監禁
第二十章
そして翌日、親衛隊たちがやっと私を呼び出した。
よしっ!来たぞ。ぶちのめしてやるからな。
放課後になり、私は校舎の裏へ向かった。
クソガキらめ、覚悟しとけ!
「私に用ってなんだ」
待っていた親衛隊に私は声をかけた。
「あ~ら、言いつけ通り、ほんとにお一人で来られたのね」
「ざーます女」がそう言った。
「当然だ。それで用ってなんだ」
「あなた、緒呂納くんとお付き合いをなさっているようですね」
「だったらどうした」
「困るんですのよ」
「困る?」
「緒呂納くんは、迷惑だと仰せなのですよ」
「けっ。言うことはそれだけか」
「ゲスい女に言い寄られて・・と仰せですわ」
「あはは、そうか」
「何を笑ってらっしゃるのかしら。無礼な方ね。ねぇ麗華さま」」
別の女がそう言った。
「そうですわね。これはお仕置きをしなくてはいけませんことよ」
ざーますがそう言った。ざーますは麗華ってのか。いかにもって感じの名前だな。
「あなたたち、その女を取り押さえなさい」
麗華がそう言うと、親衛隊たちは一斉に私に襲いかかって来た。
上等じゃねぇーか!!
相手は五人だが、こんな女どもどうってことねぇ。
そして麗華は黙って見ているだけだった。クソがっ!
私と五人は揉み合いになり、大乱闘になった。
すると背後から布のようなもので、誰かが私の口を塞いだ。
くそっ・・・しまった。なんだこれ・・刺激臭がしたかと思ったら、私の意識は薄らいでいった。
気がつくと、私は暗い部屋のベッドの上に寝かされ、手を後ろ手に縛られていた。
くそっ・・どこだ・・ここは。
「お目覚めかしら・・」
「くっ・・麗華」
「これまで、何人もの女が緒呂納くんに近づいてきましたが・・・あなたはその中でも最も下品な女ですわ」
「うるせぇよ」
「そんなあなたには、それ相応のお仕置きをして差し上げますことよ」
「てめぇ、こんなことしてただで済むと思うなよ」
「おほほ。何とでも仰い。さて・・入ってらっしゃい」
麗華がそう言うと、ドアを開けて二人の男が入って来た。
なっんだ・・あいつら・・高校生か・・?
「さあ、あなたたちの好きにして結構よ」
すると二人の男が私に近づいて来た。
「なにをする気だ」
「もう二度と、お前がいい気にならないようにしてやるんだよ」
一人の男がそう言った。
あれ・・・こいつ・・どっかで見たことがあるぞ。
そうだ!2年3組に居た奴だ。そうか、江富と同じクラスのやつか。
こいつらも、麗華の飼い犬なのか。クソがっ!
「来るんじゃねぇ!」
「ははは、わめけ、わめけ」
そいつはそう言って、私の体を触って来た。
「ざけんなよ!!てめぇ!汚い手で触るんじゃねぇ!!」
くそっ・・私はとっさに立ち上がり、そいつに金蹴りを食らわした。
「痛てっ・・・!!」
そいつは、腰を丸めてしゃがみこんだ。
「てめぇ!」
もう一人の男がそう言って、私に襲い掛かって来た。
私は、そいつに回し蹴りを食らわした。
そいつは、もんどりうって倒れた。
「なにをやっているのですか!さっさと立ちなさい!」
「麗華・・てめぇ・・絶対に許さねぇ!!」
後ずさりをする麗華の腹を、私は思いっ切り蹴り上げた。
「うっ・・なっ・・なにを・・」
お腹を抱えてうずくまる麗華の顔を、私は上から足で踏みつけた。
「てめぇ、なんのためにこんなことをしやがる」
「ううう・・・」
「言え!!」
「うう・・・」
すると後ろから、さっき金蹴りを食らわした男が立ち上がって、襲って来た。
「ざけんじゃねぇ!!」
私は回し蹴りで、もう一発食らわした。
「麗華!この紐をほどけ」
「・・・」
「ほどけってんだよ!!」
仕方なく麗華は、私の紐をほどいた。
私は麗華の首根っこを掴まえて、締め上げた。
「てめぇ、これで済むと思うなよ。覚悟しとけ!」
「うう・・」
私はそう言って部屋から出た。
なんだ・・ここは。廃墟か?
外に出ると、そこは1軒の古い屋敷だった。
ああ~~見覚えあるぞ。心霊スポットとかになってるところだ。
けっ、こんなところに連れてきやがったのか。バカが!
私は校舎の裏に鞄を置き忘れたことを思い出し、学校へ戻った。
もうすっかり陽が落ちて、辺りは薄暗くなっていた。
校門の前まで来ると、門が閉まっていた。
しまったな・・・まあ、明日でもいいか。
「千菜美」
私が諦めて帰ろうとしたら、後ろからそう呼ぶ声が聞こえた。
「あ・・佐介・・」
「これ、千菜美の鞄だろ」
「あっ。持っててくれたんだ・・」
「校舎の裏で騒ぎになってると聞いて、急いで向かったんだけど、もう誰もいなくてさ。それでこれだけ置いてあった」
「そうなんだ・・ありがとう」
私は佐介から鞄を受け取った。
「千菜美、たいぶ服が汚れているけど、何があったんだ?」
「ああ・・」
私はさっきまでのことを、佐介に全部話した。
「あいつら・・許せねぇな・・」
「でも、私がカタを付けたから、大丈夫だ」
「千菜美・・無事でよかった・・ほんとに、無事でよかった・・」
そう言って佐介は私を抱きしめた。
「心配いらないよ。私は大丈夫だ」
「助けてあげられなくて、ごめん・・ごめんな・・」
「いいんだ。その気持ちだけでじゅうぶんだ」
「でも、千菜美って、ほんとに強いな」
「そんなことないよ」
「いや、ほんとに強い。ケンカも強いけど、絶対に心が折れないもんな」
「そうかな」
「明日は、俺があいつらにちゃんと言っとくからな。それでもまた呼び出されたりしたら、絶対に一人で行くんじゃないぞ。必ず俺を呼ぶんだぞ」
「うん、わかった」
私は佐介の優しさと頼もしさに、心が温かくなっていくのを感じた。
そして次の日、私は2年3組へ行った。
佐介は、ああ言ったけど、私は佐介を巻き込むつもりはなかった。
あいつら、絶対に許さねぇ!!
私はまず、佐介がいないことを確かめて、昨日の男を揺さぶることにした。
「おい、てめぇ」
そいつは驚いた様子で私を見た。
「昨日は、よくもやってくれたな」
「なっ・・なんだよ・・」
「ちょっと顔、貸せ」
私はそいつを引っ張って、校舎の裏へ連れて行った。
「てめぇ、どういうつもりであんなことをやった」
「し・・知らない!」
「うるせぇ!全部、話せ!」
「ふんっ」
「てめぇ、また金蹴りされたいのか」
「ひっ・・」
「されたいのかっつてんだよ!」
「俺は・・別に・・」
「てめぇ、あの麗華ってやつに頼まれたのか」
「・・・」
私は一発、金蹴りを食らわした。
「ううっっ・・・」
そいつは、股を抱えて座り込んだ。
「まだ足りないか」
「まっ・・待って・・」
「さっさと言え」
「麗華に頼まれたのは本当だけど・・でも・・」
「なんだ」
「千菜美!」
振り向くと佐介が立っていた。
「佐介・・」
「また一人でそんなことやって!俺を呼べと言っただろう!」
「いや、アンタを巻き込みたくない」
「バカ!いつも無事とは限らないんだぞ!何かあったらどうするんだ!」
「こんなモヤシ一人くらいどうってことねぇ」
「いい加減にしろ!お前は女なんだぞ!本気になったら男には力では敵わないんだぞ!」
「でも・・」
「黙れ!千菜美は俺が守ってやる!」
そう言って佐介は、そいつの前へ行った。
すると、そいつはものすごく怯えたように、震えて縮こまっていた。
なんだ・・・そんなに佐介が怖いのか。
「おい、古敷、どういうつもりだ」
「ひっ・・」
「お前、昨日、千菜美に何をしようとした」
「ごめん・・ごめん・・」
「謝っても遅いんだよ」
「ごめん・・もう二度としませんから、許してください・・」
「バカめ。とっとと行け」
そして古敷は、走って逃げた。
「佐介・・」
「千菜美さ・・もう無茶はしないと約束できるか」
「あ・・ああ・・」
私は佐介の強さに圧倒されていた。
「お前のことは俺が守ってやる。わかったか」
「あ・・ああ・・」
「よし、いい子だ」
そう言って、佐介はまたあの笑顔を見せ、私の頭を撫でた。
佐介・・・なんなんだよ・・お前は・・
そんな顔で笑うなって・・・やめてくれ・・
「それから麗華たちのことだけど、もう俺が話したから心配ないよ」
「そっか・・」
「だからもう、あいつらには近づくな」
「わかった・・」
これでいいんだろうか・・
麗華たちには、落とし前付けさせてないぞ。
でも佐介がそう言うなら・・これいでいいんだろうか・・
それから私は暫く大人しくしていた。
虐めの話も聞かないし、もう収まったのだろうか・・・
麗華たちも私を呼び出すこともなくなった。
これで解決したのか?なんか違うんじゃねぇのか・・
「千菜美ちゃん、最近、元気がないけど、どうかしたの?」
菜々絵がそう言って声をかけて来た。
「そ・・そうかな。元気だよ」
「うーん、なんか違うんだけど・・」
「えっ・・どこが?」
「なんか、いつも上の空っていうか・・」
「そっかな」
「ボーッとしてることが多いよ」
「あああ!ほら、もうすぐ期末だし」
「そっか・・それならいいんだけど」
「ありがとう。でも心配しないで」
確かに私は、ここのところ、ボーッとしている。
麗華たちのこともあるけど、佐介のことが気になっていた。
振り払おうとしても、佐介の顔が頭に浮かんで仕方がなかった。
「なになに~~二人でいい話?」
美冴が声をかけて来た。
「千菜美ちゃんが、ボーッとしてるから、何かあったのかなって思って・・」
「そうなのよ。私も気になってた」
「美冴までなに言ってんだよ。何もないって」
「そうかなぁ~。いつも早く帰っちゃうし、もしかしてお母さんの具合、まだ悪いの?」
「いやいや、お母さんは元気・・」
「そっか。それならいいんだけどさぁ。なにかあるなら私たちに話してよ」
「ありがとう、美冴。何かあったら話すから安心して」
「そうだよ・・私にも話してね・・」
「うん。菜々絵。ありがとう」
しっかりしなくちゃな。二人に心配されるようじゃ、ダメだ。
それに私は元々、佐介とは「ふり」で付き合っただけだし、そろそろ終わりにしないとな。
第二十章END




