13話・勇羅side
「なっ……。何なんだよ…これ」
駅前で雪彦達と別れ、自宅へ帰った勇羅。早速自分の部屋でパソコンを起動すると、すぐにネットブラウザを立ち上げ、検索ワードに『東皇寺学園 匿名掲示板』とキーボードを打ち込む。
だが該当するワードを打ち込んでみても、匿名掲示板のスレッドには引っ掛からなかった。更に調べるべく検索ワードを絞っても、出てくるのがなぜか市の質問箱やら、教育委員会やらのホームページばかりで、東皇寺学園専用掲示板の検索には相当難儀した。
しかし、偶然にもある単語をワードに追加して再度検索をかけ直すと、東皇寺学園のワードが引っ掛かっり、ある一つのホームページが検索上部に出てきた。
「東皇寺学園の聖域……これが?」
リンクを開くと確かに【東皇寺学園の聖域】と書かれていた。しかしホームページの入り口は神々しさと同時に、一種の気味の悪さすら覚える。サイトの入り口をクリックしようとすると、突然机の携帯端末の着信音が鳴り出した。着信画面を見ると相手は雪彦からだ、慌てて携帯を取り待ち受け画面の通話ボタンをスライドさせる。
「も、もしもし」
『もしもし勇羅ちゃん。例の匿名掲示板、見た?』
向こうで何かあったのだろうか。携帯越しからの雪彦の声色はなせだか重い気がする。
「あの東皇寺学園の聖域って奴? ま、まだ…入り口だけ。でもなんか不気味で、本当に閲覧して良いのか怪しくってさ」
『正直言って見ない方が良い…。さっき万里とも電話で話したんだけど、これ以上東皇寺学園と関わったら、僕等だけじゃなくて先輩達まで巻き込まれるかも』
「ちょ、それ…どう言う事ですか?」
『その掲示板。父さんや母さんにも見てもらったんだよ…正確には見てる途中、部屋のドア開けっ放しにしてて見られちゃったんだけどさ。あれは滅茶苦茶ヤバいって』
何と言う事だ。自分達の知らない内に、事態が収集着かなくなりそうになっているとは。しかも雪彦の両親お墨付きだ。
『それに……あんなの人間のやる事じゃない』
雪彦の声は明らかに例の学園に対して、憤りを感じるように怒った口調になっていた。それは東皇寺学園の掲示板に、雪彦を怒らせるまでの『何か』があったのだ。
「そこまで見るなとか言われたら、尚更その掲示板興味あるんですけど…」
『一年の勇羅ちゃんには刺激が強すぎる。テレビで例えるなら画面一杯にモザイク掛かった、ホラーとスプラッタが満載のグロ画像全開と思って良い』
「!?」
ホラーとスプラッタ満載かつ、画面一杯モザイク全開のグロ画像と言われ、勇羅は反射的にホームページのブラウザを速攻で閉じた。勇羅的には恐いのは平気でもグロいのはどうしても駄目だった。
「ぐ、グロいのはちょっと…」
『でしょ? とにかくこの学園の件は、みんなにも黙って退いた方が良い。余計な騒ぎ持ち込む以前の話だし』
雪彦の言う通りだ。学園らしからぬ気味の悪いホームページ見た以上、東皇寺学園そのものには介入しない方が良いだろう。
「今日の事はどうする?」
『万里とも一致でこの件は黙秘って事で、これは泪先輩にも真宮先生にも言わない方が良い。それじゃ、明日また学園で』
今日の件はお互いに黙秘するとの事で了解を取った後、雪彦との電話を切る。
「はあぁぁぁ…」
勇羅達の中でまた秘密が出来てしまった、今度は下手すれば学園内外にも大きく関わりかねない奴である。一つだけ気になると言えば、何故『サンクチュアリ』のワードであの掲示板が引っ掛かったのだろう。勇羅としては今人気の特撮番組のワードを、興味本位に混ぜて打ち込んだだけである。
本当に何事も無ければ良いな、と勇羅は内心で祈るしかなかった。




