掛けられる事の無い響にとっては以外な物だった。


『友達が生徒会や宇都宮君と関わり始めてから、ますますおかしくなってしまった。別の学校の友達にも相談しているけど、これ以上裏で怪しい噂が立ってる学園の生徒会に踏み込んだら、周りの無関係の友達も巻き込んでしまうし、自分一人ではどうする事も出来なくなってしまう。ほんの少しでも構わない、何か生徒会に関する情報があったら教えて欲しい』


彼女の友人が変貌した手掛かりとは、東皇寺学園の三年生である事。もう一つは学園生徒会と宇都宮夕妬の息が掛かっている生徒である事。しかし一年生であり、更に外部からの新入生である二羽の立場ではどうする事も出来ない。それなら東皇寺生徒会役員の息が掛かっておらず、尚且つ生徒会とは程遠い外部から進学した一般生徒に相談した方が、生徒会にマークされないと思い響に相談した。


二羽の話を一通り聞いた後、自宅へと帰宅した響は姉がまだ勤務先の病院から、帰って来ていないのを確認し、今こうして本部で勤務中の時緒に連絡を取っている。


『…無理だ。そのリストを現在、絶賛学生生活堪能中のお前へ見せるには危険すぎる』


これは黒だと確信した。異能力者狩り組織幹部の中には、社会の闇に紛れている異能力者を誘き寄せる故に、怪しげな店を営業してる構成員も複数人存在している。上手く行けば何らかの手掛かりが得られるかもしれない。


「やっぱりこっちに上げられない?」

『上げたらお前の人生、完全に最後だと思え』


ドスが効いた時緒の声に響は無意識に顔をしかめる。これでは一人で調べるのは難しいと判断した。


『大体異能力者狩りと学生の二重生活やってるお前が、簡単に知って良い案件じゃない。用が無いなら切るぞ』


響に対して吐き捨てるかの如く一方的に言い放たれると、プツリと言う音と同時に時緒に通話を切られてしまった。直球に断られてしまった響は深く溜め息を吐く。組織に入ってから既に越えては行けない線は越えてしまっているが、内部に踏み込み過ぎも良くないと言う事を身を持って思い知る。


「…仕方ない。宝條学園の子にもう一度連絡取って見るか」


携帯端末から篠崎勇羅のアドレスを捜しだすと、手早くメール文内容を打ち込む。


『To:知ってる?

文:いきなりメール送ってごめん。宇都宮夕妬の件で何か新しい情報見つかった? 知ってる範囲だけで良い。 響』


現時点で組織の情報を入手出来ないなら、ここはやはり宇都宮夕妬の情報を詮索するのが一番無難だ。メールを送信すると、すぐに勇羅から返信が返って来た。


『To:宇都宮?

文:前に言い忘れてたんですけど、ウチの身内にあの、宇都宮夕妬の見合い話叩き折った先輩知ってますよー。先輩のお兄さんも今回の件は見過ごせないから必ず潰す、って張り切ってる』


流石に本人は知らないが、どうも彼の身内にその手の事情に詳しい人間が居るようだ。しかし『あの』宇都宮夕妬の口説きをバッサリ切り捨てるとは、宝條学園の女子生徒の男性を見る目は、かなりの精鋭揃いと見える。今度は別の着信音が鳴る。相手は先程メールを返信してきた勇羅であったのですぐに着信を取った。


「もしもし」

『ご無沙汰してます、篠崎です。なんだかメールの内容気になったから、話聞きたくて電話かけちゃいました』

「気にしなくて良いよ、こっちも急にメール送ってごめん。ウチの学校で気になる事があったから」

『大丈夫ですよ。俺達の方も先輩の事、色々巻き込んじゃってますし…』


携帯越しから勇羅の申し訳なさそうな声が聞こえる。彼らもまた東皇寺学園…宇都宮夕妬にマークされ始めているのだ。


「そうそう。宇都宮夕妬と見合いした先輩の事を、篠崎君の知ってる範囲で」

『宇都宮の見合い叩き折った先輩? うん。一方的に向こう側から、見合いを押し付けて来たって言ってたから、初めから破棄する気満々だったって。先輩が宇都宮夕妬と会った感想は『あいつの目は人と人して見ていない』って』


勇羅からは予想以上の答えが返って来た、宇都宮夕妬は人を人として見ていない。響だって家族を奪った異能力者は嫌いだ。しかし響自身が非能力者異能力者問わず、分け隔てなく接する姉を誰よりも尊敬しているし、これは時緒に話せば怒られるだろうが、異能力者自体に対しては、響自身の感想は正直複雑な心境なのは事実だ。


『俺が話せるのはこれくらいです。もう少し詳しく分かればまた連絡します』

「ありがとう」


もしかして宇都宮夕妬は異能力者を嫌う以上に、最早自分以外の人間を人間として扱っていないのではないのだろうか。



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