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お母さんは女子高生  作者: たらふく
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9/26

1年2組

          第九章




次の日、私は2組の担任の浦佐加に話をすることにした。

廊下を歩いていた浦佐加に声をかけた。


「浦佐加先生」

「ああ、あなたは3組の・・」

「秋川千菜美です」

「秋川さん、どうしたの?」

「ちょっと先生に話があって・・」

「なんですか?」

「先生のクラスの橋成くん、虐められてますよ」

「えっ・・」


浦佐加の顔色が、明らかに変わった。


「どういうこと?」

「昨日、橋成くん、殴られたり蹴られたりしてました」

「あなた、それを見たの?」

「はい。見ましたし、止めもしました」

「そうですか・・」


浦佐加は、なにやら戸惑っている様子だった。


「どうかしたんですか、先生」

「いや・・・私もね、ちょっとおかしいと思っていたところなのよ」

「そうなんですか」

「それで相手は誰かわかる?」

「それは、わかりません。でも同じクラスの男子だと思います。なんなら顔を見ればわかりますけど」

「そっか。わかりました。知らせてくれてありがとう」


ふむ。この先生はなんか頼りになりそうだな。


「ところで秋川さん」

「はい」

「あなた、虐められていたのよね」

「そうですけど」

「実は、あなたのことで先生たちが困っててね・・」

「は?困る・・?」

「あ・・ここではなんだから、ちょっと放課後、理科室に来てくれない?」

「はい、いいですけど」

「じゃ、その時に」


そういって浦佐加は歩いて行った。

私のことで困ってる、か。まあ、大体の想像はつくよ。


私が教室に入ったら、慌てて菜々絵が駆け寄って来た。


「どうしたの?菜々絵ちゃん」

「千菜美ちゃん!ちょっと来て」

「なによ」


そう言って菜々絵は私の席へ連れて行った。

すると私の机の上に、ゴミが置かれていた。

なっんだよ・・これ。


「なに、これ」

「私もびっくりしたの・・」

「誰がやったのか知ってる?」

「多分だけど・・隣のクラスの男子だと思う・・」

「そうなの??」

「さっき、ここを出て行くのは見たの・・」


なるほど。宣戦布告ってやつか。上等じゃねぇか!!

私はゴミをゴミ箱に捨て、隣のクラスへ行こうとした。


「千菜美、ちょっと待って」


美冴が声をかけて来た。


「なによ」

「私も行く」

「え?」

「私も行くって言ってるの」

「いいよ。美冴には関係ないことだ」

「あるの。大あり・・」

「どういうことだ」

「私・・あいつらの中の一人に虐められてたの・・」


なにっっ!!もしかして中学の時のことか。


「中学の時の虐めのことか」

「え・・千菜美、知ってたんだ・・」

「あ・・うん、まあな」

「だから私も行く」

「でも、今回のことは美冴とは関係ないからいいよ」

「なに言ってるの。私たち友達でしょ」

「え・・」


美冴・・なんて健気なんだ。

あんな連中、私一人でどうとでもなるってのに。


「千菜美、言ったでしょ・・」

「なにを?」

「人間は変わろうと思えば変われるって」


そっか・・美冴はあの言葉をちゃんと受け止めてたんだな・・


「そっか。わかった。でも余計な手出しはするなよ」

「はいはい」


美冴はなぜか、嬉しそうに笑った。

そして私たちは2組へ行った。

あっ、いたぞ。昨日のやつらだ。

私はそいつらのところへ歩いて行った。


「おい」


その言葉にそいつらは振り向いた。


「なんだ、お前か」

「なんだじゃねぇ!」

「なんか用?」

「私の机の上にゴミを置いたのはどいつだ」

「ゴミ・・?わっはは。置いたやつのセンス、すげーな。ゴミみたいなやつの机なんだから、それってゴミ箱ってことだろ」

「ああっ??クソガキがっ!とっとと吐け!」


「あれ~~、美冴じゃねーか」


一人の男子が美冴に向かってそう言った。

こいつだな。美冴を虐めてたやつは。


「なによ、黒川」

「お前、虐めやってたらしいな~」

「うるさい!」

「おおーーこわっ。あん時は、泣いてたくせによー」


「てめぇ、美冴に突っかかってんじゃねぇよ。このクソ野郎が」

「お前、美冴に虐められてたんだろ。なにダチぶってんだよ」

「はっ。知った風な口を叩いてんじゃねぇよ。お前らみたいなクソガキには到底わからねぇんだよ」


「ぼ・・僕、見たよ・・」


振り向くと、涼介が立っていた。


「ああっ?橋成、うぜーんだよ」

「うるせー!お前は黙ってろ!」


そう言って私はそいつを突き飛ばした。


「涼介、見たって、何をだ?」

「こ・・こいつらが・・秋川さんの机にゴミを置いたの・・」

「そうか。この中の誰だ?」

「み・・みんなだよ・・」

「なるほどな」


クラスのやつらは、呆然と私たちのやり取りを見ていた。


「じゃあ、ここにいる四人全員が犯人ってことだな。上等じゃねぇか」

「橋成、てめぇ、覚えてろよ!」


黒川がそう言った。


「う・・うるさい!お・・お前らなんか・・お前らなんか・・」


そこまで言うと、涼介は泣き出した。


「けっ。また泣いてやがんのな」


また黒川がそう言った。


「涼介、こいつらの名前、教えろ」

「えっと・・黒川・・飯坂(いいざか)・・祥雲(なぐも)・・吉塚(よしづか)・・」

「そか。で・・誰が「頭」だ」

「たぶん・・・飯坂・・」


涼介・・お前、よく勇気を振り絞って話してくれたな。

なかなか見どころあるじゃねぇか。


「飯坂!この落とし前はどうつける気だ!」

「落とし前?なにヤクザみたいなこと言ってんだよ」

「うるせーー!このモヤシ野郎が。どうするって言ってんだよ!」

「ふんっ・・」

「私は絶対に許さねぇからな。放課後、校舎の裏へ来い」

「っんだよ・・・」

「まさか、逃げたりしねぇよな」

「しっ・・・知るかよ!」


そう言って飯塚は出て行った。

三人も後を追いかけた。


「美冴、涼介、ありがとうな」

「ううん・・千菜美・・やっぱりすごい・・」

「ぼ・・僕・・」

「なんだ、涼介」

「昨日・・秋川さんに「一緒に戦おう」って言われて・・その・・なんていうか・・」

「あはは。そっか。もう言わなくていいよ。お前の勇気はちゃんとわかった」

「うん・・」


「みんな!騒がせて悪かった。でも涼介はあいつらに虐められてるよ。みんなも知ってんだろ。クラスメイトなら、助けてやれよ」


私はみんなに向かってそう話した。


「じゃ、涼介、またな。なんかあったら言えよ」

「うん・・ありがとう・・」

「美冴、行こうか」

「うん」


そして私と美冴は教室を後にした。


「それにしてもさ、あいつらろくなもんじゃねぇな」

「だよね・・」

「お前さ、黒川にどんな虐めを受けてたんだ?」

「えっ・・それは・・」

「あっ、ごめん。言いたくないよな」

「うん・・ごめん」


そうだよな。絶対に思い出したくないよな。

そして放課後になり、私は理科室へ向かった。


ガラガラ・・


戸を開けると浦佐加は、もう来て座っていた。


「あ、秋川さん」

「先生、どうも」

「そこに座って」

「はい」


私は先生の向かいに座った。


「今朝の話のことなんだけどね・・」

「はい」

「先生たちが困ってるというのは、ちょっと話が複雑でね・・」

「そうなんですか」

「この学校で、昔、虐めに遭った子が自殺したことがあって・・」

「あ、それ知ってます。自宅で首を・・」

「ああ、そう。それなのよ。じゃ、あの時、世間でも大騒ぎになったってことも知ってる?」

「はい」

「そっか。でね、今の教育界っていうのは、虐め防止の対策として、虐めの件数を文科省に報告しなくてはいけなくてね」

「へぇ」

「その件数が多ければ、ダメ学校の烙印を押されるの」

「そうなんですか」

「で、六年前のあの事件で、この学校は、なんていうか・・懲りたっていうのかな。もう二度とあんな目に遭いたくないってことで、見て見ぬふりをしてきたの」

「なんですか、それ」

「それで虐め件数の報告も、極力少なくっていうか、いや、隠すっていった方が適切かな」

「酷いっすね」

「だから、虐めを糺そうとする秋川さんの行動に、先生方は困ってるのよ・・」

「信じらんねぇ」

「私ね、ここに赴任してきてまだ1年なの。だから当時のことはよく知らないけど、先生方の方向性は間違ってるとずっと思ってたの。でも私一人が意見したところで、だれも聞いてくれないのよ」

「そうなんですか・・」

「でも、秋川さん」

「はい」

「あなたはすごいわ」

「え?」

「だって一人で立ち向かって、自分の虐めも解決したし、校長にまで直談判したり。私ね、教師として恥ずかしいと思ったわ」

「そうなんですか・・」

「私も、ちゃんと立ち向かうわ。教師として間違ってることは糺すことに決めたの」

「そうですか!」

「だからこれからも、何かあったら必ず言ってね」

「はい、わかりました」


そして私は理科室を後にした。

なかなかいいじゃねぇか。浦佐加先生よおーー!

私にとって虐めなんて大したことじゃないけど、他の生徒は違う。

みんながみんな、私みたいにできるわけがない。


だから先生の力が必要なんだ。

先生と親と、みんなの力が必要なんだ。


第九章END

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