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TAME GATE psychic record  作者: 時扉
真宮瑠奈と死にたがりの超能力者
152/283

6話・瑠奈side


―神在市郊外・裏通り。


放課後。

瑠奈は既に正門前で待っていた鋼太朗に案内され、神在市郊外の裏通りへ向かった。

案内された場所は普段友達と行っている喫茶店やスイーツショップよりも客足が少ない、古びたアンティーク調の雰囲気をした小さな喫茶店。

鋼太朗行きつけの店と同時に、この喫茶店は訳ありの異能力者が集まる場所でもあり、店では暗黙の了解が基本で第三者の詮索も滅多に入らない故に、異能力の事について話すには最適の場所らしい。


店のオススメが店長お特製生クリームたっぷりのカステラロールと聞き、さっそくカフェラテのセットで注文する。

更に今日は鋼太朗が奢ると言ってくれたので、僅かながら瑠奈の顔が緩む。



「サイキッカーか······噂位には聞いたことある」

「本当っ」



鋼太朗が少しながらも知っていると聞き、出されたケーキを口にしながら複雑な顔になる瑠奈。鋼太朗も神妙な顔付きで注文したコーヒーを(すす)る。

瑠奈は昨夜起きたファントムによる襲撃の出来事を、自分が上手く説明出来る範囲で鋼太朗に話した。


「まさか泪が···」

「サイキッカーって、何か問題があるの?」

「正直あんまり良い話じゃないぞ」


サイキッカーの名を出した途端、茉莉も普段とは思っても見ない顔つきになったしあれから学校でも何も言わなかった。


「『サイキッカー』ってのは異能力者の中でも特に力の強い能力者の事だ。

俺ら普通の異能力者なんかじゃ太刀打ち出来ない位の(テレキネシス)と、同じ系統の異能力でもそれ以上に強い異能力を使う事が出来る。ただ···」

「ただ?」


口を開きかけた鋼太朗は、これ以上話すべきかどうか言葉を濁す。

それから少し時間を置き意を決したかの様に再び口を開く。



「ただ···その強大な力と引き換えに、精神的にも人格的にも問題のある奴ばっかりだって」

「問題って···」

「あくまでも噂だ。俺はサイキッカーを直接見た事ないからな」



瑠奈があの時見た泪は普段から激しい感情を表に出さず、怒る時すら静かに怒るいつもの泪。

極めて普通に思えたし、とても人格に問題があるとは思えない。

だがあの異能力者としては桁外れた力を直に見てしまった以上、泪に何かあるのは確かなのだろう。



「それに泪の奴、家族の事何も話さないだろ」

「あっ···」



今までを遡ると泪は家族の事を何一つ口に出してない。

いつも事務所へ会いに行って一緒に食事した時も、普段と当たりさわりないのない話をするだけだった。


「ウチの家族と泪の家族、知り合い同士なんだよ。昔から研究所がらみで付き合いがあった」


これは初耳だった。ならば泪が鋼太朗の事を知っていてもおかしくない。


「お···お兄ちゃんが鋼太朗の事知らないのって、まさか」

「それだよ。泪の記憶から俺の事含めた一部分だけがすっぽり抜けてる」

「鋼太朗の家族はお兄ちゃんの事···」

「知ってるよ、あいつの家族の事とかも」


やはり鋼太朗は泪の事を知っている。

悔しいが自分以上に泪の過去を含めた現状を理解していると感じた。あの時の件から鋼太朗や泪の家族がどうなったのかは、現状瑠奈は詳しく知らない。


一つ理解してるのは鋼太朗の父親は今も健在で何かの裏ルートを使い大学教授に復帰したそうで、その講義をしている大学でも、再び異能力の研究をしているとか。

鋼太朗の話では父親は今度こそ『彼ら』が『例の計画』を立てているのを、阻止すると言っていたらしい。ただ今その話題を聞いても仕方ない。



「だったら尚更追いかけてやればいい。泪に何があったのかは知らないが、もしあいつが戻らない事があるのなら俺達の方から追いかければ良いさ」



少し俯き掛けていた瑠奈だったが、意外だと思ったと同時に戻らないのなら追いかければいいと言う鋼太朗の言葉に、いくらか肩の荷がおりた感じがした。


「それから今日の話は泪には内緒な、今話したらややこしい事になりそうだし」

「うん」


鋼太朗の言う通りサイキッカーの事はまだ言わない方が良い。

それに上手く言えないが、泪は自分からまだ何かを隠している気がした。


「ねぇ。ここの店のカステラロールテイクアウト出来る?

美味しかったし琳と茉莉姉に持って帰る」


鋼太朗が冷めきったコーヒーを半分程残しているのに対し、瑠奈の皿を見ると既にカフェラテと共に全部平らげてしまっていた。



「つーか、もうケーキ食べきってたのかよ···。

異能力者御用達喫茶店とは言え、あっという間にメニューの虜にしちまうとは···すげえなここの店長」




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