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TAME GATE psychic record  作者: 時扉
真宮瑠奈と死にたがりの超能力者
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78話・瑠奈side



―午前十一時半・ルシオラのマンション。


「それで。何度かこのマンションへ?」

「うーん、そうでもないわ。実は私、研究所外の周りの事あまり知らなくて···。これでも研究所暮らしが長かったのが原因ね。研究所暮らしと言ってもそりゃあ、扱いも全然良いものじゃなかったし、正直言えば監禁見たいなもんだったわ。大体あいつらは女の子の扱いなんて、どうでもいいと思ってるのか非常識なのよ···」


現在絶賛ルシオラの元で軟禁中の瑠奈は、突然軟禁されているマンションを訪れた、ファントム構成員・伊内薫の愚痴を聞かされていた。

愚痴とは言っても、特に何事もなく瑠奈からしてみると当たり障りのない雑談。薫との初対面の出会いは喫茶店での口論の末の乱闘、と言った前代未聞の会合だったが、実は面と向かって話し合ったら、彼女自身は純粋にルシオラの思想を信じているだけであり、悪い人では無いと分かった事だった。


最初は薫を警戒していた角煮も、相手は主人を傷つけないと判断したのか、今はベッドで大人しくしている。


「薫さんの状況は大体分かりました。それでも今、ここで閉じ込められてる私に延々と語られても···」


初対面の際、薫の風の刃を操る異能力を目にしている以上、彼女もまたファントムの人間だ。悪い人ではないと分かってはいるが、彼女は余りにルシオラの思想に真っ直ぐ過ぎる為に、いかんせん瑠奈の心底では不安感が拭えない。


「分かってるわ、私が世間知らずな人間だって事。今は周りの仲間の指導を受けて、念の制御も力の制御もきちんと出来るけど、過去に研究所の実験で受けた傷自体はどうしても消えないの。

異能力研究所の連中にとって、私達異能力者なんか自分達に有効かつ有益な、異能力研究知識を得る為だけの、ただの研究対象に過ぎないんだもの」

「薫さん···」


異能力者達が研究所でどんな扱いを受けて来たのか、瑠奈は少なからず興味があった。彼女も泪やルシオラ同様、異能力研究所の被害者の一人なのだから。


異能力者と言え瑠奈自身は、異能力への迫害とは真逆の立場に居たからこそ、迫害が当たり前の立場にいた異能力者から話を聞いて、異能力者の立場をもっと深く理解する事も大事だった。社会から迫害された異能力者の立場も理解しなければ、今だ孤独の中に居続けている泪を理解する事も出来ない。


「そして···。一年前に研究所へ侵入したルシオラさんが、薫さんを異能力研究所から助け出してくれた、と」

「そうそう! 研究所の実験室で、私はいつもの実験をされそうになった所を、ルシオラ様が現れて私を助けてくれたのよ! ルシオラ様がね、研究所で実験体として独房に閉じ込められてた私を研究所の外に出してくれたの! 『私と共に来ないか』って!」


長い間研究所と言う牢屋に閉じ込められていた彼女にとって、恐らくルシオラという人物は、研究所の世界しか知らなかった薫を、外の世界に連れ出してくれた恩人なのだ。


「あっ! でもルシオラ様って、何時も無表情で考えが分からない所があるし、何が好きなのか分からないのが困り者なの。さっきも話したけど私、ここのマンションにも何度か来た事があるのよ。この間私がケーキを焼く話をしてみたけど、ルシオラ様は全然食い付かないし、本が好きなのかなと思ったら、マンションにはそれ程置いてないみたいだしー···。


せめて好きな食べ物でも分かったら良いなと思って、食器棚を調べてたら色んな種類のカップラーメンが沢山置いてあるし、何だかますます底が掴めなくてー···。ルシオラ様が住んでるマンションを、調べれば調べるほど、私が思ってた理想のルシオラ様像から、ますます離れて行く感じがしちゃってね···。そうだ、この話はルシオラ様には内緒ね!」


ルシオラの事を話す薫は実に生き生きしている。薫にとってルシオラこそが、自分に居場所を与えてくれた人なのだろう。


「え、えと···。世間の事を勉強したいと思わないんですか」


瑠奈は当たり障りのない範囲で薫に質問してみる。これまでの薫の話からケーキやらカップラーメンの単語やら、日常的なものは出てくるが、研究所以外の外部の話は全く出てきていない。


研究所でどんな実験を、異能力の研究として一体何をされたのか、こちらから聞いても話したくないのは当然の事だろう。研究所の事が聞けないのなら、外の世界から出て何をしてみたいのか聞いてみた方が、いくつかの返答が得られそうだと思った。


「世間の勉強? そうねぇ···。五芒星のルミナさんは、世間での生活の方が長かったし、片隅じゃ人間の事信じたいって、本人は思ってるみたいだけど、正直私の方は異能力を使えない人間と分かり合えるだなんて、そんなの簡単には割り切れないわよ。異能力者の差別や迫害がどこの世界でも酷いのは、痛い位に自分の身を持って知ってるもの」


話せば話す程年相応の女性らしい言動だし、実はこちらが素なのだろうか。ルミナと話した時、彼女は出来る事なら人間と分かり合いたいと言っていた。しかし研究所の外から救出されて間もない薫は、異能力を持たず逆にその異質な力を持つ人間達と分かり合う事に対し、完全に割り切れないと言っている。


「そうだ。薫さんは組織の···。ファントムの方針に賛成してるんですか」


どうせならばと聞きたい事があった。彼女がルミナやクリストフ同様に、ルシオラを信頼しているなら、組織の方針や内部の事情をいくらか知っているかもしれない。


「ファントムの方針? もちろんルシオラ様の考えは私の考えだし、もし。ルシオラ様が人間と仲良くしたい、って思うなら私はそれに従うわ」


ルシオラに直接助けられた薫らしい返答だ。


「······実はルシオラさん達から聞いたんです。今のファントムは構成員や幹部達の間で分裂してる、ファントムを内から乗っ取ろうとしている奴がいる」

「え? ち、ちょっと待って···。私。ファントムがそんな状況だなんて、全然聞かされてないわ」


薫はそれはどう言う事なんだ、と言った表情で瑠奈の顔を見る。先日ルミナから聞かされた範囲での話題だが、ファントムの中に内からファントムの乗っ取りを企む、異能力者の存在を匂わせていた。薫の反応からして薫はファントムの内輪揉めを全く知らなかったらしい。


「ファントムの仲間達が、ルシオラ様のファントムを乗っ取ろうとするなんてあり得ないわ。ルシオラ様は私達異能力者が、怯えずに暮らせる世界を作るって···」

「···何か。ファントムの充って人が、異能力者狩り集団と裏で繋がってるらしいとか」


充と言う名前に反応したのか、薫は何かを思ったか考える表情になる。



「ま、まさか······あっ。う、うん、あの人なら考えられるかも。周りも充の事は苦手だって構成員はそれなりに居たもの。能力者としても研究者としても優秀なのは認めてるけど、何時も笑ってばかりで気味が悪いってみんな言ってたわ」

「後、充って名前······何か引っ掛かるんです」



充と言う構成員に初めて会った時、一緒にいた鋼太朗が充の声に聞き覚えがあると言っていた。充はファントムや異能力者狩りだけでなく、何処かとも何か関係があるのだ。


「どうして? 充はファントムの幹部の筈だけど。···そういえばあの人。外部からこのファントムの存在を知って入ったって、玄也から聞いたわ」


充が外部から入ったと聞いた瑠奈は更に考え込む。充の事もルミナからある程度聞かされている。ファントム乗っ取りを企む存在の一角の一人として、彼が黒に近い黒だと言う事も。


「んー···」


薫は怪訝な表情で真剣に考え込む瑠奈を見る。充の名前をどこかで見た事があると言う瑠奈に、思い出すのを待っているのだろう。暫くの沈黙の末、瑠奈は口を開いた。



「·········思い出した! 国内政府内閣官僚議員秘書の玖苑充!」




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