おっかないおじいちゃんと、頼りになるあの人達、『私の生みの親について』
そしてフィールは決意します
さて、まんまと逃亡に成功したテロリストたちだけどそれでおとなしくしているような連中じゃないよ。
そもそも連中はディンキー・アンカーソンっていうおっかないテロリストお爺さんをご主人様にして、イギリス系の人たちを目の敵にしている厄介なテロリスト集団なんだ。ちなみに全員アンドロイド。ディンキーさんが造ったのが大半らしくて〝マリオネット〟って名前が付いてるんだって。
だからディンキー爺さんの事をマリオネット・ディンキーって言ってるらしいよ。
その彼らが私達の日本に入ってきた以上、やることはひとつしかない。そう、日本へと行ってきたイギリスの人たちを狙って襲うに決まっているんだ。
厄介なことに、東京であるイベントが行われようとしていた。
――未来世界構想サミット――
世界中の有数の著名人や知識人が集まり、これからの未来世界のあり方を討論して、世界の政府や国家に提言する。そんな主旨の集まり。当然、各国とも名だたる重鎮たちを送り込んでくるし、イギリスだって国のメンツもある。プライドもある。テロリストに狙われるからと言ってスゴスゴとおとなしくするわけにもいかないよね。直前まで揉めに揉めて、ある人達を代表団に送り込んできた。
その名は『円卓の会 ―Camelot―』
アーサー王伝説になぞらえたその集団はいずれもが英国の王立科学アカデミーの中で重責をになう優秀な人達ばかりだ。それをあのディンキーとその子分たちが黙ってみているはずがないじゃない。
そもそもが日本に来た理由ってのもそれなんだろうね、きっと。
それにね、私もこの状況をただ黙っても居ているわけにもいかない理由があるのよ。
今回危険を押して日本に来てくれた王立アカデミーの円卓の会の中にはね、私たちにとってとても重要な人が参加しているのよ。
そもそも私たち特攻装警は、極めて高度なアンドロイドとして作られているんだけど、当然、私たちの頭の中に収まっている頭脳もそこいらのAIとはまるでレベルが違う極めて高度なものが用意されたの。
私たちの世界のアンドロイドに使われている人工頭脳体なんだけど、通称「クレア頭脳」と呼ばれているの。行動も理論も動作原理もそれまでのコンピューターシステムとは根底から違う異次元の存在、それがクレア頭脳。そしてそのクレア頭脳で動いている人工人格プログラムが「マインドOS」
もうここまで言えば分かるでしょう? この二つを作り上げた人物が円卓の会の中にいるのよ。
レオナルドダヴィンチから〝万能の天才〟の名を奪ったとまで言われてる人物――、その人の名は「チャールズ・ガドニック」
私たち特攻装警の6体、その全員にガドニック教授が自ら作り上げた最新鋭のクレア頭脳が備えられている。
そう――、ガドニック教授はでもなく私たちの生みの親の一人なのよ。
その教授があのテロリストがいる状況で来るのよ? 無事でいられるはずがないじゃない。だから私考えに考え抜いて上司の大石さんにこう上申したの。
〝私を一時期だけ、警護課に出向させてください〟
――ってね。
この申し出には大石さんもかなり驚いてたけど、現場生身の人間だけで構成されたSPではあのマリオネットたちを排除して来賓たちを守りきることは難しいと考えてたみたい。
警備を担当する警備部や、捜査部の上層部、警護課や調整役の警察庁の人たちなどと相談し、本当に私を臨時で警護課扱いとすることが決まったのよ。
そしてSPとして必要な訓練を受け、来るべき日のために準備を重ねた。
私を始め、すべての特攻装警たちの中には、大切な教授たちを、そして来賓の人たち全てを傷つけることなく守り抜いて故郷へと必ずを繰り返すという思いが宿っていた。
そしてついに来るべき日は来た。
2039年11月2日――
有明の新市街区の真っ只中、そびえ立つ有明1000mビル、そこに私と警護課のSPの人々と教授をはじめとする円卓の会の人々は居た。
そこでもたらされたのはあまりにも残酷な現実だったのよ。