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TAME GATE psychic record  作者: 時扉
篠崎勇羅の宝條学園事件簿
52/283

2話・雪彦side



―宝條学園第一校舎食堂。


「何で万里も一緒になる訳?」

「どうもどうも」


部員勧誘活動騒ぎを起こした翌日の昼休み。午前の授業が終わり、起立礼を済ませた直後。昼食を食べに中央錬の食堂へ足を進めた皇雪彦は、今まさに一番会いたくない生徒と向かい合わせで一緒に食事をしていた。

雪彦と同じテーブルで向かい合わせとなり、食事を取っている人物とは、外に跳ねた二つの三つ編みと、眼鏡の下に見える眠たそうな目をした、一見おっとりとした見た目の女子生徒の名は実咲万里(みさき ばんり)

彼女は雪彦の又従姉弟でありクラスメイト。そして自分と同じ一年からの探偵部部員だ。


「何を言う。雪彦は見た目に反して、歩く天然タラシの皮を被った野獣だ。私にはその特攻野獣を監視する義務が化せられている」

「いや、特攻野獣って何だよ…。今日だけはゆっくりと一人で食事したかったのにさ…」


「何言ってんですか、ウチの部はいつも騒ぎ起こしてるじゃん」

「そうそう。だからウチの部活問題扱いされてるんだよね」

「泪先輩苦労してるもんねー…」


雪彦のいるテーブル席には万里の他に勇羅や瑠奈、そして瑠奈の従妹で探偵部部員の真宮琳(まみや りん)も座っていた。名前だけの部員も何人か在籍してはいるが、部活動としての人数合わせと言った側面も何割か締めている。


彼&彼女らは何らかの部に在籍している、と言う名目が欲しい理由で名前を書いているだけで、実際は部活に参加してないのだから、正直な所幽霊部員と変わりない。

本腰を入れて探偵部としての活動をしているのは、部長の泪を含め基本この面々である。


「瑠奈。『角煮(かくに)』は元気?」

「うん、相変わらずよく食べてよく走るよ」

「食べられる角煮! 肉屋へ向かう荷馬車に揺られていく哀れな子豚が!」

「万里先輩。当然の如く角煮を肉屋に差し出すような発言やめて下さい…」


『角煮』とは瑠奈のペット。実はミニブタの名前なのだが、本来瑠奈はペットの角煮を、あろうことか『食用』狙いで飼い始めたらしい。食べる目的で飼ったと聞いた時、勇羅も丸焼き狙いと言った(よこしま)な理由で可愛がっていた。だけどしばらくして、角煮を飼っている内に飼い主の瑠奈だけでなく、勇羅までもすっかり角煮に対して情が湧いてしまったらしく、今では立派な真宮家の一員になりつつある。雪彦がちらりと周りを見ると、瑠奈の隣に座っている琳が、日替わり定食の味噌汁に何やら白いものを投下し始めた。


「ちょ、ちょっ?! 琳ちゃん、それ砂糖だよね? 何で味噌汁に砂糖入れるの!?」

「え? 私はこれ当たり前に入れてるんです」


味噌汁に砂糖を入れる琳に驚愕の表情を浮かべる雪彦に対し、第一食堂特製メンチカツサンドを食べながら、これはもう慣れたと言わんばかりの顔をする瑠奈。


「琳にご飯作らせると絶対甘くなるんだよ…。誰かが監視しないと、何がなんでも砂糖かハチミツ入れられる」

「俺も琳ちゃんのご飯食べた事あるけど、あの時のカレー甘すぎた」

「えぇー…」


勇羅と瑠奈の言葉を聞いて唖然とする雪彦を他所に、向かい席の万里はとっくに自分の食事を済ませていた。食べる量は普通の女性と変わらないらしいが、万里はとにかく食べるのが早い。


「ごちそうさま」

「相変わらず食べるの早いな…」


既にトレーから皿を片付け始めた万里に対し、他の面々は食事がまだ半分程皿に残っている。


「私にとって美味しい物は、迅速に手早く始末するに限るのだよ。もちろん面白そうな物はじっくりゆっくりと、一つづつ味わって楽しむのが私のポリシーさささっ」

「全く持って訳がわからんよ」


万里はトレーを持って椅子から立ち上がると、小刻みなスキップをしながら、食器返却口へ向かっていった。そんな万里を雪彦は呆れた表情で見送っていた。




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