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お母さんは女子高生  作者: たらふく
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復讐心

       第二十二章



私は家で寝ながら、よくよく考えてみた。

今回の件は、全てあのクズ野郎が仕込んだことだったんだ。

あの麗華は親衛隊の「頭」で、緒呂納の彼女だ。


緒呂納は虐めをやめられなくて、てめぇの見た目をエサにして、わざと女に惚れさて近づかせたんだ。

それをきっかけに麗華たちは、虐めを繰り返していたんだな。

いわば、緒呂納は影のボスだったわけだ。


それを後ろで緒呂納は笑ってやがったんだ。

そうか!!あの2年3組の男子。古敷って言ったっけか。

私が古敷をボコろうとした時、緒呂納が私を庇って古敷をビビらせた時だ・・

あいつが緒呂納をあんなに恐れてたのも、影のボスって知ってたからだ・・


緒呂納が私にしつこく「付き合ってくれ」と言ってきたのも、私を早く落とすためだったんだな。

私が廃墟に連れて行かれ、危うくヤラれそうになった事も・・緒呂納の野郎は知ってたんだ。

だから私が校門へ鞄を取りに行った時も、あいつはそこに居たんだ。


私は、一瞬でもあのクズ野郎に、心が揺らいだことを死ぬほど後悔した。

許せねぇ・・絶対に許せねぇ・・


涼介には、ああ言われたけど、私は腹の虫が収まらなかった。

たかが高校生のクソガキに、してやられたことが、どうしても許せなかった。

というか、あんなこと、私にじゃなくてもやっていいはずがない。

舐めた真似しやがって・・覚えてろよ・・必ず落とし前はつけさせてやるからな。


「お母さん、おはよー」


朝になり、千菜美はいつものように、元気に挨拶してきた。


「ああ、おはよう」

「どうしたの・・お母さん、顔、怖いよ」

「えっ・・そ・・そうか?」

「私、自分のそんな怖い顔見るのヤダなー」

「ああ・・そっか。ごめん」


そうだな・・千菜美は自分の顔を見てるんだもんな。

そう言えば千菜美はいつも笑ってるな。


「なにかあったの?」

「ううん。何もないよ」

「そうなんだ・・それならいいけど・・」

「ほら、もうすぐ期末だろ。それでさ・・」

「やっぱりー。もう、お母さん、ちゃんとしてよね」

「うん、頑張るから任せて!」


私は、顔が引きつったまま、そう言った。

あの時、ヤラれそうになったのが・・もしほんとにヤラれていたらと思うと、私は胸が張り裂けそうになった。

心は私だけど体は千菜美なんだ。

そう思うと、怒りでどうにかなりそうだった。


「じゃ、行ってきまーす」


私はなるべく元気な声でそう言った。


「いってらっしゃーい」


千菜美・・千菜美・・

あの元気な声を、ずっと聞きたい。。


私は学校に着き、早速、涼介と会った。


「秋川さん、昼休みに職員室へ行こうと思ってるんだ」

「そうか、わかった」


2年3組の担任は、確か森比呂もりひろっていう男性の体育教師だ。

まだ若くて、体格もがっしりしている。

確か柔道部の顧問もしていたはずだ。


そして昼休みになり、私たちは職員室へ向かった。


「森比呂先生」


涼介がそう言った。


「えっと・・君たちは・・」

「僕は1年2組の橋成涼介って言います」

「私は1年3組の秋川千菜美です」

「ああ、秋川さんは知ってるよ」

「そうですか・・」


そりゃそうだな・・


「それで、なんか用?」

「先生のクラスで虐めがあります」


涼介が、はっきりとそう言った。


「えっ!!ほんとか!」

「はい」

「どういうことだ。はっきりと聞かせてくれ」


私は、事の経緯を全て話した。


「ほんとか・・なんてことだ・・」


森比呂は、うなだれてそう言った。

涼介も、全てを知って愕然としていた。


「虐めというか、犯罪ですよ、もはや」


私はそう言った。


「確かに・・」

「先生、そいつらに話してくれますね?」

「もちろんだ。よく話してくれた。これは学校で必ず何とかする」

「よろしくお願いします」


私たちは頭を下げて、職員室を後にした。


「とりあえずはよかったね」


私がそう言うと、涼介は下を向いたままだった。


「・・・」

「涼介、どうしたの?」

「秋川さん・・そんな酷い目に遭ってたんだ・・」

「ああー、でも無事だったし」

「僕・・・許せないよ・・あいつらめ・・」

「先生がなんとかしてくれるよ」

「秋川さんもそうだけど・・江富って人も・・酷い目に遭ってたんだね・・」

「うん」

「なんてやつらだ・・」

「涼介・・」

「なに・・」

「言っとくけど、お前、無茶すんじゃねぇぞ」

「・・・」

「約束しろ。絶対に無茶しないって。先生に任せるって」

「・・・」

「お前が私を止めたんだぞ。昨日」

「うん・・」

「お前が無茶するんだったら、私も命懸けでお前を止めるからな」

「うん・・わかった」


こいつ純粋なだけに、なにするかわかんねぇぞ。

こんなやつが切れたら一番危ないんだ。


やがて放課後になり、私は緒呂納の後をつけた。

今日は一人か。真っすぐ帰るのか・・

暫く歩くと、緒呂納の傍に一人の男性が寄って来た。

誰だ・・あいつ。

なんか笑いながら話してるぞ。


え・・・?あれっ・・?あいつは・・確か・・

そうだ!!私と緒呂納がデートしてた時に、私をナンパしてきたやつじゃねぇか!!

それを緒呂納が殴って・・・あいつは逃げて行ったんだ・・

マジか!!あれも緒呂納が仕組んだことだったのか!!


そう言えば・・・偶然、緒呂納のパンチがよく効いていたはずだ。

くそっ・・!ケンカのプロの私が、そんなことも見抜けなかったとはっっ!!

あのクソ野郎・・・どこまで腐ってんだ。


暫くしてその男は、緒呂納と別れた。

緒呂納は私に気がつかないまま、やがて家へ着いた。

ここか・・でけー家に住みやがって。

甘やかされて育った、坊ちゃんってとこか。


よし、家は突き止めた。

後は家族だ。

私は夜になるまで、家の前で家族が現れるのを待った。


するとそこに、森比呂先生がやって来た。

先生・・早くも動いてくれたんだな。

くそっ・・私も中に入りてぇ。


私は先生にばれないように、もっと家の近くまで行った。

すると中から緒呂納が出て来た。

何か話してるぞ・・くそっ・・聞こえねぇ・・

なんで家の中へ入らないんだ?誰もいねーのか?


「うるせぇ!俺はなにもやってねーーつってんだろうが!」


そう言って緒呂納の怒鳴り声が聞こえて来た。


「緒呂納!!いい加減にしろ!先生も前から少し変だと思ってたんだ。正直に言え!」

「うるせぇーよ!」

「緒呂納!しらばっくれても無駄だぞ。今日、江富にも話を聞いた。このことは絶対に放って置かないからな!」

「勝手にしやがれ!どうせ俺のことなんて、誰も見てねぇんだよ!」

「緒呂納!先生は見てる。だから話せ。なんであんな酷いことをやったんだ!」

「だから知らねぇ―っつてんだろうが!」


「おい、てめぇ」


私は我慢できず、緒呂納の前まで行った。


「はっ。またお前か。ストーカーかよ」

「秋川さん・・なんで君がここに?」


私は先生の問いを無視して話を続けた。


「てめぇ、この期に及んで知らぬ存ぜぬかよ」

「知るかってんだ」

「とっとと吐きやがれ!このクズ野郎がっ!」

「お前が勝手に俺に惚れたんだろ。それだけじゃねぇか」

「っんだとおおお!!」


「秋川さん、落ち着きなさい!」


先生がそう制した。


「緒呂納、ご家族の方は誰もいないのか」

「いねーよ」

「いつお帰りになるんだ」

「知らねー」

「お帰りになるまで待たせてもらうからな」

「勝手にしろ」


そう言って緒呂納は家の中へ入った。


「秋川さん、ダメじゃないか、勝手なことを」

「すみません・・」

「君はもういいから、帰りなさい」

「いいえ、私も待たせてもらいます」

「ダメだ。ここは先生に任せなさい」

「私・・許せないんです・・あのクズ野郎」

「わかるけど、先生は絶対に放って置かないから、安心しなさい」

「でも・・」

「君を見ていると危なっかしいんだよ」

「え・・」

「君は正義感にあふれて、人としてとても立派だ。だが、その正義感は常に危険と隣り合わせなんだよ」

「・・・」

「私はこれまで君に何があったか知っている。君に教えられたこともたくさんあった。教師として初心を思い出させてくれたのは君だ。先生方もあれから少しずつ変わってきている。だから以前とは違うんだよ。それを信じてくれ」

「そうなんですか・・」

「ああ。虐めの問題はわが校だけではなく、後を絶たない。自殺も珍しいことでない深刻な問題だ。それを解決するのは教師と親の役目だ。もちろん君たちのような生徒の力も大いにある。しかし、この件の今の段階は、まず教師と親がきちんと話をすることだ。わかるか?」

「はい・・」

「だから安心して君は帰りなさい」

「そうですか・・わかりました」

「気を付けてな」

「はい」


私は先生に説得されて、帰ることにした。

いい先生だな・・森比呂先生。


第二十二章END

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