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TAME GATE psychic record  作者: 時扉
真宮瑠奈と死にたがりの超能力者
159/283

13話・響side



―···郊外某所。



「あなた達っ。ま、待ちなさいっ!」

「全く···こんな時に鬱陶しい奴と当たったな」



異能力者排除任務の帰り、響と時緒は一人の異能力者と対峙していた。

時緒が自分達を追跡してくる奴がいる、と念動力感知センサーで確認したらしい。


目の前の異能力者は響と同じ年頃の少女。戦う者としてはあまりにも場違いな少女少女した服装に、深緑の髪を響と同じように頭上で一つにまとめている。

女相手とは言え異能力者は一瞬でも隙を見せると、個人差はともかく瞬く間に念動力を使われ、戦況が不利になる事を知っている為、二人はさっそく武器を手にして戦闘体制へ移行する。


「よくも···よくも私達の仲間をやってくれたわね!」

「異能力者は女子供を問わず全て狩る、これが僕達異能力者狩りのやり方なんでね。

あんたにどうこう言われる筋合いは無いよ」


「私達に取っては異能力者は大切な仲間なの! あなた達みたいな腐った人間共と一緒にしないで!!」

「何の武器も持たずに一人で僕達構成員とやり合おうなんて、異能力者と言えど自殺行為じゃないの?」


「うふふっ、あなた達は本当にダメな(けだもの)ね。それが何だって言うの?

私には素晴らしい異能力とルシオラ様への強い思いがあるの、あなた達醜い(けだもの)ごときに負ける筈がないっ!

人間なんて···人間なんて(けだもの)で薄汚い肉ダルマじゃないの!!」


「·········うざい」



人間を『獣』と言い放った少女へ、響は汚物を見る如き視線を投げ更に追撃の如く悪態を吐き捨てる。

時緒も戦闘体制を保ちつつ、先程から無言で目の前の異能力者を鬱陶しそうに見ている。いつもならば響すら(ひる)ませる殺気をも放っていない事から、目の前の相手は『時緒の獲物』としても完全に範囲外の様だった。


「···あんな五月蝿いガキは殺す気失せる。響、お前が()れ」

「言われなくてもやる」


余りにも一方通行で侮蔑的な態度に、普段から落ち着いている響も目の前に立つ異能力者の女に対して、相当腹に据えかねていた。


「は、早く来なさい! それに何?

(けだもの)の癖に何訳の分からない事話してるの?」

「言われなくてもさっさと終わらせてやる。

まずはそっちからかかって来なよ。それほどまで大口叩くんだから、あんたもファントムのメンバーなんだろ」


「そ、そうよ!

私はルシオラ様率いる誇り気高き異能力者集団・ファントムの一員伊内薫(いうち かおり)よ!!」


自分の名前だけでなく組織のメンバーである事を、余裕満々のドヤ顔で名乗った薫と言う女に響だけでなく、いつの間にか壁際で見物していた時緒も『こいつ何言ってんだ?』と言った微妙な表情になる。


「な、何なのその呆れてる顔は? あなた達は私と戦う気があるの!?」

「······普通堂々と組織のメンバーだって事名乗らないよね」


先程始末した異能力者があの『ファントム』のメンバーだと知ったのは、死体から抜き出した身分証明と思われる組織のカードで確認したからだ。

最も全員が末端ナンバーだったので、始末しても特に問題は無かったのだが。


「ファントムと言え、どうせこいつも末端構成員だろうな」


薫と言う女の口調から瞬時に何かを察したのか、時緒が的確かつ遠回しにこいつは何も知らないと断言する。

自分達の挑発(?)に対し易々と引っ掛かりここまで激高するのでは、組織内でも所詮捨て駒扱いが良いご身分だろう。


「ル、ルシオラ様は私を助けてくれたのっ! ルシオラ様は私の一番大切な人なのっ!!

私はルシオラ様の為なら私はなんだって出来るわ! ルシオラ様が喜んでくれるなら何でもするのっ!!」

「···そんな話、別に僕達には関係ないだろ」


お前の戯れ言なんて僕には関係ないから早く終わらせろ、と響は心の中で悪態を吐く。


「ルシオラ様を馬鹿にしないでよ! ルシオラ様は全ての異能力者に慕われてるのよ!

ファントムで最高に素晴らしい力を持つ頭領なんだからねっ!!

そもそもルシオラ様は、あなた達みたいな人間なんかと違って···っ」


何故この女は敵に対しそこまで情報を駄々漏れさせるのか。

ルシオラって···そいつが組織の頭領の名前? そんな簡単に組織のトップの名前出して良いの?

響の表情が戦闘体制のまま更に微妙な顔になっていく。


「······響。やっぱり帰還するぞ」

「え? 始末、するんじゃ···」

「今、目の前の『あれ』は殺す価値すらない。正直頭領の名前ゲロってくれただけでも十分収穫だ」


時緒はもうこいつには付き合ってられない、と言わんばかりの低音で吐き出す。有益な情報が手に入ったとはいえ、『あの』時緒にすらダメ出しされるとは。

もはや自分達を無視して、ファントム頭領の事を誇らしげに語り続ける目の前の異能力者の少女に対し、響は僅かながら哀れみすら感じた。


「···つか、あの女まだ喋ってるね」

「ほっておけ。『あれ』の始末はまた今度にしろ。

雑魚構成員の始末なんざ何時でも出来る」




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