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TAME GATE psychic record  作者: 時扉
真宮瑠奈と死にたがりの超能力者
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57話・瑠奈&翠恋side



「暁村の異能力者か···」


暁村や暁学園。村の中で何を行われている事に関しては、結局目ぼしい情報も得られないまま。情報収集に協力してくれた京香に礼を告げ、水海家の玄関前で解散した後。瑠奈は用事があると言って、琳達と別れ一人商店街の街中を歩いていた。


「やっぱり鋼太朗に聞くしかないのかなぁ」


おそらく鋼太朗に家族の事を聞いても、『彼女』の事は絶対に話してくれないだろう。以前勇羅が女の兄弟はいるのかと聞いても、鋼太朗は一貫して首を縦に降らなかった位だ。頭の中で考えながら歩いていると、突然見馴れない人影が瑠奈の目の前に現れた。


「!」


反射的に相手とぶつかる事だけはかろうじて避けたが、人影を避けるのに神経を使いすぎたせいか、瑠奈は勢い余って尻餅をついてしまった。


「す、すみません」


地面へ尻餅を付いたままの瑠奈が、見上げた先にいる人物。その人物は濃い紫色の艶やかな長い髪。その長く艶やかな美しい髪を引き立たせている純白のヘアバンド。そして長身で均整の取れたスタイルの女性だった。


「大丈夫? どこか怪我はしていらっしゃらない?」


女性は穏やかな笑みを浮かべながら、座り込んだまま瑠奈へ手を差し出す。

目の前に差し出された白魚のような女性の美しい手に、瑠奈は一瞬見とれてしまいそうになるが、すぐに頭を横に軽く振り立ち上がる。


「だ、大丈夫です」

「そう。良かったわ」


女性は笑みを浮かべながらも、服に着いた埃を祓いながら立つ瑠奈を見つめている。


「どうしたんですか?」

「うふふっ。ここで貴方と出会ったのは、運命なのかもしれないわ。また、会いましょう」


瑠奈が口を開く前に紫髪の女性は、あっという間にその場から立ち去って行ってしまった。


「···」


不思議な人だった。まるで初めから瑠奈の事を知っているような口調。慌てている瑠奈を見て笑ってはいるが、全く嫌みを感じさせない気品のある穏やかな微笑み。


「あの人······」


ほんの僅かだが彼女から念動力と思われる思念を感じた。瑠奈は思念を感じた女性の後ろ姿を黙って見送っていた。



―同時刻・宝條学園食堂中庭。



「翠恋。あんた本当に良いの?」

「い、いいのよあれで」

「でも、赤石先輩···」


翠恋は友人達にこれからの事について話し合っていた。本当の事を言えば先日における泪の発言には、全く納得がいっていない。泪と交流のある三年の先輩に詳しい事を聞き出そうとしたら、面と向かって断られた。



『泪を理解しないお前に、泪は救えない』



去り際に放たれた三年の先輩の言葉が酷く頭に引っ掛かり、翠恋はその事が凄く気になって仕方がないのだ。


「大体赤石先輩は、翠恋の気持ちなんにも分かってないのよ」

「翠恋だって思いやりある良い娘なのにさ」

「大体あの先輩。前々からいつも一人だし陰気臭くて叶わないのよね。いつもヘラヘラ笑ってて、ぶっちゃけて言うと何考えてるか分かんないし」


「ちょっと! 泪の悪口言うのやめてよ!! これは泪の事わかってない、あたしの責任なの!! る、泪は全然悪くないんだからっ!!」


今自分の事を言われるのは別に構わないのだが、泪の悪口を言われるのは我慢ならない。


「ご、ごめん···」

「そ、そうだ翠恋! 気晴らしにみんなで駅前の喫茶店よってこーよ!」

「···いい。今日はそんな気になれないから家に帰るわ」


翠恋は座ってるベンチから立ち上がり、隣に置いてある学生鞄とスポーツバッグを担ぎ、戸惑う友人達を後目に校舎側へと歩き出す。


周りの生徒の噂だと最近の泪は同じクラスの京香だけでなく、自分以上に親しい勇羅や瑠奈とも接触していない。翠恋の目から見ても泪は自分から周りと距離を取っているようだ。

特にあれ程仲の良かった真宮瑠奈と距離を置いているのが、翠恋に取っては最も気に掛かる。自分がアプローチを掛けても、感づいているのか返事すら貰えなかったのに、ある日を境に泪からいきなり返事が返って来た。


初めのうちは泪が自分の下手くそなアプローチに、やっと答えてくれたのだと舞い上がっていた。だが泪が翠恋と友好的に接してくれるのとは逆に、自分が毎日のように目の敵にしている、真宮瑠奈と突然距離を置き、そして学園内外で二人がほとんど接触がない事。更に泪が勇羅や麗二までも避けている事が浮き彫りになると、翠恋にはある疑惑へと変化していった。


泪は自分を慕ってくれている勇羅や瑠奈を、『何か』に巻き込みたくない為に、自分とあまり接点のない翠恋と親しく接しているのではないのか、と。


「やっぱり赤石先輩。まだ真宮と関わってるのよ」

「先輩にはもう翠恋が居るのに、真宮に関わるなんて酷すぎるよ···」

「それなら翠恋の為にも、私達が何とかしてあげなきゃ」


中庭から遠ざかる翠恋を余所に、友人達の雑談はしばらくの間止まることなく続いた。




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