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TAME GATE psychic record  作者: 時扉
真宮瑠奈と死にたがりの超能力者
195/283

49話・瑠奈side



―同時刻・宝條学園第一食堂中庭。


「そ、そんな···」


放課後、人も少なくなった食堂の中庭で瑠奈は授業が終わった後に教室を訪れた琳や芽衣子。勇羅と麗二も交えて泪の過去に関する一部始終を説明した。

今日は十分身体の調子が良いのか、勇羅は昼休みに購買で買っただろう菓子パンを食べながら、瑠奈の話に聞き入っている。

泪に関する一連の出来事の話を聞いて勇羅と麗二だけでなく、琳と芽衣子も信じられないと言った表情でお互いの顔を見合わせる。


「でも。瑠奈が自分を狂わせた元凶だって赤石先輩の証言···何だかおかしくない?」


芽衣子のおかしいと言う発言に、瑠奈は芽衣子の顔を見たまま僅かな沈黙の直後にそういえば、と言う感じで目を丸くする。芽衣子の言葉を聞いて麗二も立て続けに口を開ける。


「瑠奈。お前中学の時、一年から三年までずっとユウと同じクラスだったろ」

「う、うん」


勇羅もパンを食べながら、瑠奈と麗二の顔を交互に見て答える。


「そうだね。中学の三年間瑠奈とは一緒のクラスだったから、瑠奈の顔は見慣れてる」


言われて見れば中学の時はずっと勇羅と同じクラスで、瑠奈が泪と再会したのは三年の数ヶ月前。泪の過去を知らないのは事実だが、先日の泪が思念を通じて見せた記憶や証言とはまるで辻褄が合わない。


「じゃあ泪さんは琳ちゃんと間違ってるとか?」

「ううん、それはない。私は瑠奈に聞くまで、赤石先輩の事全然知らなかった」


家族や茉莉からも瑠奈と琳はよく似ていると言われるが、宝條に進学するまで泪の事は誰にも話しておらず、琳自身も瑠奈が『憧れのお兄ちゃん』との再会の嬉しさの余り、瑠奈の方から会った時の話をし初めて泪の事を知ったと言う。


「瑠奈の名前を語った偽物がいるって事か」

「それにしてもなんか変じゃない。だとしたら一体なんの為に?」


瑠奈達が考えれば考える程、泪の証言に大きく矛盾が発生し何かが引っ掛かる。

それは泪が嘘を付くにしても、過去を淡々と語った泪の氷のように冷たく無機質な態度が、余りにもリアリティがありすぎて、泪が実際に体験し完全に自分が傷つけた事の様に思えてしまったからだ。


「偽物って言っても顔立ちはともかく体格ですぐにばれるよ。瑠奈、身長の割に出るとこ出てるし」

「···それどういう意味」


ジト目で勇羅を睨むが彼の言う事は当たってる。

中学に入って訳が分からない事に、食べた分の栄養の大半が胸と尻にばかり集中し、三年間で急激に成長した。その年齢の割に出るとこが出たグラマラスな体型を、友人達からは羨ましがられたりやっかまれたりと色々あった。


どうにかして食べた栄養を平均値より低めの身長の方へやろうと、運動やら身長を伸ばすエクササイズやら毎日一杯の牛乳やら必死で試したが、瑠奈の中学時代の決死の努力もむなしく現在の体型に至る。


「じゃあさ、泪さんが俺達と会う前どこの学校へ行ってたか調べてみない?」

「俺もユウの意見に賛成。実は前から気になってたんだ」


そもそも自分達と会う前、泪がどこの学校へ行っていたのか瑠奈達は全く知らない。瑠奈自身は数ヶ月前泪と再会した後、勇羅を介して泪は数ヶ月前に郊外の路地裏で倒れていた所を和真に救われた、としか聞いていないからだ。


「ちょっと待って。確か······暁学園」

「暁?」

「うん、うろ覚えだけど。お兄ちゃんはその学校に通ってた」


瑠奈は泪から思念を介して見せられた記憶の内容を、懸命に頭の中で掘り返していく。暁と言えば以前鋼太朗も異能力研究所の事で、暁について何かを語っていた。


「学園の名前分かったならネットで探した方が手っ取り早いね。検索した方が大まかな場所も分かるし」


以前泪から聞いた話は、自分の昔の記憶は曖昧だと言っていた。

鋼太朗から泪に関して聞いた話を合わせると、泪は自分の家族の顔も覚えていない。


それなら泪は、同じく昔面識のある鋼太朗にも言っていない···―鋼太朗にすら語っていない、何らかの事情を隠しているに違いない。瑠奈や鋼太朗が決して知る事の無い過去を。




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