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お母さんは女子高生  作者: たらふく
24/26

囁き返し

           第二十四章




それからほどなくして、いよいよ地獄の期末テストが今日から始まる。

ついに来たか・・・この日が・・

どうしよう・・全く勉強なんかしてない。

きっと全部赤点だ。


「お母さん・・」

「うっ・・千菜美・・」

「うっ、じゃないでしょ」

「うん・・」

「それで、どうなの?」

「えっと・・多分、いけると思う・・」

「ほんと?」

「うん、全力で頑張る!」

「ほっんとに・・お願いね」

「わっかりましたぁ~~」


そう言って、私は家を出た。

ごめん、千菜美。

期末は諦めてくれ・・


私が校門の近くまで来ると、前には緒呂納が歩いていた。

クソ野郎。さすがにテストは休まなかったようだな。


「よう、クソ野郎」


私はそう言って緒呂納に声をかけた。


「けっ。お前か」

「てめぇ、風邪なんて嘘だろ」

「お前には関係ねぇだろ」

「ふっ」


私は少し笑って、緒呂納の腕に手を回し、耳に口をあてた。


「なっ・・なにすんだよ!」

「いいから、黙って・・佐介・・」


私は少し、色っぽい声でそう囁いた。


「なっ・・」


緒呂納は、私の態度に驚いていた。


「ママ・・」


私は、そう囁いた。


すると緒呂納の表情は、明らかに引きつっていた。

私はこれ以上ないくらい、蔑んだ目で緒呂納を見つめた。


「せいぜいママのためにテスト頑張んな・・」


そう囁いて、私は後ろ手を振って、歩いて行った。

クソガキ、どんな表情してんだろうな。ざまーみろ。


「まっ・・待て!」


緒呂納が私を呼び止めた。


「なんだよ」

「お・・お前・・」

「だからなんだよ!うっせーな」

「なんで・・なんで知ってるんだ・・」

「へ?なにを?」

「なにっ!」

「なにを知ってるって?」

「くそっ・・」

「用がないなら行くぜ」


私は緒呂納を放って門の中へ入った。

クソガキ・・こんなもんで済むと思うなよ。

徹底的に、そのプライドをズタズタにしてやるからな。


地獄のようなテスト1日目が終わり、私は下校した。

やっぱり、全然できなかった・・これは早く帰って少しでもやらないとな・・


すると校門のところで緒呂納が立っていた。

私は無視して通り過ぎようとした。


「ちょっと待てよ」


それでも私は無視して歩いた。


「なに無視してんだよ」

「へ?」

「へ、じゃねぇよ」

「今更、なんの用?」

「ちょっと来いよ」


緒呂納は私を引っ張って、校舎の裏へ行こうとした。


「きゃー!誰か助けて!」


私は、大声でそう叫んだ。


「お・・お前・・なに言ってんだよ」

「誰かぁ~~!助けてくださいーー!」


するとその声を聞いた一人の男子生徒が走って来た。


「どうしたの?」

「この人が無理やり、私を連れて行こうとするんです・・」

「えっ・・」

「私、何もしてないのに・・怖いです・・」

「ちょっと、君、ほんとなのか?」


その男子が緒呂納にそう尋ねた。


「俺は・・別に・・」

「嫌がってる子を無理やり連れて行くなんて、ダメだろ」

「くそっ・・」


そう言って緒呂納は私を睨みつけた。

私は、男子の後ろに隠れて、緒呂納に向かって「ママ」と口パクしてみせた。

緒呂納は怒り狂ったような表情をして、その場を立ち去った。


「どうもありがとうございました」


私はその男子に礼を言った。


「いや、いいけど。大丈夫?」

「はい、平気です」

「そっか。じゃあね」


そう言って男子は歩いて行った。

ふんっ、クソガキ。てめぇの思い通りにはさせねぇからな。


そして次の日の朝も、緒呂納は校門の前で私を待ち伏せていた。

ふっ。またかよ。


「お前・・ふざけんなよ」


緒呂納は怒りが収まらないのか、少し震えた声でそう言ってきた。


「なんのこと?」

「なんのことだあ?しらばっくれてんじゃねぇ!」

「うるせーんだよ、クソガキが」

「なんだと!」

「私をどうする気だ」

「うるせぇ!」

「けっ。ママに訊かないとわかんねぇってか」

「お・・・お前!!」


そして私はまた、緒呂納の耳に口をあてた。


「そんな汚い言葉、ママが聞いたら悲しむよ・・さっちゃん・・」


緒呂納は愕然としていた。


「お・・お前・・どういうつもりだ・・」

「知るかよ・・」


そう言って私は、門の中へ入って行った。


「千菜美~おはよー」


そこに美冴が駆け寄って来た。


「美冴、おはよー」

「さっき、どうしたの?」

「なにが?」

「緒呂納くんと、なんか・・変な雰囲気っていうか」

「ああ!緒呂納くんねっ!2年3組の緒呂納佐介くんねっ!あの人、怖いのよ~昨日も私を無理やり引っ張って連れて行こうとしたの!あの人、いつもあんなことしてるのかしら~怖いわね~」


私はわざと緒呂納に聞こえるようにそう言った。


「ど・・・どうしたの?千菜美・・」


美冴は引くくらい驚いていた。


「別に。ほんとのことだし」

「で・・でもっ・・千菜美に限って・・怖いだなんて・・」

「ヤダな~これでも私だって女子よ」

「へ・・・??」

「まあ、いいじゃん。それよりテストだよー」


そしてテスト二日目も撃沈・・・

ぐわあ・・昨日、千菜美に特訓してもらったのに、全く成果がなかった・・


それはさて置き、緒呂納の野郎、今度はどう出てくるかな。

帰りにまた、校門で緒呂納が私を待ち伏せしていた。

またか。あっはは。相当焦ってるな。


「おい・・秋川・・」


ほう、「お前」じゃなくて「秋川」と来たか。

それでも私は無視して歩いた。


「ま・・待ってくれ・・秋川・・」

「なんだよ」

「俺・・なんていうか・・」

「はあ??聞こえねぇな」

「その・・今までのこと・・」

「声が小せぇんだよ」

「悪かったっていうか・・」

「お前、それで私が「はい、そうですか」とでも言うと思ったか?」

「え・・」

「てめぇは人間のクズだ。騙されねぇぜ」

「なんだと!」

「ほらな。もう馬脚を現しやがって」

「・・・」

「心配すんな」

「えっ・・」

「これからもずっと、いたぶってやるから楽しみにしてな」


そう言って私はその場を去った。

クソガキめ・・・

てめぇがやった代償は、こんなもんじゃ済まねぇぜ。


次の日、私は高峰に呼び出された。

なんだよ、今更、高峰かよ。


「なんですか」


私はぶっきらぼうにそう言った。


「秋川、ちょっと訊きたいんだが、昨日、ある保護者から電話があってな」

「はあ・・」

「その人の話では、お前が虐めをやってると言うんだよ」

「はあ??」

「いや、さすがに僕も、それは間違いか勘違いだと言ったんだが・・」

「その保護者って誰ですか」

「2年の緒呂納って人だ」


なるほど・・そう来たか。


「そうですか。それで?」

「それで、今日、学校に来るらしいんだ」

「へぇー」

「で、お前、まさか虐めなんてやってないよな?」

「あはは。やってませんって」

「だよな。その点では、僕も緒呂納さんに自信を持ってそう言えるよ」

「で、私はその場に立ち会えばいいんですね?」

「そうなんだ。済まないがそうしてくれるか」

「先生」

「なんだ」

「その際に、2年の麗華たちも呼んでくれませんか」

「なぜだ」

「知ってるでしょ。あの子たちが虐めをやってたの」

「ああ」

「その首謀者は緒呂納なんですよ」

「ああ・・そのようだな」

「緒呂納の親に、ちゃんと知ってもらわないといけませんよ」

「そうだな」


あのクソ野郎、万策尽きたと思ったか、マジでママに泣きついたんだな。

ほんと、どうしようもねぇな。。


それから午後になって、私は職員室へ行った。


「高峰先生」

「秋川、すまんな」

「いいえ。で、どこへ行けばいいんですか?」

「これから私も立ち会うから、一緒に行こう」

「わかりました」


そして私と高峰は、会議室へ行った。

そこには森比呂先生も来ていた。


「おお、秋川さん」

「こんにちは」

「驚いただろう。悪かったな」


森比呂先生は、済まなそうにそう言った。


「いいえ。全然ですよ」

「嫌な思いもすると思うが、堪えてくれな」

「はい」


ほどなくして、麗華たちも入って来た。

麗華は私の顔を見ようとしなかった。

そして緒呂納も入って来た。

来たな・・クソガキ。

緒呂納は私を睨みつけていた。


みんな、それぞれ座って黙ったまま、緒呂納の母親が来るのを待った。


「失礼します・・」


そう言って、緒呂納の母親が入って来た。


「緒呂納さん、お待ちしておりました。どうぞお掛けください」


森比呂先生がそう促して、母親は座った。


「秋川って子はどの子ですの?」


母親は、まるで獲物を探すような目で、そう尋ねた。


「私が秋川です」


私がそう言うと、母親は私を睨みつけた。


「そう・・あなたが秋川さんね」

「はい」

「よくも、うちの子を虐めてくれたわね」

「はあ?」


「まあまあ、待ってください、緒呂納さん」


森比呂先生が、そう制して続けた。


「その、虐めというのは、具体的にどういった内容ですか」

「なんでも、口汚く罵ってると言うじゃないですか」

「罵ってる?どういう言葉で?」

「人間のクズだとか、地獄へ落ちろとか、ぶっ殺すとか・・もう・・わたくしは佐介がかわいそうで・・」


ダメだ・・笑ってしまいそうだ・・

麗華たちを見ると、居心地が悪そうにしていた。


「あの・・緒呂納さん」


高峰が口を開いた。


「なんですか」

「私は秋川の担任の高峰と申します。この子は口は悪いですが、そのように汚い言葉を使う時は、必ず理由があるんです」

「理由?」

「この子は決して虐めなどしません。むしろ虐めている子を糺す時に、そのような言葉を使います」

「はあ?」

「秋川は、ずっと虐められていたんです。でもそれを自分で解決し、更に他に虐めがあれば、常にこの子が解決してくれました。その際に、つい言葉が汚くなってしまうことはありました」

「どういうことですの?」

「だから、この子は虐めはしないと申しているのです。これは担任として自信を持って言えます」

「仰ってる意味がわかりませんが」

「緒呂納さん、お子さんにちゃんとお訊になりましたか?」

「なにをですか?」

「人間のクズといわれた原因をです」

「それは・・」

「一方的にお子さんの言い分だけを聞くのは、事実を捻じ曲げることになりかねません」


高峰・・・お前、ほんとに高峰なのか・・・


第二十四話END

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