表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TAME GATE psychic record  作者: 時扉
真宮瑠奈と死にたがりの超能力者
147/283

1話・泪side

その人はいつも笑っていた。

自分の為でもなく誰かの為でもなく。



私の大好きな『お兄ちゃん』は『死ぬ』為に『笑って』いた。





「お兄ちゃん。えへへ、来ちゃったー」



泪の目前、玄関前に一人の少女が笑顔で立っている。

二本の青いラインが入った薄いオレンジ色のチュニックに三分丈のデニムスカート。黒のハイソックスとスニーカーを履きお下げのツインテールに、身長は平均より低い部類に入るが胸やら尻やら女性として出るところがとにかく強調している体型。


昔短い間だけだが、何度か交流を持った事がある真宮瑠奈。

あの時以来二度と彼女と会う事は無いと思っていたが、まさか宝條学園で再会を果たすとは思わなかったし、

探偵部副部長と同時に部内一のトラブルメーカーとは言え、泪自身も自分の弟の様に可愛がっている篠崎勇羅と友人同士である事を知った時はもっと驚いた。


「また瑠奈か···」

「別にいーじゃん、今日は和真さんの手伝い休みでしょ」

「彼もそうですけど貴方も本当に懲りないですよね···」


泪は数か月前から週に二回。学園卒業後に父親の会社で跡取りの勉強真っ最中の探偵部前部長・水海和真の元で秘書のアルバイトをしている。

とは言っても秘書検定の資格は取っていないので、あくまで見習いとしての立場だ。

和真は既に飛び級で外国の大学を卒業している為、国内の大学へは進学せずそのまま就職を選んだ。


始業式当初より休み時間に学園内で堂々と大声を出しながら、自分の後を尻尾を振る人懐こい大型犬のように付いてくる、四堂鋼太朗とか言う同級生をあしらうのは今はもうすっかり慣れた。瑠奈も瑠奈で以前の様に素っ気ない態度をとっても鋼太朗同様にまるで懲りる気配がない。

自分の顔をジッと見つめてくる目の前の訪問者に対して泪は思わず溜め息をつく。


「全く、こっちも部活と進路とかで四苦八苦してるのに···」

「お兄ちゃんはどうするの。進学? 就職?」

「······」


「茉莉姉は『赤石君は受験とか就職とか大変な時期だからあまり迷惑かけるな』って言ってるけど、私個人はお兄ちゃん自身が心配だな。部活の時以外はいつも一人なんだもん」

「大きなお世話だ」


バイト中、和真にも同じような質問を聞かれたが正直言って後の事など全く決まっていなかった。

前回の進路相談の時、進路保留の返答をした自分にすがる担任の反応は余りにも意味が分からなかった。

泪はこれまで自分自身のその後を一度も考えていない。今でも周りに何重もの仮面を被り続けている生活を送っているのだ。


「そうだ、今日は私が夕飯作るよ!まだ準備してないでしょ?」

「···あ。えっ?······ごめん、出来てない」


普段なら朝に自分で食事の支度をして何もかも済ましている泪だったが、昨日はバイトが忙しかった為に何も出来ず眠ってしまった。

結局今日の朝食は簡易なもので済ませ、昼食は購買のサンドイッチと紙パックのミルクティーだったし、夕飯の支度の考えが珍しく頭の中から抜けてしまっていた。


支度が出来てないの言葉に反応し、それに答えるかの様に瑠奈の表情がぱぁっと明るくなる。


「お兄ちゃん、何か食べたいのある?」

「じ、じゃあ···ご飯と豆腐ネギが入った味噌汁がいい」

「うん!」


泪は無意識ながらも優しい微笑みを浮かべ、瑠奈を事務所に招き入れた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ