8話・瑠奈side
「芽衣子」
「瑠奈、珍しいね」
昼休み。
瑠奈は早々と教室内で昼食を終え友人達との談笑もそこそこに、調べ物をする為に図書室へ向かう途中、廊下で芽衣子と鉢合わせた。
芽衣子は図書室へ本を返しに行く途中だったらしく、どうせならと一緒に行く事になった。
「今週歴史学と地理のジャンルで新刊が何冊か入ったから、それ借りに行くんだ。瑠奈はまた料理の本見るの?」
「ううん、今日は趣向変えて違うジャンルの本見るんだ」
「そっか。ここの学校の図書室色々あるから飽きないもんね」
「下手な本屋より種類多くて、調べ物する時とか結構助かるよ」
「ネットじゃ調べられない奴もかなりあったし、初めて見た時はビックリしちゃった」
宝條学園の図書室は図書館と言って良いくらい面積が広く、その広さに伴い本の種類も相応に豊富だ。もしかしたら異能力やその研究に関連する本などがあるかもしれない。
二人で図書室に入ると返却の手続きがある芽衣子と一度別れ、瑠奈はその他ジャンルから本を探していく。
「見つかると良いけどなぁ···」
瑠奈の目的は以前鋼太朗が口にしていた異能力の研究所や、ファントムなどと言った組織関連の書物。
近所の本屋やショッピングモールではそれらしき書物は軒並み置いていなかった。あったとしても手品とか超常現象などのありきたりの書物だけ。
ネットで調べても異能力者関連の情報自体が鋼太朗が話していた通り、国内外に亘って検閲されているのか、最低限の情報しか出てこない。
茉莉に聞いても絶対教えてくれないだろうし、探偵部の面々に相談したとしても、騒ぎが大きくなる以前に茉莉や泪がいる限り、情報そのものがシャットアウトされるだけなのは目に見えている。
ならば自分で調べた方が手っ取り早いし、無駄なトラブルも避けられる筈だ。
「何これ···?」
本棚に一通り目を通し瑠奈が目に入ったのは、本棚に挟まってある派手な色柄のノート。宝條学園固有の図書印が貼られてないのか、学園の所有物ではない。
「誰かの落とし物かな···」
よく見ると表紙の柄は表が紫のまだら色で、裏も同様に赤いまだら色と何とも趣味が悪い。何故このような静かな場所に挟まっていたのかと、かえって不気味さを感じる。
「どうしたの、気になる本見つかった?」
訝しげな顔でノートを見つめていると、既に本の返却を終えていた芽衣子が瑠奈の元へやって来た。
「芽衣子、これ···」
「な、何か不気味な色のノート···」
瑠奈が手にしているノートを見た途端、芽衣子も似たような事を思っていたらしく訝しげに顔をしかめる。
「中身は?」
「まだ見てないし、それにこんな奇特な柄だから絶対ロクな事書いてないよ」
ノートの中身が気になる事は気になるが、なんだか嫌な予感がすると本能が察知し見る気が起きない。
「職員室に届けとく? 誰かが届け出位は出してるかもしれない」
「···そうしようか」
見たいのはやまやまだが、泪や異能力の事などで只でさえ危険な橋を渡りかけようとしているのに、これ以上余計なトラブルに巻き込まれるのは勘弁だ。
結局早めに図書室から引き上げる事になった二人は職員室へ行き、不気味な柄のノートを室内で遅めの食事を取っている最中の教諭に手渡した。
職員室に茉莉がいなかったのは幸いだった。




