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TAME GATE psychic record  作者: 時扉
真宮瑠奈と死にたがりの超能力者
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85話・瑠奈&ファントムside



「部隊長! この建物の内部にいる異能力者共は!?」

「A級クラス能力者とC級クラス能力者がそれぞれ三体づつ。問題ない、我々だけで対処可能だ!」


ファントムと異能力者狩りとの苛烈な戦闘が行われているホールでは、いつの間にか時緒が呼び出したと思われる異能力者狩りの戦闘員達が、次々とホール内部へなだれ込んで来た。


「くそっ、いつの間に?! お前ら卑怯だぞっ!」

「上からの命令なんでね、異能力者を狩るのに卑怯もクソもない。ファントム支部に侵入した以上、この建物の中に居る異能力者は全員始末させて貰う」


時緒が呼び込んだ戦闘員の人数は、明らかにクリストフ達の人数を上回っており、戦闘員の全員がサブマシンガンや火炎放射器と言う、街中で晒せば確実にパトカーに乗せられる、問題ありありの危険な武器を手に持って構えていた。予想外の侵入者と人数の多さに対して、玄也は思わず悪態を吐く。


響と戦闘中のクリストフはおろか、現在時緒を相手にしている玄也やルミナでもこの混沌とした場を切り抜けられるか。


「不味い事態になっているな。正直宇都宮一族管轄下の研究所が、内部でどのような研究を行われているか、この場で話せば長くなる」


瑠奈達と行われている戦いの状況を、交互に観察しながら話すルシオラを横目に、瑠奈と薫は不安げな表情で顔を見合わせる。


「どうなさるのです」

「これを」


ルシオラは薫に何枚かのメモ用紙と、自分が普段から持っている携帯端末を手渡す。それを受け取った薫が確認すると、メモ用紙には見取り図と誰かのアドレスが書かれていた。


「君と瑠奈は隙を見てこの支部から脱出しろ。私のマンションへ行き、用紙に書かれている者と連絡を取れ」

「る、ルシオラ様はどうなさるのです?」

「私は彼らを援護する。あの二人の情報は、玄也から聞いている。幹部クラスの戦闘員二人を相手にしている以上、あの人数では玄也達でも対処しきれん」


今だ不安げな薫だが、ルシオラへの助太刀を申し出た所で、異能力者の対処に慣れた熟練の異能力者狩りが相手では、ルシオラの足手まといになるのは明白だった。薫が黙って頷いたのを確認したルシオラは、無言で玄也達が交戦中のホール内へと進み出る。



「お前が『あのお方』の言っていたファントムの総帥か」



玄也達と交戦していた時緒は、最大の脅威でもあるファントム総帥・ルシオラの姿を視界へ目にした事で、忽然と現れた最高の獲物に不敵な笑みを浮かべ、同時にクリストフと交戦していた響の表情にも、異能力者集団の頂点に立つファントムの総帥に対し緊張が走る。



「···-動くな」

「!!?」



ルシオラの形の良い唇から一言だけであるが、圧倒的な威圧感を感じる言葉を発する。端正な顔立ちをした白髪の青年が一言話し両手を前にかざした瞬間。ルシオラやその周囲を無数の小さな光が次々と辺りを取り囲む。周りを取り囲むように動く無数の小さな光は、まるで蛍を思わせる幻想的な光だった。



「これは!? ば、バカな···っ。先程のC級クラスと思われていた念動力反応は、まさかあの···!?」

「なっ、何だこれは? こんな光···ぐあっっ!」



ブレイカー戦闘員の指先が光に触れた途端、小さな光の球は瞬時に念となり見えない爆発を起こした。光へ触れた戦闘員は爆発と念の衝撃波を諸に受け、そのまま勢いよく壁際へと吹き飛ばされた。

吹き飛ばされた戦闘員は壁にぶつかった衝撃で、武器を派手な音を立てながら床に落とし、同時に男も床へ崩れるように倒れ込む。床へ倒れた戦闘員は微かにうめき声が聞こえるので、生きてはいるが打ち付けられた衝撃が強く、意識を失っているようだ。



「!······ありゃ厄介だ」



ルシオラの使っている能力をある程度察したのか、時緒も響も戦闘区域内に次々に現れる小さな光をギリギリ避けながら、それでも怯まず相手との戦闘を続行する。



「くそっ···!」



時緒と響を除いたブレイカー戦闘員達は、あっという間に混乱状態に陥り、誤って光に触れては次々と彼らは壁へと吹き飛ばされていく。浮いている光は小さくとも一つ一つの威力は相当なもので、念の込められた光に触れれば、確実に身体は吹き飛ばされ、やられてしまう。理解してはいるが蛍のような小さな光が、目の前で爆発する様をまざまざと見せ付けられた為、時緒も響も本能的に身体の動きが鈍り攻撃の精度も下っている。


更にルシオラの放った光は、ホールの広範囲にまるでイルミネーションを行っているかのように展開されている。器用な事に彼の仲間達は、展開された光に触れても全く爆発せず完全に素通りし、一切の危害が及んでいないあたり自分の能力の制御自体も完璧だ。流石は世界中で危険組織と認識されている、異能力者集団・ファントムを纏める最強の異能力者と言わざるを得ない。


「やっぱりあんたすげえな! ルシオの領域を避けながら攻撃するなんて」

「うるせぇ! これでも避けるのに精一杯だよ!」


光の球を器用に交わしながら玄也と交戦する時緒。同じく響も光球を避けながら交戦していくが、比較的小振りなナイフで立ち回っている時緒と対称に、持っている武器の丈が長く大柄な為か、時緒以上に身体の動きが鈍っている。


「ったく鬱陶しい!」

「···とはいえ、ルシオの光を避けながら攻撃してくる当たりは、君大したもんだよ!」


ルシオラの光で動きが鈍り、玄也だけでなくルミナをも相手にしている時緒の方は更に苦戦を強いられていた。玄也に集中していれば、ルミナをも異能力で時緒に襲い掛かってくるのだ。全神経を集中し二人同時を相手にしなければ、どちらかに倒されてしまう。



―···。



「凄い···。あれが、ルシオラさんの能力···」

「さすがはルシオラ様っ!」



ルシオラの圧倒的な力を見てはしゃぐ薫とは逆に、ぽかんとした顔で傍観する瑠奈。あれがルシオラの持つ異能力。蛍のような幻想的な光を操りながら、触れたもの全てを敵とみなし排除する光。


「あ、あそこから抜けられるかな」


周りを見渡し非常口を発見した瑠奈が、指を指しながら小声で薫に囁く。


「!···大丈夫、あそこの非常階段ほとんど使われてなかった筈よ。早いとこ此所を脱出して、ルシオラ様のマンションへ行きましょう」


瑠奈と薫が周りに悟られないよう、非常口の方向へ駆け出そうとした時だった―。



「み、みなさんっ!! 戦いは······悲しい戦いはやめてくださいっ!!」



ルシオラ率いるファントムの異能力者達とブレイカー構成員との、激しい戦闘が繰り広げられているファントム支部内のホールに、場違いとも言えるあどけない少女の美しい声が響き渡った。




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