1.5話 2人のはじまり
1.5話 2人のはじまり
屋上のフェンス越しから見るこの景色が、僕は凄く好きだ。なぜか?自由に飛べそうな気がするのだが、フェンスが見えて、あぁ無理なんだと気づかせてくれるから。自分の力の無さを再認識できる。
今の時間は、3時間目の真っ最中だ。
あの教室に僕の居場所はない。行っても、いじめられるだけだ。もう行きたくない。
あ、言っておくけど死ぬつもりはないよ?
屋上に来たからって、すぐ飛び降りるって繋げるのは良くないと思う。
さてと、あれをそろそろやるとしますか。
僕は、バッグからノートと筆箱を取り出す。
そして、ペンを持ち、ノートに物語を書き始める。
物語を作るのが好きなんだ。ただ教室だと冷やかされる。
だけど、この屋上なら誰にも邪魔されずに書ける。
今日はなにを書こうかな。そう考えてると、屋上への入口となっている窓から物音が聞こえた。
誰だ?あいつらか?いや、そんなはずは。
誰にも気づかれずに来たつもりだ。
この屋上は、普通の入口だと鍵がかかっていて入れない。だけど、隠し通路を通って、窓から入る、秘密の行き方がある。これは僕だけの秘密だ。誰にも教えたことはない。
そんな秘密の入口から物音が聞こえる。
ガタガタ。ガタガタ。
開けるのに手間取ってるようだ。開けるのにもコツがいる。少し上にずらして開けるんだ。
少し様子を見てみるか。
僕は立ち上がって、入口の方に行く。
窓は型板ガラスになっているため、中が見えないからシルエットくらいしか見えない。
形からにして、女の子だ。どうやら、1人みたいだ。
考察してると、窓がいきなり開いた。
眼鏡をつけた、大人しめの可愛い子だった。
クラスが一緒の牧原恵さんだ。一度も話したことはないが。
「あ、あの.....。その.......。佐久田くん。」
ああ、そうそう。僕の名前は佐久田一真。名前を言うのを忘れていたね。
「な、なに?牧原さん.....。」
心の中では、饒舌だが、いざ口に出すと、ごもごもしてしまう。コミュ障です、すいません。
「あのね....。私も、この秘密基地に入れてもらえないかな.....?」
これが、僕と牧原さんとの初めての出会いだ。
とても楽しい出来事の始まりで、
そしてとても悲しい出来事の始まりでもあった。
(続く)