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TAME GATE psychic record  作者: 時扉
真宮瑠奈と死にたがりの超能力者
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15話・泪side



―···ゴンゴンゴン。



「···?」



―···ゴンゴンゴン。



リビングで一人茶を飲みながら寛いでいた泪の耳に、事務所の玄関を叩く音が聞こえて来る。ドアの叩き方からして、いつもの様に夕食をたかってくる勇羅の叩き方ではないのは確かだ。第一彼は真っ先にインターホンを鳴らす。

玄関脇にカメラ付きのインターホンが付いていると言うのに、何とも節操がない客人だ。



―···ガチャ。


「こんばんは。異能力者さん」


注意深く玄関を開けると、目の前に立っているのは一人の少女。深い緑色の髪を頭の上一つに束ね、服装は少女趣味と言った方が良いか、場の雰囲気に合わぬ不釣り合いな格好をしている。


「あの······何か?」


見知らぬ相手に異能力者と呼ばれ、泪は無意識に警戒を高める。

明らかに自分が異能力者だと知っているかの口調だ。


「私は異能力者組織ファントムの伊内薫、ルシオラ様に絶対的に仕える構成員よ。

あなたが異能力者だと知ってるのはそんな答え決まってるわ。私はあなたをファントムに誘いに来たの」


やはりファントムの構成員か。構成員を名乗るには、彼女の雰囲気は余りにも不釣り合いだ。

それ以前に初対面の相手に対して、いきなり組織の名前を名乗るのもどうなのか、と心の中で溜め息をつく。


「···お断りします。

貴方と言い前に会ったファントム構成員と言い、あなた方にはまるで話が通じて居ないようで」

「私達と会ってるなら話が早いわ。私達はルシオラ様の為に異能力者が平和に暮らせる幸せな世界を作るの。

うふふっ、貴方は可哀想な人ね。あなたの隣にいた女の子は、貴方の事全然わかってないって事じゃない?」


彼女は何故瑠奈の事を知っている?

いや違う。恐らくは前に自分達と会った構成員から情報を聞き出した可能性が高い。


世間ではファントムの情報そのものが徹底して封殺されている。

だが裏世界では名を知らぬ者などいない程有名な、異能力者集団ファントムと言う組織の莫大な情報網にかかれば、仲間が起こした騒ぎを自分達の仲間が知らない訳がない。


「用件は?」

「私はルシオラ様の考えならなんでも分かるの。ルシオラ様だけが私の全て。

ルシオラ様は私達異能力者の理想の世界の為に戦ってるの。あの時から···あの時からルシオラ様は私だけの王子様なんだよ」


「···速やかに用件を言いなさい」


自分や瑠奈、ルシオラと言う人物の事を何もかも知った気になっているような薫の態度に、泪の口調に苛立ちが含み始める。


「酷いな、話を聞かないなんて本当せっかちなんだから。

わかったわ、私達ファントムに協力して。ルシオラ様率いるファントムに協力して私達と一緒に私達を虐げる『(けだもの)』達を倒しましょう」


······所詮こいつらも『連中』と同類か。

自分達と異なる者を恐れ蔑み見下すしか能のない集団。

既に泪は目の前の『異能力者』を『異能力者』として見る事が出来なかった。


「人間を『獣』呼ばわりする連中に協力する気はありません」


少女の勧誘をバッサリ切り捨てる泪にまるで臆する事なく、薫は更に言葉を続ける。


「ルシオラ様の理想は私達の理想なの、きっと貴方もルシオラ様と会えば考えも変わるわ。ううん、わからないなんかじゃないよ。ルシオラ様の考えは私の考えなの。

この前の女の子は今の貴方の揺るぎない気持ちなんて、絶対に分かる筈ないよね。

あの女の子はすっかり『(けだもの)』の仲間に染まっちゃった、『(けだもの)の仲間』なんだから」



「·········貴方は不愉快です。今すぐ僕の視界から消えろ」



泪は吐き捨てるように言い放った直後、左手首に念を集中させると光輪(エンゼルハイロゥ)を形成する。

左手首に腕輪をはめるように光の粒子が輪を作るように形成された直後、ハイロゥからは凄まじい轟音と共に炎の渦が放出された。放出された炎の渦は、泪や薫の周囲を瞬時に取り囲む。



「きゃああぁっ! こ···恐いっ!」



薫は全身を小刻みにビクビク震えさせる。

それでも涙目になりながらも、座り込むのだけは堪え泪を睨む。


「わっ、私···負けないっ! 大好きな···私を助けてくれたル、ルシオラ様の為に···っ!

こんなの···こんなの···っ」


薫を見る泪の表情は無表情で、更に人形と思わせるかの如く空虚で微動だにせず眉一つ動かさない。

薫を余所に泪は更にハイロゥから発す炎の出力を上げていく。既に炎の渦は竜巻が吹き荒れるかのように燃え上がっている。



「僕の視界から消えろ。

······次は······――······ー···―す」

「!!?」



泪が何を言ったのか炎の轟音が邪魔をして上手く聞き取れない。

言葉を聞いた瞬間、薫は泪から一秒でも早く離れたいが為に脱兎の如く走っていた。



「······」



薫が走り去っていった方角を、泪はただただ人形の表情で見つめていた。




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